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2014年06月10日(火)

起業するなら知っておくべき経営がわかる決算対策12項目

経営ハッカー編集部
起業するなら知っておくべき経営がわかる決算対策12項目

これだけ押さえておけば安心〜決算でやるべきこと〜

imasia_9157463_S (1) 決算なんてメンドクサイ! 会社の数字は、オレの頭のなかにはいっているから、必要ない!

という人でも、会社をつくった以上、決算から逃れることはできない。税務署に払うべき税金の計算も決算をもとに行いますし、借入のさい、決算書は銀行があなたの会社を評価する基準になる。これからビジネスを大きくしていくために、決算はとても大切なプロセスです。

そもそも、決算とはナニか?

決算と言う言葉は知っていても、いまさら聞けないという人のために簡単に説明しましょう。

会社はいったん作ったら、資金が続かないなど、何らかの理由でやめない限り、その営業活動は継続して何年も続きます。自分の会社は儲かっているのか、新規事業に投資したお金は増えているのか、減っているのか、現況を知りたいのが人情というもの。

そこで、人為的に期間(=会計期間)を区切って、1会計期間中にいくら儲かったのか、銀行の残高はいくら残っているのか、財産や借金はどのくらいあるかを集計して、1枚の表にまとめるのが「決算」です。

■決算業務の流れ

  • 1 月次で入力された最終の月次試算表を元に
  • 2 決算整理の結果に基づいた決算整理仕訳を行い
  • 3 計算書類(BL・PLなど)を作成する。

では、具体的に「決算」とはどのようなことをするのでしょうか?

毎月、正確に帳簿をつけているだけでは、決算はできないのでしょうか?

答えはイエスです。

納品したけれどまだ請求書を発行していないとか、お金は払ったけれどまだサービスの提供を受けていないとか、商品は買ったけれどまだ倉庫に眠っているとか、月々の取引を単純に集計しただけでは、今年の儲けを正しく把握できないからです。 決算では、どの会社も守らなければならない統一的なルールがあります。 今年はいっぱい儲かったから、いっぱい仕入れておこうとか、取引先からの入金を遅くしてもらおう、など不埒なことを考えるのが人の常だからです。

そこで決算では、どの会社も同じ基準で会社の儲けを計算できるよう、毎月の帳簿に所定の調整を加えて「計算書類」を作成します。この調整を「決算整理」といいます。何だか難しそうですね。でも、慣れてしまえば簡単なのでご安心を。

■決算整理のうち主なもの

1 現金・預金の残高を確認する。 7 発生主義に基づき費用・収益の調査を行う。
2 売掛金・買掛金の残高を照合する。 8 有価証券の期末残高を確認する。
3 仮払金・仮受金を整理する。 9 繰延資産を計上し、償却費を計算する。
4 在庫を確認する。 10 各種引当金を設定する。
5 借入金の残高を照合する。 11 各種引当金を設定する。
6 減価償却資産の償却を行う。 12 税効果会計を計算する。

決算が終わったら、下記の4つの書類を作成し、会社に保管しておきます。これらを総称して「決算書」といいます。決算書は法人税の申告書に添付して、税務署に提出したり、融資のさいには銀行に提出したりします。

    貸借対照表(BS)
    損益計算書(PL)
    株式資本等変動計算書
    注記表

それでは、決算のプロセスを具体的にみていきましょう。

①〜⑦までのプロセスは、決算初心者でも必ずやらなければならない作業で す。

⑧~⑪までは、決算の中級者、

⑫番は、上級者になったらトライしてみま しょう。

1 現金および預金の残高を照合する

① 現金実査をする

会計期間の最終日(決算日)に、現金の残高を数えて記録します。そのとき、現金の種類(金種)も控えておきましょう。例えば、1万円札が何枚、100円玉が何枚という具合に、明細を記録しておきます。現金帳の残高と手許現金の残高が合わないときは、その原因を調べなければなりません。原因としては、入出金の記帳(入力)もれや、誤記入、計算ミスなどが考えられます。どうしても内容が不明の場合は、現金過不足として雑損失で処理します。

