固定資産の修繕費と資本的支出の違いと見分け方をわかりやすく解説
事業用資産の「修繕費」は、経費として計上できる支出なのですが、修繕費なのかどうかの判断が難しいところです。
そこで今回は、事業用資産の修繕費について解説していきたいと思います。
修繕費とは
修繕費とは、事業用資産の修理や維持管理のために使う費用のうち、経費として計上できるものです。
修繕費の例
・OA機器の修理
・コピー機のメンテナンス
・制服リフォーム
・清掃の外注
・害虫駆除
・屋根の修理
・窓ガラスの交換
・外壁塗装
修理や維持管理目的以外の費用であっても以下の条件を満たしていれば修繕費として計上できます。
・建物を移動もしくは解体し移築した際の費用
・機械装置移設のための費用
・地盤沈下した土地の原状回復をを目的とした地盛費用
・地盤沈下により建物や機械装置が浸水したことによる床上げ・地上げ・移設費用
・土地の水はけを良くするために砂利や砕石等を敷設するための費用
車に関する修繕費は「車両費」扱いとされるのが一般的です。
資本的支出との違い
事業用資産の修理や維持管理の費用のうち経費とならない費用は「資本的支出」と呼ばれます。
資本的支出の例
・部品交換により機械の性能をアップグレード
・非常用階段の設置
・物件の間取り変更
資本的支出は、資産価値を高めたり、資産が使用できる期間を延ばしたりするための費用ということで、一括で計上せず減価償却の固定資産として計上します。
ただし、以下の条件に該当する支出は経費として一括計上できます。
・20万円未満の資本的支出
・3年周期以内におさまる程度の支出
・資本的支出か修繕費かが明らかではない1つの修理金額が60万円未満もしくはその資産の前期末の取得価格の10%以下(法人の場合は支出金額の30%の額とその資産の前期末の取得価格の10%以下で、金額が少ないほうを修繕費、残額を資本的支出としている場合の修繕費)
修繕費かどうかを見分ける方法
「事業用資産の修理や維持管理のために使う費用」が修繕費となるかの、以下の条件と照らし合わせると判別できます。
・20万円未満の支出かどうか(資産価値が増していないなら20万円以上でも可)
・3年以内の周期で支出しているかどうか
・資産価値が高まるものでないかどうか
・費用が60万円未満もしくは前期末の取得価格の10%以下かどうか(法人の場合支出金額の30%の額と前期末の取得価格の10%の額の金額が小さいほう)
・資本的支出に該当するかどうか
"このような修繕費と資本的支出の区別は、修繕や改良という名目によるのではなく、その実質によって判定します。"
<引用元>国税庁:修繕費とならないものの判定
修繕費の仕訳例
コピー機の修理代が2万円を現金で支払った場合の仕訳例
修繕費(借方)20,000:現金(貸方)30,000
建物の修繕費70万円(修繕引当金50万円)を銀行振込で支払った場合の仕訳例
修繕引当金(借方)500,000:普通預金(貸方)700,000:修繕費200,000
修繕費と固定資産の違い
固定資産とは、土地や建物、機械装置などの「有形固定資産」各種権利等の「無形固定資産」長期前払費用や長期保有株式などの「投資資産」など、「販売目的ではなく継続的に使用することを目的とした事業用の資産」のことです。
これら固定資産の修繕や維持管理のためにお金をかけた結果、「資産の価値を高めた」かどうかで修繕費とするか資本的支出とするかが決まります。
なお、経理処理においての修繕費は「修繕費」、資本的支出は「固定資産」として処理されます。
“固定資産を購入した場合、少額のものを除き、購入した時に全てを費用とすることはしません。”
<引用元>経営ハッカー:有形固定資産と無形固定資産の減価償却方法の違いをわかりやすく解説
まとめ
修繕費として計上できるつもりで費用をかけたはずが、固定資産として処理しなければならなくなる場合があります。
そのような事態を防ぐためにも、修繕費と資本的支出の違いについて判別できるよう原則を把握しておきましょう。