損金って何? 損金に算入されるとかされないってよくいうけど?
法人所得は、利益から損失を差し引くことで算出される金額です。
少しでも法人税額を節税するためには、損失を表す「損金」をどれだけしっかり計上できるかがカギとなってきます。
損金という言葉そのものだけを見れば単なる出費というイメージですが、法人の中でも特に中小企業にとっては節税効果を高める要素としてかなり大切な項目となってきます。
そこで今回は、損金の分類や損金として算入できないものなど、損金についての知識を徹底解説していきます。
損金は3つに分類される
損金は「原価」「費用」「損失」の3つに分類されます。
損金とは、費用や損失という言葉からもわかるように「会社から外へと出ていくもの」で、年度単位で計算されます。
出ていくものならなんでも損金扱いにしてしまうと、不当な節税行為に及んでしまう恐れがあるため、損金として算入できないものについてのルールが明確に定められています。
原価
原価とは商品の原価です。
年度内の商品の原価を発生主義で計算し、その事業年度の原価として計上します。
発生主義で原価の損金が計上されるということは、商品の売り上げも同時に益金として計上されるということです。
原価の計算方法と用語の意味は以下のとおりです。
(期首商品棚卸高+当期商品仕入高)−期末商品棚卸高=売上原価
期首商品棚卸高:年度初めに保有していた商品の原価
当期商品仕入高:年度中に仕入れた商品の原価
期末商品棚卸高:年度末に残っていた商品の原価
売上原価:年度中に販売した商品の原価
費用
事業活動においてかかる費用は、どんなにわずかな出費でも費用に分類し、原価と同じく発生主義で損金計上します。
このままだと正当な目的以外の費用まで損金として算入されてしまう可能性があるため、費用はさらにいくつもの項目へと枝分かれするような仕組みになっています。
その中には、費用でありながら損金として計上できないものや計上そのものもしくはタイミングが制限されているものなどがあります。
損失
損失とは、固定資産価値の減少分や不良債権などのような「会社の資産価値の減少分」のことです。
原価と費用に関しては発生主義で計上するという決まりがありますが、損失のタイミングに関する決まりはありません。
損金として算入できない項目や算入が制限されている項目
損金として算入できないものや算入が制限されているもので共通しているのは、以下のような「経営者判断でコントロールできてしまう費用や損失」です。
役員への給与
社長や取締役などの会社役員に対する給与は、節税目的で給与額をわざと大きくするなどの操作が可能な立場の人の給与ということで、損金への算入ができません。
ただし、一般の従業員と同様に月給のような形で一定額の給与を受け取っているようであれば損金へ算入できます。
親族経営の会社との取引
親族経営の会社間で、節税目的で無価値なものを高額で購入するなどの不当な取引が行われた場合は、取引そのものが認められず損金にも算入できません。
寄付金
寄付金は寄付する側が金額を設定できるものなので、慈善活動への寄付など一部を除き損金に算入できないというのが原則です
接待交際費
接待交際費は原則として損金への算入は不可ですが、条件を満たしている場合は1人5,000円までの飲食費、5,000円を超える飲食費の50%を損金とすることが可能です。
ただし、資本金1億円以下の会社は、800万円までの交際費を全額損金とできる特例が設けられています。
資産評価額
資産価値の評価額が減った分の金額を損金とすることは原則できませんが、災害によって評価額を下げなければならなかった場合や売却の見込みがない資産の評価額は損金扱いになる場合があります。
貸倒損失
回収できなくなってしまった売掛金などの不良債権は、操作防止のために厳しく設定された条件をクリアすることによって損金に算入できます。
分割で損金が算入されていくもの
損金算入が「発生主義」で処理されていくため、分割で算入していかなければならない損金もあります。
繰延資産
開業費用は開発費用など、支出後も継続的に収益を出していくようなタイプの費用は、複数年にわたって損益として算入され続けます。
減価償却費
パソコンや自動車などの減価償却資産は年々価値が減少していくので、1回で損金とせずに減少した分の費用を複数年にわたって損金として計上していきます。
“「飲食費は一人あたり5000円まで」と上司や経理部の人に言われたことがあると思います。これは、一定の条件を満たせば1人あたり5000円以下の飲食費は交際費から除外して会議費などにしてよいとなっているためです。”
<引用元>経営ハッカー:交際費はどこまで損金になるの?法人税の税務調整まとめ
まとめ
損金についての知識は、法人の節税には欠かせない重要な知識です。
計上間違いや計上漏れなどを起こさないよう、関連する項目についての正しい知識をしっかりと身につけておくようにしましょう。
“法人税の課税所得の計算上、損金の額に算入するためには、法人がその確定した決算において費用又は損失として経理すること(以下「損金経理」という)を要件としているものがある。これは、法人の「意思」は確定決算における処理によって判断するのが適当であるという考え方に基づいている。”
<引用元>国税庁:法人税法の損金経理要件について