② 銀行の残高証明書を依頼する

預金等の銀行取引は、金融機関から決算日現在の残高証明書を取り寄せます。残高証明書には、普通預金だけでなく、当座預金・定期預金・定期積金はもちろん、借入金や手形を割り引いている場合は、その残高の記載も依頼します。帳簿の残高と残高証明書の金額が合わない場合もあります。帳簿の記載ミスがないか、再度チェックをしましょう。

2 売掛金・買掛金の残高を照合する

① 重要な取引先に残高確認証を送る

売掛金や未収金・立替金・貸付金などの債権について、帳簿残高が相手先と合っているかを確認するために、返信用封筒をつけて残高確認証を送ります。残高確認証には、帳簿に残っている勘定科目と金額を記入し、同じように相手方にも、帳簿に残っている勘定科目と金額を記入してもらいます。

帳簿の残高と相手方が記入してきた残高が一致しなかったら、その原因を調べなければなりません。不一致の原因が、あなたの会社にあるとわかったら、必要な決算整理仕訳を行います。

不一致の原因が相手方にある場合には、相手先に連絡して、相手方の帳簿を訂正してもらうよう依頼します。

② 買掛金はその他債務の残高をチェックする 買掛金や未払金などの債務について、請求書などの証憑と突きあわせて、帳簿残高と実際の金額があっているかを、確認します。 仕入担当者や購買部の担当者に連絡して、確実に請求書を回収するように事前に依頼しておきます。

③ 締め後の売上を確認する 請求書の締日は、月末とは限りません。20日締めの翌月末日払いなど、決済の条件は、前もって契約で決まっています。締め日から決算日までの売上が漏れてしまわないよう、請求書の締め日以後、決算日までの間の売上を確認して、決算調整仕訳を行います。

締め後の売上を確認する方法としては、まずは、決算の翌月または翌々月の請求書の中に、当期の納品分が含まれていないかチェックします。 さらに決算日前後の出荷伝票や送付状・請求書控えなどをみて、取引年月日を確認し、当期分の売上を洗い出します。

④ 締め後の仕入を確認する 売上と同じように、仕入業者との間で15日締めの翌月末支払など、支払条件が取り交わされているはずです。相手方から届いている請求書をみて、締め日以後決算日までの間に仕入れたものがないかを確認しましょう。 締め後仕入を確認する方法は、売上と同じように、決算の翌月や翌々月に到着した請求書の中に、当期分が含まれていないかをチェックします。

さらに決算日前後の出荷伝票や送付状・請求書控えなどで取引年月日を確認し、当期の仕入として計上すべきものを洗い出します。

3 仮払金・仮受金を整理する

期中に仮払金や仮受金して計上したものは、その内容をしらべて、本来の勘定科目に振り替えます。決算書には、「仮払金」や「仮受金」という仮の勘定科目が残らないようにしましょう。

① 仮払金 仮払金は、費用になるものと、資産になるものに大別されます。期中に仮払金勘定をためてしまうと、何につかったのかわからなくなってしまい、正しい損益が把握できなくなります。 営業マンの交通費などは、決算末日までに、精算を依頼しておきましょう。立替金や貸付金など本来、他の資産に計上すべきものが仮払金に含まれていると、相手から回収できないまま、使途不明金となり、どんぶり経営の温床となってしまいます。

② 仮受金 通常は仮受金が長期にわたって、帳簿に残るということはありません。入金された理由を早期に把握し、本来の科目に振り替えます。 収入に計上すべきものが正しく計上されていないということは、正しい損益が把握できていないという事です。預り金など返済しなければならない債務が、仮受金に含まれていると、資金繰りを圧迫したり、信用を失う原因になってしまいます。

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4 在庫を確認する

会計期間内に仕入れた商品がまだ販売されていない場合や、決算日をはさんで工事が終わっていないような場合に、売上に対応した費用(売上原価)を計算するために、期末たな卸しの計算を行います。 在庫の確認は、1会計期間の損益(=期間損益といいます)を正しく計算するために、欠かせない決算のプロセスです。 決算を行ううえで、いくつか会社が守らなければならないルールがありますが、その1つに「費用収対応の原則」があります。

費用収益対応の原則とは、会社が恣意的に損益を「調整」しないように、当期に発生した費用のうち、当期の売上に対応する部分だけを当期の費用として計上しようという考え方です。翌期以降の売上に対応する費用は、いったん資産として計上します。

というわけで、「今年はたくさん利益がでそうだから、税金も大変だ。期末までに、いっぱい仕入れておこう」なんて考えは、今すぐ捨てましょう(笑)。税金が安くなるどころか、在庫の数がふくらんで、資金繰りが圧迫されてしまうだけですからね。

当期の売上原価は、下記の算式で計算します。

■ 売上原価の計算

  期首たな卸し高 + 当期仕入高 - 期末たな卸高 = 売上原価

売上原価を計算するために、期末たな卸高の把握が、決算の重要な作業になってくるというわけです。では、期末たな卸高は、どのようにして計算すればよいのでしょうか?

