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2015年11月30日(月)

タックスヘイブンについてわかりやすく解説

経営ハッカー編集部
タックスヘイブンについてわかりやすく解説

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たまに、新聞やテレビなどで「タックスヘイブン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。最近は決して富裕層だけの話ではなく、節税対策などでもその名前をちらほら聞くようになってきたのではないでしょうか。

 

1)タックスヘイブンとは

タックスヘイブン(Tax Haven)は日本語でいうと、「税の避難港(所)」という意味で税金天国(Tax Heaven)ではありません。要するに税金の支払いから避難する場所という意味で用いられています。

それでは具体的にタックスヘイブンをする場所について、どんな特徴・形態があるのか見ていきましょう。タックスヘイブンには必ずしも国だけではなく、BVI(ブリティッシュバージンアイランド)やケイマン諸島のような旧植民地や、イギリスの王室領であるチャンネル諸島(ジャージー島など)も含まれます。

1.タックスヘイブンの特徴
  1. 無税、または名目的な低い税率を課すのみである
  2. 規制が緩い
  3. 秘匿性が高い
  4. 実質的活動が行われることを必ずしも要求しない

みなさんのイメージですと無税や低い税率のイメージが強いかもしれませんが、秘匿性が高くないと本国の税務当局に課税される恐れがありますし、タックスヘイブンには本社の登記だけを行う「ペーパーカンパニー」を置くことが多いですから、実質的活動が要求されると意味がありません。

2.タックスヘイブンの形態

(1)無税国 基本的に法人税、所得税、相続税などが一切かからない国々です。BVIやケイマン諸島などがそれにあたります。 (2)低税率国 法人税率でいうとシンガポールの17%、アイルランドの12.5%など、低い税率の国がタックスヘイブンに用いられてる場合もあります。 (3)国外源泉所得非課税国 「全世界所得課税」といって本来、所得が海外で生じても、登記をした本国で課税されることになる国があります。ところが、この国々では国外で所得が生じ、送金があっても課税されません。例えば香港の会社から日本の会社に貸付をした時の利息については香港では課税されず、日本で10%の源泉徴収(租税条約適用後)で終わりです。 (4)租税特典国 特許所得や投資による所得など一定の活動に税金の優遇がある国です。

2)タックスヘイブンは違法?

そもそもタックスヘイブンは違法ではないのでしょうか?この疑問、結論から言うとタックスヘイブンそれ自体については、必ずしも違法とは言えないというのが現状です。タックスヘイブンは、国家間の税率の違いを上手に活用した言わば「究極の節税対策」でもあるため、税率が低い国であるパナマやモナコなどに法人を設立すること自体には違法性はないのです。ただ、現実問題としてタックスヘイブンは税金の問題だけではなく、マネーロンダリングの温床となるリスクも懸念されています。タックスヘイブンが横行するようになると、その国の租税自体に悪影響が及ぶ可能性も懸念されるため、今後は日本だけでなく国際的な枠組みでタックスヘイブンとどう向き合っていくのかを考える必要があるでしょう。

3)タックスヘイブンにはどんなメリットがあるの?

1.日本の税制全般から考えて

日本では法人税率の引き下げが政府の公約となっていますが、それでもまだ実効税率で30%を切るのがやっとであり、ほとんどの先進国が20%台であることを考えると、企業がタックスヘイブンを使った節税を考えるのは一定の合理性はあります。

また、日本の所得税の最高税率は45%、相続税は55%と非常に富裕層には厳しい税率になっています。所得税、相続税がかからない国もあることも考えれば、富裕層がタックスヘイブンを使いたくなるインセンティブはあるでしょう。そこで代表的なタックスヘイブンを使った過去の例を見てみましょう

2.武富士事件

当時、日本の非居住者が海外資産を譲渡された場合は日本では課税されなかったので、贈与税のない香港の武富士の当時の会長の長男が移住し、武富士オランダ法人の株式(武富士株を大量に保有)を贈与され、日本でも香港でも課税をされないという事件がありました。国税当局は一旦課税を行いましたが、敗訴し、課税は取り消しとなっています。(ただし、現在の税法では課税されます)

3.東京エレクトロンの例

半導体メーカーである東京エレクトロンもタックスヘイブンを活用しようと計画していた企業の一つです。最終的にはアプライド・マテリアル社との経営統合はとん挫してしまいましたが、当初の予定では三角合併の仕組みを使って、統合持ち株会社を低税率国オランダに設立する予定でした。

4.政府はどうして取締りを考えるのか

富裕層やグローバル企業がタックスヘイブンを使って節税するのは一定の合理性はあるかもしれませんが、当然国の徴税額は少なくなり、不利益を被ります。本来取れるべき税金が取れないわけですから、回収に躍起になることもあるでしょう。また、加えて国際的にはマネーロンダリングなど不正な資金の舞台となっていることもあります。

現在、タックスヘイブンによる行き過ぎた節税を防ぐため、「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」がOECD諸国を中心として、税務当局で進んでいます。

4)タックスヘイブンの防止策

出国税、国外財産調書制度や先ほど紹介した武富士事件後の相続税法改正などがありますが、ここではタックスヘイブン税制について簡単に述べておきましょう。

タックスヘイブン税制とは、一定の税負担(20%)未満の国・地域にある子会社(居住者や内国法人が50%超の株式を保有)の所得のうち、一定の金額についてはその10%以上保有する株主である日本国内にある法人や居住者の所得とみなして合算して課税する制度です。

ただし、適用除外要件があり、低税率国で事業を行う(節税以外)ための合理性が求められます。特に個人の場合は雑所得とみなされますので他の所得と合算できず、その外国法人がその国の政府に納めた税金も控除されないので、法人より不利といえます。

5)まとめ

当然グローバル企業や富裕層にとってはタックスヘイブンを利用したいインセンティブは働きます。しかし、世界各国の税務当局もその抜け道をふさごうと日夜考えています。

特に相続税対策などであると、立案してからいざ実行の間に税法で抜け道がふさがれるリスクがあります。そういった意味ではタックスヘイブンを安易な節税手段として使うのはリスクが高いかもしれません。

ベンチャー企業や多国籍外資系企業のCFO(最高財務責任者)を歴任後独立しました。非常に洗練された経営管理から泥臭い資金調達の奔走まで幅広く体験しています。企業の経営陣にいた期間が長いので、社長と苦楽を共にしてきたと自負しています。FREEのお客様ではお客様の作業をできるだけ簡便化して、実務にどんどん注力していただければと思います。一方、どんどん未来志向の事業計画やKPI(重要経営指標)管理、資金調達を含めた様々な経営相談などのお役にたてればと思われます。 監査法人にもいたので、ほぼどのような業界も経験していますが、どちらかというとサービス業系のお客様が多いです。

 

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