【伝票を知ることは取引実務の第一歩】初心者の為の会計伝票留意点。
初心者のみならず、今一度おさらいしたい会計伝票の基本。
電子会計がすでに定着している昨今ですが、会計に限らず、そういったツールはもともとのアナログな道具(ここでは書式)を基に構築されています。会計ソフトを使うにしても、ソフトは計算はしてくれますが入力や仕訳はしてはくれません。記入(入力)する貴方がそれを間違えると、全てが違ってしまうことになります。
しかし、会計の基本法則は至ってシンプル。その法則を理解すれば怖くはないのです。何事も入口が肝心。アナログで一度会計伝票の基本を身につけてみてはいかがでしょうか。
<目次> ■1)会計伝票ってどんなもの?【会計伝票の種類】 ■2)現金が左と右の指定席【入金伝票と出金伝票】 ■3)買掛・売掛の大切なアイティム【仕入伝票と売上伝票】 ■4)左右が同額【振替伝票】 ■5)最低限あるべき情報【2W2H】 ■6)会計伝票【まとめ】
■1)会計伝票ってどんなもの?【会計伝票の種類】
一般的な会計には
・1伝票制-------「仕訳伝票(仕訳帳)」のみ使用する ・3伝票制-------「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」を使用する ・5伝票制-------3伝票制に加え「仕入伝票」「売上伝票」を使用する
といった伝票制というものがあります。
基本的には仕訳伝票(仕訳帳)さえあれば、全てを兼ねる事ができます。 しかし、仕訳帳ひとつで元帳へ転記している会社はあまりなく、
A:現金の増減を起票する「入金伝票」「出金伝票」 B:「仕入」と「売上」の増加を起票する「仕入伝票」「売上伝票」 C:それ以外の取引を起票する「振替伝票」
AとCを使用した3伝票制・ABCを使用した5伝票制を採用している会社が殆どです。
その他にも会社の業態や方針によって、独自の伝票や帳簿の種類は沢山存在します。会社の規模が大きく分担する項目が多ければ、取引内容が決まっている情報を繰り返し記入しなくて済む伝票制を採用し、分担する担当ごとの伝票や帳簿が増えるのです。しかし、基本法則は皆同じ。そこさえ押さえれば、あとは応用です。
今回は5伝票制で使われている基本の「入金伝票」「出金伝票」「仕入伝票」「売上伝票」「振替伝票」についてお話ししたいと思います。
■2)現金が左と右の指定席【入金伝票と出金伝票】
入金伝票は文字通りお金が入ったときに作成します。
通常、商品や製品を販売したりサービスを提供したりした対価(売上)が入った時のような、いわゆる資産が増えた場合の入金はもちろんですが、お客様から予約の前受金で現金を預かった、というような資産としては増えていなくとも、現金が入った全ての場合に起票します。
入金伝票には、日付、入金先、金額、相手勘定科目、摘要等を記入します。 入金伝票を仕訳伝票に起こし直すと、「現金」が借方(左)であることが決まっています。
一方出金伝票はその逆で、現金が減った全ての場合に起票し、日付、出金先、金額、相手勘定科目、摘要等を記入します。 出金伝票を仕訳伝票に起こし直すと、「現金」が貸方(右)であることが決まっています。
■3)買掛・売掛の大切なアイティム【仕入伝票と売上伝票】
仕入伝票と売上伝票は、買掛・売掛を行っている会社にとって必要な伝票です。
例えば売上が全て現金の場合、入金伝票に起票すれば事足ります。 しかし頻繁に取引があり、掛けが合理的でその取り決めがある場合、おおよそは翌月以降に決済がなされます。そういった場合に振替伝票を使わずに一旦、買掛金や売掛金に振替えるための伝票が仕入伝票と売上伝票です。 *仕入伝票・売上伝票の相手勘定科目が「買掛」・「売掛」固定の場合です。
仕入伝票には、日付、仕入先(仕入内容)、金額、摘要等を記入します。勘定科目は「買掛金」が固定の場合は、記入の必要はありません。
その場合、仕入伝票を仕訳伝票に起こし直すと、借方(左)が「仕入」・貸方(右)が「買掛金」であることが決まっています。
売上伝票には、日付、売上先(売上内容)、金額、摘要等を記入します。勘定科目は「売掛金」が固定の場合は、記入の必要はありません。
売上伝票を仕訳伝票に起こし直すと、借方(左)が「売掛金」・貸方(右)が「売上」であることが決まっています。
■4)左右が同額【振替伝票】
振替伝票は、上記以外の取引(現金収支を伴わない取引)があった時に起票します。3伝票制での掛けの取引き等に使われますので、お話ししてきた売買の流れでご説明します。
例えば先月の買掛金を預金から10,000円で支払い振込手数料が540円かかった場合、借方(左)に「買掛金」・金額「10,000」と「手数料」・金額「540」を二段で記入貸方(右)には「預金(現金でも可)」・金額「10,540」と記入下段にそれぞれの合計値10,540円を記入します。 *消費税処理は除いています。
振替伝票の左右の金額は、合計値が同じでなければいけません。その他には、日付、摘要等を記入します。振替伝票は、書式の仕様にもよりますが仕訳伝票(仕訳帳)とほぼ同じ構成です。
■5)最低限あるべき情報【2W2H】
5つの伝票についてお話ししましたが、仕訳伝票(仕訳帳)に起こした時に共通して最低限書きこむべき内容をまとめてみますと、以下の2W2Hが必要になります。
・いつ(When)-------------日付 ・なにを(What)-----------入金伝票の場合は「現金」・仕入伝票の場合は「仕入」等 ・いくら(How much)-----金額 ・どうした(How)----------入金伝票の場合は相手科目により「入金された」・仕入伝票の場合は「買掛にて仕入れた」等
あらかじめ決まっている情報に特化して作られている伝票を使用することによって、間違いを最小限にすることができます。 会社によっては、担当者サインor印の欄や、上司の確認の欄を使用しますが、元帳転記はこの4つがあれば完成します。
■6)会計伝票【まとめ】
私としては、伝票の基本法則は皆同じで、言ってみれば仕訳帳を理解していればすべてを置き換える事ができると考えています。そしてその仕訳帳の構成はほぼ、振替伝票と同じです。
大がかりな1年分の決算も、これらの小さな伝票で構成されています。その基本のルールを、身近で安く手に入る伝票でイメージトレーニングしてみたらいかがでしょうか。全てが見えてくるかもしれません。今回は仕訳でのルールをある程度理解している前提でお話ししました。また、各伝票の複雑な仕訳の書き方のお話はまたいずれ。