■ 期末たな卸高の計算

  期末たな卸高 = 在庫の数 × それぞれの単価

つまり、期末たな卸高を計算するためには、「期末の在庫の数量」と、「それぞれの単価」を把握すればよいことがわかります。

① 期末在庫の数量を把握するためには?

(1)実際に商品等の期末の有り高を数えるやり方(実地たな卸し)と、

(2)帳簿上で数量を確認するやり方(帳簿たな卸し)があります。 帳簿上の数量と実地たな卸しの数量に差額がある場合は、原因を追究し、差額部分については、たな卸し減耗損の仕訳を起こします。

②たな卸し資産の単価を把握する方法

たな卸し資産の単価を計算するには、原価法と低下法の2通りの方法があります。

低価法とは、原価法による評価額と期末時価のうち、いずれか低い金額を期末の評価額とする方法です。一方、原価法は、取得金額をそのまま期末の評価額とします。 棚卸資産は、1年を通じて繰り返し購入するのが一般的です。購入金額もその都度、異なるので、いつ、いくらで購入したものが在庫として残っているかを把握するのは大変です。そこで原価法で在庫の単価を把握する方法として、次の6種類の評価方法があります。

 1  個別法
 2 先入先出法
 3 総平均法
 4 移動平均法
 5 最終仕入原価法(課税上弊害がない場合や重要性が乏しい場合には認容)
 6 売価還元法

たな卸資産の評価方法を決定したり、変更したりする場合には、新しい評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、所轄の税務署への届出が必要です。届出がない場合には、法人税法上、最終仕入原価法に基づく原価法が適用されることとなっています。

5 借入金の残高を照合する

借入金の期末残高は、取引しているすべての金融機関から、期末日現在の残高証明書を取り寄せて、帳簿の残高と一致しているかを確認します。手形を割り引いている場合や裏書している場合は、手形のコピーを保管し、金額や期日を確認しておきます。

銀行の貸出形態には、いろいろな種類がありますが、企業向けの一般的な融資としては次の4つがあります。

証書貸付  金銭消費貸借契約書を元に実行される長期間の融資。会社が約定を守って返済している間は、長期(1年から7年程度)にわたって分割で返済できるが、返済が滞る等の約定違反があれば、期限の利益を失い、残額の一括返済を求められる。
手形貸付  手形の名宛欄に銀行の名前を記載した単名手形を銀行に差し入れることによって実行される短期(原則1年以内)の融資。手形の期日が到来した場合にも、通常は手形が書き換えられるが、会社の財務状況が悪いと、銀行が書き換えを拒否する場合もある。
当座貸越  会社が所有する不動産などを担保にして行われる融資で、随時借入・随時返済が可能。
商業手形割引

 商業手形を銀行に買い取ってもらって資金調達するやり方で、厳密な意味での融資ではない。手形が不渡りになったら、買戻さなければならない。

返済期限が1年以内の短期借入金や、2年以上の長期借入金のうち1年以内に返済期日の訪れるものは、BS・流動負債の部に計上します。証書借入など返済期間の長い融資や、社債は固定負債に計上します。 受取手形は、裏書手形や割引手形を控除した後の金額で表示します。割引手形と裏書手形の情報は、決算書の「注記」によって開示します。

6 減価償却資産の償却費を計上する

①減価償却資産とは 会社が購入した設備や車両など金額の大きなものは、購入した初年度だけ使うわけではありません。5年、10年と長期にわたって使用し、売上に貢献し続けることを期待して、多額の投資をしているはずです。そこで20万円以上の大きな買い物は、購入時にいったん資産として、BSに計上します。

