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2014年12月07日(日)

上場する企業とできない企業では「会計」が違う!監査の視点からまとめてみた

経営ハッカー編集部
上場する企業とできない企業では「会計」が違う!監査の視点からまとめてみた

上場企業と未上場企業の違いは事業規模だけではない!

上場 株式を公開して晴れて上場企業になれば、比較的容易に人材や資金を集めることができ、事業の拡大に拍車をかけられます。でもいざ上場するとなると「どこが違うんだ?」という疑問がわいてくると思います。一見すると「事業規模が違う」と言えそうですが、それだけではありません。上場企業になるためには【会計】を変えていく必要もあるのです。

[目次] ■1)形式基準と実質基準? ■2)会計監査のための準備 ■3)会計監査で引っかかりやすいポイント10

■1)形式基準と実質基準?

上場企業になるためには各証券取引所が定める「形質基準」と「実質基準」の2つをクリアする必要があります。

形式基準は「数字の問題」。最低限これだけの数字は持っていてくださいよ、という基準です。個々の数字は証券取引所によって異なりますが、主なものは以下の通りです。

・時価総額基準 【上場時の株価×上場時の発行済株式総数=時価総額】ですが、上場のためにこの金額に基準を設けたのが時価総額基準です。東証1部の500億円が国内最大で、最も低額なのはジャスダックとマザーズの10億円です。東証1部の場合は年間の売り上げが100億円を超えていれば、利益が赤字でも上場できるという条件もあります。

・利益額 東証マザーズでは利益額は基準にはなりませんが、例えば東証1部と2部では上場初年の利益を最低1億円、最近の1年で4億円の基準を設けています。大証ヘラクレスでは上場時の純資産額が4億円以上か時価総額が50億円を超えていれば上場できます。

・上場株式数と株主数 これを定めているのは株価の安定と適正化を図るためです。株式数や株主数が少ないと、少しの買い注文や売り注文で株価が乱高下を繰り返すという事態になります。一定の数が確保されていれば市場の原理が安定させてくれるのです。

以上が形式基準です。次に見るのは実質基準。投資家保護のために設定されており、主に事業の継続性を見るものが多くなっています。

・企業の継続性と収益性 仕入れや生産、そして販売までの一連の流れを、各取引先との関係性も加味しながら検討することで、企業の事業が継続性があるかを見ます。また事業計画の精査、業界の動向やそれまでの事業展開から、上場後も安定して収益を高めているかを見るのが収益性です。

・企業経営の健全性 各株主との関係が、不必要に密接なものになっていないか、役員が同族ばかりで占められていたり、兼任が目立って、経営に支障が出ないかなどを確認します。

・企業内容の開示適正 上場すると企業内容の開示義務が発生します。有価証券報告書の作成、証券取引所が定める固有の決算情報の開示など、その分量はかなりのものです。それをきっちりと毎年処理する能力やシステムが整っているかを確認します。

・その他証券取引所の定める事項

以上が実質基準です。なかなか大変そうですね。 以下ではこれらの条件のうち、実質基準の要となる「会計監査」について紹介しておきます。

■2)会計監査のための準備

会計監査のための準備をするには専門家(監査法人)に依頼するのが一般的です。会社外部の専門家にみてもらうことで公正性を維持するわけです。また会計には専門的な知識が必要ですので、その相談役としての意味合いもあります。

・予備調査、短期調査 まず行うのが、現状の会計上の問題点の列挙です。例えば内部情報の管理体制であったり、会計の管理体制の整備などが挙げられます。場合によっては資本のやりくりの対策を立てる必要もあります。

・財務諸表監査 監査を受ける際には監査法人と契約をし、監査証明を受けなければいけません。これは財務諸表監査も同様です。

・内部統制報告制度への対応 内部統制とは「会社内部で取り決められたルール」です。これがきちんと機能しているのかどうかも監査の対象になります。まずは経営者自身でその状況を評価し、その評価を監査法人が監査するという手順です。これをクリアするためには内部統制の構築から、評価・監査をするための文書化など非常に手間と時間がかかります。

・上場企業としての開示制度対応 内部統制の監査が終わると、次は上場後の情報開示に対応するための仕組み作りに入ります。有価証券報告書、内部統制報告書、四半期報告書に加え、会社法に基づいた開示情報も準備しなくてはなりません。

簡単に上場までの準備について書きましたが、実際に行うとなると途中で挫折する企業も多いほど煩雑で膨大です。しかしこれらの処理がうまくできていなければ上場できても維持ができません。統制がとれており、効率的な処理ができてこその上場企業なのです。

■3)会計監査で引っかかりやすいポイント10

ここでは会計監査で引っかかりやすいポイントをまとめて箇条書きにしておきます。すでに上場を目指して動き始めている人にはわかりきったことかもしれませんが、これから上場の準備をしようと考えている人は、簡単なセルフチェックとして確認してみてください。

1.会計処理の根拠が検証不可能。

2.会計処理の根拠となる書類が揃っていない。

3.勘定科目内訳に不明の残高がある。

4.発生主義による会計処理に必要な情報が不足している。

5.実地棚卸が不十分。

6.在庫の受払記録の不備がある。

7.固定資産の管理体制に不備がある。

8.原価計算をするシステムが整っていない。

9.関係会社の整理ができていない。

10.子会社との連結決算をするシステムができていない。

■会計とは会社の鏡である

どうしてここまでの監査が必要なのかというと、「数字をまともに管理できない企業に未来はない」という観点からです。厳しい言い方ですが、数字をきちんと管理していれば必ずいいことがあるという意味にもなります。もちろん会計の徹底だけで事業が上向きになるわけではありません。しかし、上場するためだけに会計監査の基準に合わせるのではもったいない。企業の現状を把握するために内部統制などの整備を行えば、事業の改善への突破口が開けるかもしれません。

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