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2014年12月15日(月)

平成27年1月からの相続税増税|相続税増税が事業継承にもたらす影響と知っておくことまとめ

経営ハッカー編集部
平成27年1月からの相続税増税|相続税増税が事業継承にもたらす影響と知っておくことまとめ

平成27年1月からの相続増税!その影響はいかに

承継 平成27年の1月を境に相続税の増税が決まっています。そこで問題となるのが「事業継承」との関係。企業規模が大きければ大きいほど、相続に関する悩みも大きくなります。でもやみくもに悩んでいても始まりません。まずはこの相続増税と事業継承の関係について知っておきましょう!

[目次] ■1)平成27年度からの相続税増税の概要 ■2)事業継承と相続税の関係 ■3)増税後の賢い事業継承の仕方 ■まとめ|事業継承の鉄則「遺言」

■1)平成27年度からの相続税増税の概要

こちらの一覧が現行の相続税の税率と増税後の税率の速算表です。

相続税の計算は、この速算表と基礎控除の計算によって行います。ただしこの基礎控除に関しても、今回の増税で金額が全く変わってきます。

これまでの基礎控除は【5000万円+1000万円×法定相続人の数】という計算式で求められてきました。

この場合、財産の評価額が2億円、法定相続人が4人であったとすると(妻、子供3人)、 基礎控除額は【5000万円+1000万円×4=9000万円】です。 この時点で課税対象額は1億1000万円までに下がります。

他にも控除はたくさんあるでしょうが、この数字を単純に速算表に当てはめると 相続税は【(1億1000万円-1700万円)×40%=3720万円】となります。

しかし平成27年になると、この基礎控除の計算方法が【3000万円+600万円×法定相続人の数】に変わります。

これを先程の例に当てはめると 基礎控除額は【3000万円+600万円×4=5400万円】となり、 相続税は【(1億4600万円-1700万円)×40%=5160万円】となる。

1440万円の増額です。

この例ですと、税率のボーダーラインには重なっていないのでまだ差額はそれほどありませんが、重なった場合はもっと大きな増税になります。これが単純に個人の資産であった場合も手痛い課税ではありますが、企業を支える人が相続をする場合、事態はもっと深刻になります。

■2)事業継承と相続税の関係

相続税が課される財産を相続財産と言います。相続財産とは土地、建物、株式などの有価証券、預貯金、現金など、亡くなる人間が亡くなった時点で持っている金銭に交換可能なものすべてを指します。

この他にも「みなし相続財産」と言って、相続人の死亡に伴って取得できると思われる生命保険金や退職金なども相続財産になりますし、相続開始から3年以内に贈与された財産も課税対象です。またあらかじめ贈与税を納めておいて、その分を相続税額から控除できる「相続時精算課税制度」を利用していればその財産も課税対象になります。

事業継承の場合、大きな問題となるのは土地、建物、有価証券でしょう。 土地の評価額は主に「路線価方式」によって決められます。全国の土地に国が定めた路線価というものがあり、それに応じて計算する方法です。都市部になるほど、また交通の便がいいほど高くなる傾向にあります。

この路線価が定められていない土地の場合は「倍率方式」によって計算がされます。これは土地の固定資産税評価額に対して一定の倍率をかけて計算するものです。農地など「広くないと意味がない」土地に対しては評価額が低くなるように設定されています。 建物の評価額は原則固定資産税評価額がそのまま相続財産の評価額となります。

有価証券の場合は相続開始があった下記の4つのうち、最も低いものを評価額とします。 ・【その日の終値】 ・【月の毎日の終値の月平均】 ・【月の前月の毎日の終値の月平均】 ・【月の前々月の毎日の終値の月平均】

これらの相続財産に対して1で見た税率が掛けられるので、今回の増税は事業継承に大きく関わってきます。

■3)増税後の賢い事業継承の仕方

税制改正に関してはもう決まったことですからどうしようもありません。となると問題になるのは、与えられたルールの中でどれだけ賢くやるか、です。賢い事業継承をするには様々な方法がありますが、ここでは2つの方法を紹介しておきましょう。

1つ目【生命保険】

生命保険によって得られるお金は、前述のとおり「みなし相続財産」とされ、課税対象となります。しかし、これには優遇措置が用意されていて、【500万円×法定相続人の数】の金額に関しては控除を受けることができます。

1で示した例であれば2000万円の控除が受けられるので、課税対象額の低減にもつながります。しかし生命保険による事業継承の対策の目的はこれだけではありません。

例えば所有財産の大半が土地や建物のような不動産であった場合は、納税のための現金が用意できません。もしそのような相続をしてしまった時に残されている選択肢は、財産を売却してそのお金で納税するというものですが、それでは事業の継続はできませんよね。これは自社株の場合も同じで、現金が用意できなければそれを売却するしかない。

株式を売るということは、会社を手放すということと同じです。これでは「事業継承」にはなりません。そこで生命保険です。相続人の死亡によって入った生命保険金を納税のための現金に充てるのです。多少の減税対策にもなり、納税対策にもなるのが生命保険なのです。

2つ目【自社株低減対策】

相続財産に自社株が含まれる場合は前述の相続開始があった以下の4つのうち、最も低いものを評価額として課税対象額が計算されます。

・【その日の終値】 ・【月の毎日の終値の月平均】 ・【月の前月の毎日の終値の月平均】 ・【月の前々月の毎日の終値の月平均】

この評価額をできるだけ低減できれば、その分相続税を減らすことができるのです。これを実現する方法の一つとして【多額の退職金による純資産の低減】があります。相続人の勇退時に多額の退職金を支払うことで、純資産が目減りし、それに伴って自社株の市場価格が下がり、そしてそれが相続時の評価額の低減につながる、という仕組みです。

この他にも債務は控除対象になりますので、相続時に大きな設備投資をしてしまうというのも一つの手でしょう。予定にあるものを購入すれば無駄にはなりません。ただし重要なのはその投資によって節税できる額と、その投資が生み出す利益をしっかりと天秤にかけること。「とりあえず投資しとこう」では逆効果になりかねません。

■まとめ|事業継承の鉄則「遺言」

相続税が増税されると1で見たように大きな税額の違いが生まれます。

3で見たようにしっかりと対策をしておかなければ、最悪事業を継続できなくなる事態も考えられます。目の前の事業を回すのももちろん重要ですが、万が一の事態が起きても遺族が迅速に対応できるよう、日ごろから準備しておく必要があるのです。

その際に要になるのが「遺言」です。これを準備しておけば、遺族が相続でもめることもなく、スムーズに事業継承も終えられるでしょう。ビジネスの基本は準備。これは事業継承においても変わりません。

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