これらの資産は、時か経過するとその価値が減少して処分されるものと、時がたっても価値が減少しないものとにわけて考えます。 時の経過に伴って価値が減少する資産は、売上に貢献していると認められる期間で按分して、少しずつ費用に計上していきます。このように、資産を一定の期間で按分して費用化するステップを、「減価償却」といいます。

1)時が経過しても価値が減少しない資産。                                 土地や借地権、有価証券、敷金や保証金、絵画、ゴルフ会員権や預託金、漫画やアニメなどの著作権など。

2)時の経過に伴って価値が減少する資産。 建物、給排水設備や冷暖房設備などの建物付属設備、看板や広告塔などの構築物、機械装置、乗用車やバンなどの車両、工具、事務机・応接セット・エアコン・冷蔵庫など電化製品・パソコン・電話設備・FAXなどの器具備品、商標権や特許権など工業所有権、ソフトウエアや営業権、高機能を備えているHP制作費用など無形固定資産。

②減価償却費を計算する 減価償却の方法には、定率法・定額法・生産高比例法・取替法などがありますが、通常使われるのが定率法と定額法です。

定率法とは、毎年一定の割合で償却額が逓減するように、一定の償却率を期首の帳簿価額にかけて、償却費を計算する方法です。

定額法は、耐用年数に応じて毎年、一定額を償却していく方法です。定額法の償却費は、取得価額に償却率をかけて計算します。

  定額法の計算方
  取得価額×償却率(1/耐用年数)
  定率法の計算方
  期首の未償却残高×償却率

耐用年数は、資産の種類や構造、用途ごとに細かく定められています。「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」をみて、償却したい資産にもっとも近いものを探し、耐用年数を決めます。

減価償却資産の方法を決定したり、変更したりする場合には、新しい償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、所轄の税務署に償却方法の変更の承認申請書を提出して承認を受けなければなりません。 届出がないときは、法人税法上、定率法が適用されることとなっています。

7 発生主義に基づき費用・収益の調整を行う

決算では、すべての収入と費用を、「発生」のタイミングで認識します。これを「発生主義の原則」といいます。しかし、水道光熱費や電話代など、期中に発生する全ての取引を発生主義で仕訳するのは、さすがに大変です。そこで、毎月の損益を把握するうえで、重要性の低いものについては、期中は現預金の入出金時に仕訳を行い、決算で発生主義に直すことも可能です。

期中は現金主義で仕訳したものを、発生主義に基づいて費用・収益調整するときは、次の4つの科目をつかいます。これらを「経過勘定項目」といいます。

未収収益 すでに収益が発生しているが、まだ入金されていないもの
前受収益 まだ収益が発生していないが、すでに入金されているもの
未払費用 すでに費用が発生しているが、まだ支払っていないもの
前払費用 まだ費用が発生していないが、すでに支払い済みのもの

ところで、経過勘定項目と似た名前の科目に次のようなものがあります。決算整理仕訳を行うさい、経過勘定科目と下記の科目を混同しないように気をつけましょうただし、前払費用のうち、家賃のように支払った日から1年以内に役務の提供を受けるもの (短期前払費用) については、継続的な処理を条件に、支払った年の費用計上することが出来ます。

   未収収益    未収金
   前受収益    前受金
   未払費用    未払金
   前払費用    前払金

 

8 有価証券の期末残高を確認する

有価証券などの資産は、原則として取得時の金額でBSに計上しますが、金融商品については、時価で評価することとされています。金融資産と金融負債を期末の時価で評価しなおし、財務諸表に反映させることを時価会計といいます。

金融資産とは、株式や公社債などの有価証券、受取手形、売掛金や、貸付金などの金銭債権をいいます。また金融負債とは、支払手形、買掛金や、社債などの金銭債務をいいます。ここでは、とくに有価証券についてみていきましょう。

▼有価証券は、その保有目的に応じて、次のように分類されます。

  • A 売買目的有価証券
  • B 満期保有目的の債券
  • C 子会社株式および関連会社株式
  • D その他の有価証券

時価会計は、AとDに適用されます(市場価格のある場合)。これらの有価証券を取得したら、まず取得価額でBSに計上しますが、決算時には、時価に修正します。BとCについては、市場価格に変動があっても、BSの帳簿価額は取得価額のままです。

