フリーランスがキャッシュフロー計算書を財務三表で最初に作るべき理由
フリーランスも事業家であると同時に、法人を設立していれば企業経営者だ。だとすれば当然、決算をするために、財務諸表を作らねばならない。
人によっては「税理士や会計士に任せきりにしている」なんてこともあるかもしれない。特にフリーランスとして事業をしていれば、経理や会計の処理といった事務作業にまではなかなか手が回らない場合もあり、なおさらだろう。
しかし、財務諸表など世で広く使われているものにはそれだけ、有用だとみなされる理由があるのだろう。そう言い切ってもいい。実際、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書は非常に役立つし、意義深い。筆者もフリーランスの書き手だが、自身の事業についても、得るところが大きい。
そこで今回は、フリーランスにとっての財務諸表の意義について書く。自身の経験に基づいてフリーランスで働き始めた人にとっては、キャッシュフロー計算書をまず作ることをオススメするとともに、その理由を解説する。
フリーランスの筆者が四半期財務諸表を作ってみた
さて、筆者自身の経験から説明をはじめよう。筆者は法人を設立して、3期目を迎えている。つまり、2度の決算を経験して「は」いる。ただ、四半期毎の財務諸表や予測というのは作らずに、毎年、決算直前になって、「ヒィヒィ」言いながら、一年間の売上と経費、おカネの動きをまとめて決算申告をしてきたクチだ。
その筆者がこのほど、四半期の経営状況を予測するための財務諸表を作ってみた。正直に言って、そこから得るものは非常に大きく、同じフリーランス稼業の人達にはぜひとも、一度取り組んでみることをオススメしたい。中でも、キャッシュフロー計算書をきちんと押さえておくことが、小規模の事業を運営する上で非常に大切だろう。
「なぜ、キャッシュフロー計算書」なのかという本題に入る前に、財務諸表の概略について、さらっと見直そう。具体的には、貸借対照表(バランスシート、B/S)、損益計算書(プロフィットアンドロス、P/L)、そしてキャッシュフロー計算書が財務3表と呼ばれて、広く使われている。ほかにも経営に関するものとしては、「日繰表」を仲間に入れてもいいだろう。いずれも事業経営を行う上で、非常に参考になる資料だということは請け合いだ。
また、そもそも、「なぜ四半期予測、財務諸表を作ろうと思ったのか」についても言及しておこう。
ほとんどこれまで、自分のアタマの中で、作業量と、受注の量、売上と経費などを計算してきてなんとかやりくりをしてこられた。ただ、そこには「先の見通しをつけられない不安」や「事業を成長させる未来や、自分の事業の継続性への不透明感」があって、それを払拭したいと思ったのだ。その点では、財務諸表を作れば、少なくとも、現在地を明らかにできる。それが、理由だ。
「入るを量りて出ずるを為せ」ば......
それでは、キャッシュフロー計算書を作成するフリーランスにとっての意義を見ていこう。実際問題としては、(人にもよるが)フリーランスは自分のノウハウや知識を生かして、サービスを提供し、対価を受け取るわけで、継続的な関係を築いていれば、「財務諸表なんて自分には関係ない」と思えてしまうかもしれない。
しかし、現実には、フリーランスもビジネスの一つであり、商売だ。だとすれば、利益を最大化もしたいわけで、自ずから「経営」や「事業の成長」を意識せざるを得ない。ここに、財務諸表を取り入れる一つの意義がある。
ビジネスの古典的な訓話からも学んでおこう。曰く「入るを量りて出ずるを為せ」という。その意味を簡単に解説すれば、自身への収入がどのくらいあるのか正確に計算してから、それに釣り合った支出の計画を立てるのが良いということだ。
「収入」、企業経営ではつまり「売上」から、支出といういわば費用を差し引いたものが利益なのであるから、ことわざも本質をついているといえるだろう。
特に、フリーランスという立場で働いていれば、おカネの出入りの管理に専念するスタッフもおらず、資本の流れを把握するためにも、自身の事業のおカネの流れを、「自分で」把握しておかなければならない。
この「入るを量りて出ずるを為す」ためにこそ重要なのが、キャッシュフロー計算書なのだ。これをきちんと押さえておけば、資金がショートして、クビが回らなくなるなんて事態も避けることができるのだ。
一方で、貸借対照表や損益計算書はどうか。実際問題としては、日々の資金繰りを直接的に反映するキャッシュフロー計算書やその見通しを作れば、損益計算書を作成するための基本的な情報ももちろん整理される。つまり、最も切実な資金繰りについての財務表を作れば、損益計算書を作ることも比較的容易なのだ。そして、何よりもコワイ、資金ショートなどを避けるために役立つのが、キャッシュフロー計算書を作っておこうということだ。
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おカネの使い道の理解は経営効率化のカギ
カンタンにキャッシュフロー計算書を作成する効用について書いておこう。もちろん貸借対照表や損益計算書の作成と同じように、経営の状況を一覧できるようになるというメリットはあるし、実務的な側面からも、決算時に提出する書類の作成をより容易にする。が、それはひとまずの前提だ。
まず挙げられるメリットは、おカネの出入りの見通しを立てられることだ(当たり前すぎないか、心配だ。。。)。なので別の説明もしておこう。キャッシュフロー計算書を作る前には、漠然とした売上と費用支出のイメージしかなく、常に売上を上げるべくがんばるしかなかった。
逆に、キャッシュフロー計算書を作成して、その内容がアタマに入っていれば、「よし資金がショートする心配はないな。長期的な課題にも取り組もう」とか「おカネの流れがよくないぞ。営業をもうちょっとがんばろう」などと、バランスのとれた経営を行えるということでもある。
また、「いったい何に」「どれだけの」おカネを使っているのか把握できるのもメリットだ。現預金の収入がどれだけあるかは、キャッシュフロー計算書にはっきりと表れる。他方で、財務キャッシュフローに表れる、借入などの資金調達の影響、あるいは債務の返済にどれだけ資金を費やしているのかもわかる。
さらには、投資をしていれば、投資による損益もはっきりと出ることから、どのような用途におカネを使っているのか見極められ、どのようなおカネの使い方をするべきか構想できるのだ。実際、すでに、より効率的な動きは何かという発想と、今後の新たな展開を実現するために必要な計画を立て始めるなどの効果もある。
最後は実務的なメリットだ。月次や四半期のキャッシュフロー計算書を作成しておくことで、決算をおこなう際に、1年分をまとめて整理するというような、「すったんもんだ」の作業をしなくても済む。言い換えれば、円滑な手続きを実現させられ、それは効率的な業務の推進にも結び付くというわけだ。このようなメリットがあると言っていいだろう。
筆者も細かいお金の出入りについては、キャッシュフロー計算書と、その四半期見通しを作る前は細かく捉えられていなかった。反対に、きちんとキャッシュフロー計算書を作り、お金の流れを把握しておくことで、安心して本業に集中できるようになった。
転じて、重要な案件により多くの労力や時間、思考を割けるようになったと感じている。さらに、今後、より長い期間(半年や1年、~3年)の計画を、ふわっとしたイメージから、具体化していく手がかりを得られた。そんな手ごたえがあったものだ。