電子書籍に消費税!10月1日から施行される消費税の改正を徹底解説
電子書籍や音楽をウェブサイトからダウンロードされている方は多いと思います。2015年10月から、海外のサイトから電子書籍や音楽の購入をする場合に、日本の消費税が課税されることになりました。今回は、2015年10月に改正が実施される消費税の取り扱いについて、片山 康史税理士にうかがいました。
1)海外からの電子書籍や音楽配信には消費税がかかっていなかった
これまではインターネットを介した海外の事業者からの電子書籍・音楽の購入や広告の配信などには消費税が課税されません。これは、電子書籍・音楽・広告の配信などの取引については、配信などを行う事業者の事務所が海外にある限りは、消費税の仕組みとして課税の対象にならないためです。
ただこの仕組みには問題点があります。例えば税抜100円の電子書籍を、日本の事業者が販売したら108円であるのに対し、海外の事業者が販売したら100円です。以前からこれは不公平だという不満の声が、日本の事業者からあがっていました。
(経済産業省「平成27年度 経済産業関係 税制改正について」P39より抜粋)
そこで、事業者が海外にいたとしても、購入する消費者が日本の居住者であれば、消費税を課税するという改正(国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等”)が実施されることになりました。
2)対象になる取引は?
2015年5月に国税庁が公表したQ&Aによると、改正の対象となる取引(電子通信利用役務の提供)となるのは、インターネットを介して行われる取引のうち、以下に掲げるものが例示されています。
- インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
- 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
- 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
- インターネット等を通じた広告の配信・掲載
- インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
- インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
- インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
- インターネットを介して行う英会話教室 など
(国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A 問2 平成27年5月 国税庁消費税室)
具体例を挙げると、Amazonが提供するKindleや楽天のKoboなどは海外から電子書籍を配信していたので、従来は消費税がかかっていなかったのですが、2015年10月以降は消費税が課税されることが予想されます。
3)“消費者向け”サービスの場合の課税の方法
課税の方法ですが、2種類あります。まずは該当するサービスが”事業者向け”なのか、”消費者向け”なのかを区分する必要があります。そのサービスが”消費者向け”である場合には、海外の事業者(国外事業者)が消費税を納付することになります(国外事業者申告納税方式)。
税抜価格100円で購入していた電子書籍・音楽などは、2015年10月以降は、税抜価格がそのままであれば、購入価格は108円になります。そして消費税分の8円を国外事業者が日本の税務署に納税します。
税抜で経理している事業者は、2015年10月以降に、事業のために海外から電子書籍などを購入する際には注意が必要です。今までは消費税の対象外取引でしたが、改正後は課税取引になります(特定課税仕入)。freeeで自動経理している場合には要確認の事項でしょう。
4)“事業者向け”のサービスの場合の課税の方法
取引の内容や契約書などから、そのサービスが”事業者向け”であることが明らかである場合には、取引に係る消費税を日本の事業者が、国外事業者に代わって納付する必要があります。これを納税義務者が国外事業者から日本の事業者に逆転する(リバース)ことから、リバースチャージ方式といいます。
リバースチャージ方式では、日本の事業者の仕訳としては以下が一つの例として考えられます。 (サービス料)100円 / (現金)100円 (仮払消費税)8円 / (仮受金)8円
(個別通達5の2より)
課税売上割合が95%以上の場合には、仮払消費税と預り金は相殺されますので、納税は発生しません。国税庁公表のQAによると、課税売上割合が95%以上である事業者と簡易課税を採用する事業者は当面の間は申告しなくともよいとなっていますので、課税売上割合が95%未満の事業者だけが影響があると考えられます。
まとめ
消費税という観点では大きな改正になります。もちろん、消費税が課税されることになることと値上げされることというのは別ですが、少なくとも該当する取引を行われている方におかれましては、事前に洗い出したうえで、経理に影響があるかどうかを税理士に相談するなどの準備をするのがよいでしょう。