時価が取得価額を上回った場合には評価益が、反対に時価が取得価額以下だった場合には、評価損が発生します。

ところで、AとDでは、この評価損益の表示場所が異なります。「売買目的有価証券」は、評価差額が、PLの営業外収益(費用)に計上され、その分だけ利益が変動します。一方「その他の有価証券」は、売却して利益を出すことを目的としているわけではないので、評価差額を損益には反映させず、BSの純資産の部に計上します。

9 繰延資産を計上し、償却費を計算する

繰延資産とは、サービスの提供を受けて、その代価を支払ったにもかかわらず、支払額の全額を費用に計上せず、固定資産などを購入したときと同じように貸借対照表に計上する資産のことをいいます。減価償却と同じように、支出の効果が長期にわたるため、当初の支出を効果の及ぶ期間に按分して費用化します。

繰延資産には、「会社法上の繰延資産」と、「税法上の繰延資産」があり、勘定科目や扱いが異なります。

① 会社法上の繰延資産

繰延資産は換金価値がなく、また将来の収益の獲得には不確実性が伴うため、原則として資産計上は認められていません。ただし「繰延資産の会計処理に関する当面の取り扱い」により、次の5種類に限って計上ができます。

 創立費  開業費  開発費  株式交付費  社債発行費

これら会社法上の繰延資産は、貸借対照表に繰延資産の部を設定し、それぞれの科目で表示します。

繰延資産は、創立費・開業費・開発費は5年内、株式交付費は3年内、社債発行費はその社債の償還期限内で償却することとなっています。しかし、法人税上、期首の帳簿価額を限度額として、任意に償却することもできます。

また繰延資産には換金性がないため、その資産の支出の効果が期待されなくなったら、一時に償却します。

②税法固有の繰延資産

主な税法固有の繰延資産には、次のようなものがあります。税法固有の繰延資産は、会社法の繰延資産と異なり、「長期前払費用」などの科目をつかって、「その他投資」の部に表示します。

     繰延資産の種類(例)  支出の効果がおよぶ期間

 自己が便益を受ける共同的施設の

 設置等のために支出する費用。

      5年

  (または耐用年数)

 事業用の建物を賃借するために

 支出する通常の権利金。

      5年

  (または賃借期間)

 ノウハウの設定契約において

 支出する一時金。

     5年

 ソフトウエアの開発費用。

     5年

 同業者団体等の加入金。

     5年

 

税法固有の繰延資産は、その支出の効果がおよぶ期間で按分して費用に計上します。支出の効果が及ぶ期間は、法人税法で、繰延資産の種類ごとに細かく定められています。

ただし、支払った金額が20万円未満の少額な繰延資産は、その全額を、損金経理により一度に費用として計上することができます。

公共的施設の負担金など、金額が大きな繰延資産は分割で払うときがあります。払うべき総額が確定していても、まだ払っていない部分を含めて資産に計上し、償却することはできません。

10 各種引当金を設定する

引当金とは、将来において確実に発生すると見込まれる費用または損失のうち、その発生原因が当期以前にあり、また金額を合理的に予測出来ることを条件に、見積計上された負債のことをいいます。

引当金は、費用収益対応の原則という視点から、費用として計上することが望ましいものですが、税法では限定的にしか認めていません。引当金は未払費用とちがい、債務が確定していないからです。

引当金のうち主なものに、貸倒引当金・賞与引当金・退職給与引当金があります。このうち、税法が費用として認めているのは、貸倒引当金だけです。

賞 与 引 当 金

翌期に支給する見込みの従業員への賞与のうち、その支給対象期間が当期に対応する部分の金額を見積もって負債として計上したもの。

退職給付引当金

退職時に見込まれる退職給与の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を負債として計上したもの。

退職給与は、本来退職という事実により債務が確定するものだが、採用時から支給されることが決まっている不確定債務としての要素を持っているから。

貸 倒 引 当 金

売掛金や貸付金などの金銭債権のうち、翌期以降に発生すると見込まれる回収不能分を費用化し、対象となった資産の控除科目として計上するもの。

①貸倒引当金計算方法 それでは、引当金として最も一般的な、貸倒引当金の計算方法を詳しくみていきましょう。 貸倒引当金は、一括評価による繰入限度額と、個別評価による繰入限度額にわけて計算します。

