会計報告の仕方と決算報告の仕方の違いは?
それは会計報告なのか、それとも決算報告なのか?
企業や自治会の経理を担当していると、1年に一度その中身を全体に向けて報告しなければならないのが普通です。それは上場企業では特に重要になり、国に対しても、株主に対しても、投資家に対しても報告しなければなりません。しかしこれを会計報告と呼んだり、決算報告と呼んだりと、名前が混同されることもしばしば。ここではその2つの違いを明らかにし、使い分けられるように紹介していきます。
[目次] ■1)会計報告の5W1H ■2)決算報告の5W1H ■3)2つの違いまとめ ■重要度に応じて使い分けよう
■1)会計報告の5W1H
5W1HとはWho(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ)How(どのように)です。 まずは会計報告のWhoを見ていきましょう。会計報告はいわゆる「コミュニティ団体」が行うものです。町内会や自治体、学会などがこれに当たります。他にも企業の中の同好会などが会計報告の主体となるケースも考えられます。
何を報告するのかというと(What)
団体のお金の出入り、つまり収支の内容を報告します。これは原理的には家計簿やお小遣い帳と同じもので、何月何日にいくら収入があって、何月何日にいくら支出があった、というようなことを科目に分けて書いていくのが会計報告書の一般的な様式です。これは簿記の専門用語では「簡易簿記(または単式簿記)」と呼ばれ、個人事業主の確定申告にも用いられるものです。
この報告をいつ行うのかというと(When)
期末に行うのが一般的です。例えば四半期、半期、通期などのパターンが考えられます。タームの具体的な時期(4月、9月、12月、3月など)は団体によって違っていても問題ありません。
会計報告においてWhereはかなり重要
企業のように互いに強い利害関係で結ばれていないので、会計報告は団体の今までとこれからを考えるうえで重要なものなのにも関わらず、報告する場所を考えないとスルーされる危険性が高いのです。ですので、団体の構成員ができるだけ多く集まる場、例えば忘年会の前などに行うのが良いでしょう。
会計報告をする理由は(Why)
自分たちの活動がどのようなところにお金をかけていて、どのようなところにかけていないのか。あるいは資金は潤沢なのか、乏しいのかを理解するために行います。
しかしこれは最後のHowに大きく関わってくることなのですが、活動の目的と資金の用途の一致を確認しておかなければ「どうしてそこにお金をかけたのか」が理解できません。構成員Aが「もっと活動1にお金をかけようよ」と言ったとして、その活動1が団体の活動目的にどれだけ重要なのかを全員が理解していなければ、議論のしようがないのです。町内会を運営しているにもかかわらず、慰安会にもっとお金をかけて、その分地域清掃にかかるお金を削ろうなんて話になれば本末転倒ですよね。
そのためにも報告の仕方(How)はよく考えられなければなりません。押さえておくべきは「活動報告」と一緒に報告するということ。
「○○町内会の活動目的は△△で、今年はこんな活動をしました。活動1はこんな結果となり、活動2はこんな結果でした。」
「では会計報告に移ります。活動1、活動2の会計状況はこんな状態した。」・・・・・・
とこのようにして活動の目的と結果を会計につなげることで、より自分たちの活動への理解が深まるのです。この上でどのような方向修正をしていくかを議論すれば、それは有意義な時間になるでしょう。
■2)決算報告の5W1H
決算報告書のWhoとは企業です。何を報告するのかと言えば(What)、それは会社の財務状況を報告するのですが、企業の場合は家計簿のような簡単な帳簿では不十分です。そこで用いられるのが財務諸表という書類群です。財務諸表とは損益計算書や貸借対照表などが該当します。決算報告書は簿記で言えば「複式簿記」です。
損益計算書は企業がどれだけ儲けているのかを知るもの、貸借対照表はどんなふうに資本が使われているかをはっきりさせるためのものです。この二つはどんな場合にも必要になる代表的な財務諸表です。他にもキャッシュフロー計算書や株主資本等変動計算書などを併せて作成することで、より企業の財務状況を明らかにするのが(Why)決算報告書です。
(When)に関しては会計報告書と同じで、企業それぞれの期末に行うのが一般的です。
(Where)は会計報告書のように身内だけで行うのではなく、もっと広い対象に対して行われます。まずは株主総会。企業の財務状況を把握し、それを今後の経営方針や、株主自身の投資の判断材料とするために、株主が一堂に会する場所で行われます。これはコミュニティ団体の場合とは違い、非常に重要な行事です。そこにいる全員に大きな利害があるため、聴く側も真剣ですし、その内容如何によっては報告する側にも資本金の増減という意味で非常に重要な場面となります。
また決算報告書の場合は株主以外にも融資先の銀行や税務署にも情報として開示します。この場合も決算報告書は融資額や金利、税金の増減、そして会社の信用に大きく関わってくる重要な情報という位置づけです。
どのような報告にするか(How)は決算報告の場合はかなり悩ましい問題です。もし決算の結果が芳しくない場合は、なるべくその事実に株主や金融機関に気づかれない方が好ましい場合もあります。そのため「問題はない」という根拠のための情報を別途付け加えたりする必要がある場合もあるでしょう。しかしもちろんそれをするのが逆効果になる場合もあるので、ケースバイケースで対応するしかありません。
■3)2つの違いまとめ
【図作成:鈴木】
■重要度に応じて使い分けよう
いかがでしたでしょうか。会計報告やら収支報告やら決算報告やらとよく似た名前でこんがらがっていたのが明快になったでしょうか。
Whoの部分で、コミュニティ団体と企業という二者に分けてしまいましたが、つまるところ財務状況の把握がどこまで厳密に必要なのかが重要なのであって、例えば財務状況の把握が企業並みにしっかりとしなければならないコミュニティ団体があるのであれば、それは会計報告ではなく決算報告を行う必要があります。
情報の重要性に応じて臨機応変に使い分けましょう。