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2015年07月17日(金)

自営業が住宅ローンを組むための7つのポイントを不動産のプロが解説

経営ハッカー編集部
自営業が住宅ローンを組むための7つのポイントを不動産のプロが解説

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自営業や個人事業主、フリーランスが住宅ローンを借りるのはサラリーマンに比べ一般的に難しいと言われています。今回は、自営業が住宅ローンを組むために気をつけたい7つのポイントを、滝沢憲一不動産鑑定士にうかがいました。

1)住宅ローンの審査で見られる「所得」とは

個人事業主の所得は収入-経費で計算され、住宅ローン審査時に提出する確定申告書、所得金額の⑨に記載する合計になります。金融機関によっては手元に残る現金を重視するところもあり、この場合、減価償却のように支出を伴わない経費は経費として見ないで所得を計算する金融機関もあるようです。

例えば、売上から経費を引いた所得が400万円で、経費の内50万円が減価償却費だとすると、減価償却費を経費として見ないで所得を計算する金融機関の場合は400万円でなく、450万円で住宅ローン審査をします。

ただし私が取材した中で、手元に残る現金を重視するということを明言した金融機関は一つしかなかったので、減価償却費を経費として見ない金融機関は少数派と考えて問題ありません。

2)何期分の確定申告書が必要か

ほとんどの金融機関では、原則として3期分の確定申告書の提出が求められます。つまり個人事業主の場合は、住宅ローンの申請ができるのは3期分の確定申告書が手に入る4年目以降のみとなるというわけです

ただし例外的に、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供されているフラット35は、確定申告書の提出が1期分のみとなっています。

3)金融機関は所得どのように見るか

3期分の確定申告書を金融機関に提出した場合、融資の基礎となる所得をどのように見るのでしょうか。私の取材では、「3期分で1番低い所得」、「3期平均した額と直近の額と比較して低い方」という2つのパターンに分かれるようです。

フラット35の場合は直近1期分の提出のみなので、直近の額だけしか見られません。日銀による大幅な金融緩和で過去にない低金利(取材時、借入期間20年以下のフラット35の固定金利タイプAは1.7%)では固く見て貸倒が出ないようにしないと利益がでませんからしょうがないのでしょうね。

4)修正申告はすべきか

理由が明確な場合(例として、引渡基準で売上を計上すべきだったのに、回収基準で売上を計上していた等)を除き、修正申告は行わないほうが無難と考えて下さい。

修正申告をするとその期の確定申告書のみが通常のものと異なるため、金融機関に確定申告書を提出した時点で不審がられ、疑われる可能性があります。明確な理由があり修正申告が必要な場合でも金融機関に相談の上行った方が安全です。

5)日本政策金融公庫等の借入がある場合

個人事業主の中には日本政策金融公庫等から事業用の資金の借入がある方も多いと思います。そういう私もあります。返済比率(ローンの返済額の総収入に対する比率)を計算する場合には、全ての借入を合わせて計算します。

ちなみにフラット35の場合、年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下と規定されています。この値は、概ねどこの金融機関でも同じと考えて大丈夫です。サラリーマンでも自動車ローンなども含め全ての借入で計算されるので、個人事業主が特別不利とは言えません。

6)業種による差異はあるのか

例えば、取引先が固定客が中心か一見客が中心かを判断にする金融機関があるようです。一見客対象の場合は景気の動向の影響を受け易いので景気の先行きを勘案するそうで、固定客中心の場合は顧客が大手か否か等の属性を見られるようです。また、相談するときには業種を必ず聞かれたのでどの業種が不利でどの業種が有利なのかは一既に言えませんが多少はあるのかなと思えます。

7)店舗・事務所併用住宅の場合は

自営業、個人事業主の中には自宅と店舗・事務所を併用している方も多いと思います。住宅ローンは、あくまでも「住宅」を対象としたローンであるため店舗・事務所兼住宅の場合は注意が必要です。

この場合、店舗・事務所といった事業に使う部分の床面積が1/2以上の場合には住宅ローンの対象とはなりません。1/2を超えない場合でも、建物一棟の床面積のから事業に供する部分の床面積を控除した住宅部分だけが住宅ローンの対象となり、事業用の部分は自己資金で賄う必要があります。

昔は融資担当者が完成後の建物を見に行くことはあまりなかったようで、完成したら金融機関に事前に申請した用途と違う建物だったというのがありました。例えば、1階の一部に駐車場を作ると申請していたのに、実際は住宅にしていたなんていう事例もあります。しかし、最近では建物が完成した後、その建物を融資担当者が見に行く場合が多いようです。

事前に申請した建物と完成後の建物が違う場合にはローンの一括返済を要求されることもあるので、ご注意下さい。

8)まとめ

今回の記事を書くにあたり何軒かの金融機関を取材しました。自営業や個人事業主はサラリーマンに比べ住宅ローンが借りにくい部分もあるとは感じますが、事業をしっかり行い、金銭管理がしっかりなされているなら問題はありません。ご自分で判断されず、まずは金融機関に相談に行ってみましょう。


この記事は、滝沢不動産鑑定事務所 滝沢 憲一様に寄稿いただきました。 経営ハッカーでは、記事制作にご協力いただける方を募集しております。 お申し込みはこちらから

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