【一括評価による繰入限度額】 一括評価による繰入限度額は、その法人の過去3年間における貸倒れ損失の発生額に基づいて計算した貸倒実績率に、期末の一般債権等の帳簿価額の合計額を掛けて計算します。 ただし、資本金1億円以下の中小企業は、業種ごとに定められた法定繰入率により、簡単に繰入限度額を計算できます。

卸・小売業 10/1000
製造業 8/1000
金融保険業 3/1000
割賦利小売業 13/1000
その他 6/1000

 

【個別評価による繰入限度額】

長期棚上げ債権

会社更生法などの事実により、弁済猶予または分割弁済されることとなった金銭債権のうち、5年以内に弁済されない部分の金額。

事実上の回収不能債権

債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通がないこと、または天災事故や経済事情などで多大の損失を被ったことなどの理由により、金銭債権の一部が回収不能となった場合の金額。

形式上の回収不能額

会社更生法による再生手続開始の申立てなどの事実が生じた金銭債権の50%相当額。

外国の回収不能公的債権

外国の政府などに対する金銭債権で、長期にわたる債務不履行により経済的価値が著しく減少し、かつ弁済が著しく困難とおもわれる金銭債権の50%相当額。

 

11. 未払法人税等を計算する

会社は営業活動の中で、実にさまざまな税金を支払います。主なものに、法人税や法人事業税・法人住民税はもちろんのこと、消費税や固定資産税、印紙税、自動車税、事業所税、源泉所得税などがあります。

会社が払う税金は、種類に応じて、次のように異なった3つの会計処理を行います。

  • ①会社の所得に応じて課税される税金
  • ②会社の費用となる税金
  • ③会社が預かった税金

決算では、①の税金を計算することになります。具体的には法人税、法人住民税、法人事業税が該当し、PLの税引前当期純利益の下に、「法人税等」としてまとめて表示します。

一方、法人税、法人住民税、法人事業税翌期になってから支払いますので、未払法人税等として、BSの流動負債に計上します。

会社の所得に応じて支払う税金のうち、法人税は国に対して支払う国税、法人事業税と法人住民税は、会社の事業所が存在する地方自治体に対して支払います。たとえば、東京に本社があり、横浜に営業所があるという場合、法人税は東京の税務署に、法人事業税と法人住民税は、東京都と神奈川県、さらに横浜市にも支払うことになります。

法人税等は、次の算式によって計算することもできます。

 税引前当期利益 × 実行税率 = 法人税等

実効税率とは、法人税や法人事業税の理論上の税率を用いて、おおよその税額の計算するための、目安となる理論上の税率のことです。

実効税率は、下記の式で計算できます。

 実効税率={法人税率+(法人税率×住民税率)+事業税率}÷(1+事業税率)

会社の費用となる税金には、固定資産税、印紙税、自動車税、事業所税などがあり、これらは販売費および一般管理費のなかで、「租税公課」として処理されます。会社が預かる税金には、消費税や源泉所得税などが該当します。これらの税金は、会社が預かるだけで、損益には影響しないものなので、BSの流動負債の部で「預り金」などの項目で表示されます。

 

12.税効果会計を計算する

決算書は、中小企業会計基準など、一般に公正妥当な会計基準に基づいて作成されます。一方で税金は、法人税法や地方税法というまったく別の法律に基づいて計算しなければなりません。そこで、会計基準では費用として認められるけれども、法人税法では費用としては認められない、というものがでてきます。そのため、通常PLの税引前当期純利益と、法人税の課税所得が一致することはありません。

 会計上の利益 = 収益 - 費用

 課税所得   = 益金 - 損金

法人税法の目的は、適切な課税所得を計算することです。法人税法では、益金・損金ということばをつかって、会計上の概念である収益・費用とは区別して使っています。

法人税の課税所得をするには、会社が計算した決算書上の「所得」に、法人税法特有の調整をすることになります。

会社が費用として計上したけれど、法人税法上損金として認められないものや、反対に会社が収益として計上しなかったけれど、法人税法上益金に算入しなければならないものをプラスしなければなりません。

反対に、会社は収益として計上したけれど、法人税法上益金として認識しないものや、損益計算書上の費用ではないけれど、法人税法上は損金として認識されるものをマイナスします。

