個人事業主とフリーランスが退職金を得る方法は?節税効果も解説!
個人事業主とフリーランスは定年がなく、長く働ける魅力はあっても、退職金制度がないことに不安を感じたことはありませんか?あきらめる必要はありません。今回は、個人事業主とフリーランスが自分で準備できる退職金についてご紹介したいと思います。
1)会社員も個人事業主も自分で準備する時代に突入
会社勤めの方にとっては1つの楽しみであり、まもなく定年退職を迎える方にとっては生活のベースともなるのが「退職金」。退職金はもともと、終身雇用制度を支えるために賃金を後払いすることで足止めをするといった色合いが濃いものでしたが、終身雇用制度が崩れた現在では、退職給付制度を取り入れている企業自体が減少しつつあります。
厚生労働省が発表している「平成25年就労条件総合調査結果」によると、退職給付制度を設けている会社の割合は75.5%。平成15年は86.7%で、10年間で11.2ポイント減っており、急速に制度を取り入れる会社が減少しています。
退職給付制度の種類は大きく「退職一時金 = いわゆる退職金」と「退職年金制度 = 退職後一定金額を年金として支給」の2種類があります。
ただし、これらはあくまで企業へ雇用されている会社員の場合のみ。個人事業主やフリーランスとしてご活躍の方にとっては、当然退職金はありません。
定年がなくいつまでも現役として働き続ける魅力はあっても、働けなくなったときにどうしたらよいのか、不安に感じたことはありませんか?個人事業主の基本は、自分でやりくりすることです。万が一のことを考えて自分で退職金を準備してみてはいかがでしょうか?
2)小規模企業共済制度を利用する
まさにズバリ、個人事業主のための退職金制度として設立された制度が「小規模企業共済制度」です。40年以上の歴史があり、平成26年3月時点で123万人以上が加入しています。
制度の内容
- 毎月の積立金額は1千円~7万円で任意で金額を設定できる
- 積立金額(年最大7万円 × 12ヶ月 = 84万円)はまるまる所得控除対象で、確定申告時に「小規模企業共済等掛金控除」が受けられる
- 事業を辞めた時、退職した時、事業を譲渡したときなどに受け取ることが可能。任意解約も可。受け取り方法は一括受取以外に10年15年といった指定年数での分割も可能
退職金を自分で準備しながら、確定申告時に「小規模企業共済等掛金控除」も受けることができるため、銀行で積立貯金をするなら断然こちらの方が魅力を感じます。
個人事業主やフリーランスは、月や年度によって売上が大きく変わることがあるので、多いときは掛金を多く、少ない時は少なくというふうに自由度が高いのも魅力です。
ただし、納付月数が20年未満の場合は元本割れし、12か月未満の場合は掛け捨てとなってしまうことがデメリットです。ちなみに加入できるのは個人事業主か「小規模企業」です。小規模企業はう従業員数20名以下が目安です。
〈参考〉 小規模企業共済で個人事業や中小企業の節税対策 小規模企業共済制度(中小機構)
3)中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)を利用する
こちらも「小規模企業共済制度」と同様に、国が提供している共済制度です。「小規模」と「中小企業」という違いはあるものの、個人事業主でも加入が可能です。
制度の内容
- 毎月の積立金額は5千円~20万円で任意で金額を設定できる。ただし掛金の減額には正当な理由が必要
- 積立金額(年最大20万円×12ヶ月=240万円)は全額経費扱いとなる
- 40か月(3年4か月)以上の積立で掛金全額保証される
- 解約時の理由についても問われない
〈参考〉中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)(中小機構)
退職金制度よりも、万が一経営が傾いたときのセーフティ共済という色が濃いですが、退職金制度としても利用できます。ただし、小規模企業共済制度と同じく12か月未満の場合は掛け捨てとなってしまうことや、1年以上経営が継続していないと加入できないことに注意が必要です。
とはいえ、解約自由が問われない点や、年最大240万円までの掛け金をすべて経費として参入できるというメリットがあります。
4)選び方のポイント
小規模企業共済制度と中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)、どちらを選べばよいのか迷ってしまいますが、選び方のポイントを調べてみました。
年額の掛金で選ぶ 年間84万円以下⇒小規模企業共済制度 年間84万円より多く掛け金を支払いたい⇒中小企業倒産防止共済
掛金の自由度で選ぶ 増減を自由にしたい⇒小規模企業共済制度 掛金減少に条件が合っても良い⇒中小企業倒産防止共済
年数で選ぶ これから20年以上積み立て予定⇒小規模企業共済制度 20年は難しく、これからだと3年4か月以上積み立て予定⇒中小企業倒産防止共済
受け取るときの費用計上方法で選ぶ 退職所得として退職所得控除が受けられる⇒小規模企業共済制度 事業所得と扱いになってもよい⇒中小企業倒産防止共済
〈参考〉 退職金の所得税計算方法 個人事業主の所得税計算方法(国税庁)
ざっくりとしたまとめにはなりますが、この4つのポイントで選んでみてはいかがでしょうか?
5)まとめ
個人事業主やフリーランスが退職金を得るためには、共済金として積み立てていくことが必須であることがわかりました。銀行の積立預金とは異なり、そこには節税効果があります。
長く働けるメリットと将来への不安というデメリットのバランスを取るために、今あるお金を将来のために積み立ててみてはいかがでしょうか?どちらも国が管轄している中小企業基盤整備機構の共済制度なので安心です。