国民健康保険の保険料についてわかりやすく解説
国民健康保険の仕組みをご存知ですか? また、何気なく払っている国民健康保険料はどのように決まっているかご存知でしょうか? 国民健康保険の存在自体は広く認知されていますが、どのような仕組みでどのように保険料が決定されているのかを詳しくご存知の方は少ないのではないでしょうか。
今回は国民健康保険の仕組みと保険料の概算の仕方についてわかりやすく解説していきます。
1)国民健康保険の仕組みと保険料
日本では国民皆保険制度が採用されていて、全ての国民が公的な医療保険に加入しなければなりません。公的な医療保険は、会社などの組織に属している雇用者が加入する「被用者保険」と自営業の方などが個人で加入する「国民健康保険」に大きく分かれています。
被用者保険は企業などが設立する健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合が運営主体となっています。一方、国民健康保険は原則として住民登録している住所地の市区町村が運営主体です。
もともと医療保険制度は相互扶助(互いに支え合うこと)の考えで成り立っていますが、同様に相互扶助の考えで成り立つ一般の生命保険などとは、保険料の決定方法が異なります。
生命保険の保険料は受取る保険金の金額や加入者のリスクによって決定されます。しかし、公的な医療保険では基本的に受けるサービスは加入者全員が平等であり、主に所得によって保険料が決定されるのです。そして、国民健康保険では加入している自治体によっても保険料の金額が異なります。
2)国民健康保険料の決め方
国民健康保険はそれぞれの自治体ごとに保険料の計算が異なりますが、全ての自治体で被保険者の所得や人数を基礎に計算が行われます。また、保険料は基本的に以下の3項目の財源別に分けて計算が行われ、その合計額が年間保険料として決定されるのです。
①医療分保険料(医療保険給付の財源) ②後期高齢者支援金分保険料(後期高齢者医療制度の財源) ③介護分保険料(40歳から64歳までの方のみが対象で介護サービスの財源)
上記①から③を計算する際には、①から③のそれぞれについてA:所得割、B:均等割、C:平等割を計算し、その合計額が①から③の各保険料となります。イメージとしては以下のような算式です。
年間保険料=医療分保険料(①A+①B+①C)+後期高齢者支援金分(②A+②B+②C)+介護分保険料(③A+③B+③C)
A:所得割=(前年所得‐控除額)×所得割率 B:均等割=均等割額×加入者数 C:平等割=平等割額(一世帯あたりの負担額)
上記のA、B、Cの計算式にある、控除額、所得割率、均等割額、平等割額はそれぞれの自治体によって異なります。また、自治体によっては平等割がないところもありますが、逆に資産割として、所有している資産の固定資産税に対して別途賦課する自治体もあります。
3)具体的な保険料の計算例
それでは東京都江戸川区在住の個人事業主を例に、具体的な国民健康保険料の計算をしてみましょう。
【前提】 ・東京都江戸川区在住で前年度の事業所得が400万円の個人事業主 ・年齢は42歳で扶養家族は妻39歳、子12歳で妻と子の所得はなし ・その他の保険料減額、減免の事情はないと仮定
まずは江戸川区のホームページでそれぞれの保険料に係る料率や金額を確認してみましょう。所得割額の計算のもとになる所得金額は、加入者一人ごとに前年度の総所得金額および山林所得金額並びに株式・長期(短期)譲渡所得金額等の合計額から一律33万円を控除した金額です(具体例では400万円-33万円=367万円)。
【計算例】 ①医療分保険料 A所得割=(400万円-33万円)×6.45%=236,715 B均等割=33,900×3=101,700 C平等割=0 ※江戸川区は平等割がありません。 A+B+C=338,415
②後期高齢者支援金分保険料 A所得割=(400万円-33万円)×1.98%=72,666 B均等割=10,800×3=32,400 C平等割=0 A+B+C=105,066
③介護分保険料 A所得割=(400万円-33万円)×1.49%=54,683 B均等割=14,700×1(40歳から64歳までの被保険者数)=14,700 C平等割=0 A+B+C=69,383
年間保険料額(概算)=①+②+③=512,864
具体例では上記のように概算保険料の計算ができます。ここで補足ですが、年間保険料は自治体ごとに上限額が定められており、江戸川区では介護分保険料の負担がある場合は85万円、介護分の負担がない場合は69万円が上限金額です。
また、親切な自治体では保険料概算のシミュレーションができるページを設けており、具体例の江戸川区もホームページ上で概算保険料の計算ができるようになっています。ぜひご参考にしてみてください。
4)まとめ
国民健康保険の仕組みと保険料の計算について解説しましたがいかがでしょうか。重要なポイントとして、国民健康保険は運営主体である地方自治体によって保険料が異なることが挙げられます。保険料の概算を行う際には、主管する地方自治体のホームページ等で計算方法や料率の確認を行うことが重要です。
また、計算方法等も複雑になっているため、専門知識がなければできないものと敬遠されがちですが、実際にはほとんどの自治体が上記の計算例で概算額を計算することができます。興味のある方は是非ご自身でチャレンジしてみてください。