すると、会計上の所得に対する税金と、法人税法上の課税所得に対する税金の額が、ちがってくることになります。税効果とは『企業会計』と『税務会計』のズレを調整し、税金という費用を適切に期間配分する決算処理のことをいいます。

 

 

【税効果計算の具体例】

具体的に、賞与引当金を例にとって考えてみましょう。

① 賞与引当金 当社は3月決算です。賞与は年2回、7月と12月に支給します。7月の賞与の算定期間は、12月から5月、12月の賞与の算定期間は、6月から11月です。PLで正しく期間損益を計算するために、12月から3月までの期間に対応する賞与を見込みで費用計上します。これが賞与引当金です。

② 賞与引当金繰入額 会社は従業員に対して、7月に30万円を支給する予定です。これを月でわ ると、12月から3月に対応する賞与分は、30万円÷4/6月=20万円となりま すから、この20万円を賞与引当金繰入額として当期の費用に計上します。

③ 法人税の課税所得 会計上の税引前当期純利益は100万円だとします。 会計上では、費用収益対応の原則から賞与引当金繰入額20万円を計上します。 一方、法人税では費用としては認められないので、PLの税引前当期純利益に20万円を足します。結果、法人税の課税所得は120万円になります。

④ 法人税等の金額 法人税の実効税率を40%とすると、法人税等の金額は、 120万円 × 0.4 = 48万円 になります。

⑤ 法人税等調整額 税引前当期純利益100万円に対して、48万円の法人税等が計上されました。これはPLに計上されている賞与引当金繰入額を、法人税が無視した結果です。そこで会計の世界でも、賞与引当金を加味した税金の額がわかるように表示します。これが、「法人税等調整額」です。

 

⑥ 具体的な計算例

  • 1 税引前当期純利益              100万円
  • 2 法人税の課税所得              120万円
  • 3 法人税で認められなかった分 賞与引当金  20万円

 

会計の世界では、法人税で否認された20万円に実行税率の40%をかけた、「法人税等調整額」8万円)を、「法人税等」の48万円から控除することで、会計上の利益である「税引前当期純利益」100万円に対応する税額40万円を明らかにします。

⑦ 税効果会計 法人税で否認された費用に対する税金を別途計算して、「法人税等」からマイナスして、会計上の「税引前当期純利益」に対応する法人税等が、本当はいくらなのかを表示することを、税効果会計といいます。 別途計算した税金の調整額を、「法人税等調整額」といいます。

⑧ 繰延税金資産 今期は費用として認められなかった賞与引当金20万円ですが、翌期には支給されることが確実です。この20万円は、会計上、今期に計上を済ませていますから、翌期のPLには費用として登場しません。 しかし税務上は、翌期に費用として認識しなければならないものです。 そこで、PLの法人税等調整額に対応する金額8万円を、BSに「繰延税金資産」として計上します。8万円は、翌期に税金が安くなる権利のようなものです。

 

《 決算のためのチェックポイント 》

  • 売掛金の残高照合を依頼する取引先を選別して、発送の準備をしたか。
  • 売掛債権の中に、相手先への請求もれはないか。
  • 売掛債権の中に、相殺項目(振込手数料など)で処理すべきものはないか。
  • 売掛債権の中に、長期間にわたって入金されていないものがないか。
  • 決算後、2ヶ月分の通帳や納品書、請求書の控えを用意したか(売掛金)。
  • 仮払金になかに、長期間にわたって精算されていないものや不明なものはないか。
  • 貸付金は、約定どおりに返済されているか。
  • 立替金や未収金の中に、請求もれはないか。
  • 立替金や未収金の中に、長期間にわたって入金されていないものや不明なものはないか。
  • 有価証券や投資勘定に計上されている資産項目の証券類を確認したか。
  • 買掛金や未払金の中に、相殺項目(振込手数料など)で処理すべきものはないか。
  • 買掛金や未払金の中に、長期間にわたって支払っていないものや不明なものはないか。
  • 決算後2カ月分の、請求書や納品書を用意したか(買掛金)。
  • 仮受金の中に不明なものはないか。
  • 預貯金や有価証券、保険積立金、借入金の残高証明書の発行を依頼したか。
  • 現金実査や実地棚卸の日程を調整したか。
  • 固定資産の現物確認の日程を調整したか。

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