決算賞与で節税しても良い?悪い?支給要件に関する総まとめ
間違った節税対策は、会社の資金繰りを悪くする?
決算賞与という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。決算賞与は、決算までに賞与を出すことを決定し、賞与として利益を放出して損金として計上する節税方法のことです。
決算を直前にして予想以上に利益が出てしまった場合などに、節税対策として使われてきました。ところが、決算賞与にも注意すべきポイントがいくつかあるのです。ここでは、決算賞与による節税対策が良いのか悪いのか、支給要件を見ながらご紹介したいと思います。
[目次] ■1)決算賞与と支給される理由 ■2)決算賞与を未払計上する支給要件 ■3)決算賞与で節税は良い?悪い? ■決算賞与で節税対策のまとめ
■1)決算賞与と支給される理由
決算賞与の支給要件について考える前に、決算賞与とは何かについて見ておきましょう。決算賞与とは、年2回のボーナスとは別に、決算時の業績が良かった場合に、その利益を従業員に還元することです。一般的な賞与とは異なり、必ずしも毎年支給されるというわけではありません。決算賞与が支給されるのには、いくつかの理由があります。
決算賞与が支給される一つの理由は、節税対策として活用することができるという点です。決算前に予想以上の利益が出ると、当然ながら会社として支払う所得税などの税金が大きくなります。そのため賞与を損金として計上して税金対策をするために、決算賞与が活用されてきたのです。
決算賞与を支給する別の理由として、従業員のモチベーションアップにつながり、会社も利益を圧縮できるというメリットです。会社の営業成績が良くなり賞与が支給されると、従業員の頑張って働こうという意識を高めることができます。節税対策としてだけではなく、従業員に利益を還元するという意味でも、決算賞与が支給されているのです。
■2)決算賞与を未払計上する支給要件
従業員に対して支給する賞与は、税務上において費用として会計管理することができます。これは決算賞与に関しても当てはまることで、費用として計上することで節税対策として利用されることがあります。とはいえ、会社の資金繰りなどの都合で決算日までに支給できない場合には、一定の支給要件において未払計上することが認められています。決済賞与の支給要件は、以下のような事例があります。
・会社の従業員全員に、賞与の支給日と金額を通知する。賞与の支給に関して具体的に通知することで、決算対策で賞与を出したと思われないようにすることができます。
・会計年度が新しく変わってから、少なくとも1ヶ月以内に賞与を支給する。通常は決済日から1か月以内に銀行振込をする方法で支給することができます。
・損金として賞与給付を告知した時期に決算処理を行うこと。賞与を支給する事業年度内に損金にしなければ、損金として計上する意味がなくなります。
このように一定の条件を満たして支給することで、決算賞与を損金として年度内に会計管理できるようになるのです。では決算賞与による節税対策は効果的なのでしょうか、それとも良くないのでしょうか。次に決算賞与の注意点について見てみましょう。
■3)決算賞与で節税は良い?悪い?
決算賞与を利用して節税対策をすることにはメリットがあるのでしょうか、それとも良くないのでしょうか。決算賞与を支給することにより従業員のモチベーションを上げることができたり、節税対策ができるという点では大きなメリットがあるように思えます。とはいえ決算賞与には注意すべきポイントがいくつかあり、長期的な観点で決算賞与の効果を計算する必要があるのです。
一時的な節税対策として決算賞与を支給してしまい、長期的な計画を立てていないと、従業員は毎年のように賞与を期待するようになり、決算賞与を支給できないと、モチベーションを下げてしまう結果になりかねません。つまり従業員が決算賞与を期待したり、権利だと感じるようになると、会社の経営にとっては大変危険な状態となるのです。
節税対策の面でも、税金の金額と従業員への賞与の金額を十分に計算していないと、税額を減らすことができても支給する金額が大きくなってしまい、最終的に会社の現金を減少させてしまう結果になりかねません。目標利益を超えた場合に、50%を従業員に還元するなどの規定に基づいて支給している会社であれば、決算賞与を利用するメリットは大きくなります。
■決算賞与で節税対策のまとめ
決算賞与を利用した節税対策には、メリットも注意点もあるため、十分に検討をする必要があります。決算賞与により従業員のモチベーションを上げたり、節税対策ができる一方で、翌年度以降のモチベーションを下げてしまったり、会社の資金を減少させてしまうリスクもあります。一時的な税金対策としてではなく、長期的な観点で会社のメリットになる方法を検討して、決算賞与を支給するようにしましょう。