パソコンや自動車などの固定資産を保有している事業主は、「固定資産台帳(こていしさんだいちょう)」を作成する必要があります。そもそも固定資産台帳とは何?固定資産台帳はどのように作るの?という疑問にお答えします。
1)固定資産とは?固定資産台帳とは?
固定資産台帳とは、固定資産を保有している事業主が備える必要がある帳簿のことです。
ここでいう「固定資産」とは主に、10万円以上で購入し、長期にわたって事業に使用する資産のことをいいます。例えば、あなたが事業を起ち上げ、事務所で使うパソコンを20万円で購入した場合、そのパソコンは固定資産として会計処理されることが一般的です。固定資産を保有したら、その固定資産の情報を事業活動に活かすため、固定資産台帳の作成が求められます。
2)固定資産台帳の目的
固定資産台帳の目的は大きく3つあります。
・「会計処理目的」
貸借対照表や損益計算書には、「建物」「車両運搬具」「減価償却費」と総額だけ表示され、その内訳までは分かりません。固定資産台帳は、各資産の帳簿計上額や減価償却費、それぞれの数値の算定根拠を見える化し、正しく計算できているかを確認することができます。
・「税務処理目的」
税金計算で使用する減価償却費の根拠となります。税務調査では税金計算の正しさを確認するため、固定資産台帳もチェックの対象となります。
・「資産管理目的」
各資産の情報を集約しておくことで資産を管理するとともに、資産が実際に存在するかを実地確認する際にも使います。固定資産台帳を用いることで、万が一資産が盗難や紛失という憂き目にあっていないかを網羅的に確認することができ、問題の早期発見にも役立ちます。なお少し脱線しますが、資産の実地確認は一年に最低一度は行うことが理想です。
3)固定資産台帳の記載事項
さて固定資産台帳を作りましょう!と言われても、一体何を記載するのでしょうかわからないと思います。
「資産を買った日と、金額と、商品名と…」と思いつくまま羅列してみても、抜け漏れがあってはあとあと面倒ですので、事前にポイントを押さえておきましょう。
記載すべき事項
下記が台帳に記載しておきたい内容です。
1.資産区分(建物・機械・器具備品など)
2.耐用年数(パソコンなら4年、自動車なら6年など。税法に基づく)
3.償却方法(定額法・定率法など)
→これらは、減価償却費計算に大きく影響します。固定資産台帳が計算根拠としての意味を持つのはこれらが記載されているためです。
4.資産名称(「A事務所用パソコン 型式AB-10XY シルバー」など)
→資産の特定に欠かせません。事業が拡大して固定資産が増えた時に備え、「型式は必ず入れる」等の名付けルールがあると、統一感があって固定資産台帳が見やすくなります。
5.設置場所(○○支店1階など)
6.管理部署(営業第2部など)
→資産の実地確認の際に必要です。その際責任を持つ部署を明確にしておくとスムーズです。たいていは資産の使用部署になるでしょう。
7.資産の個数
→同じものを複数個購入した際に記載が必要となります。「以前購入した2つのうち1つを売る」などという場合に、処理の間違いが起きません。また、建物や土地は、面積を入れておくと便利です。これは資産特定のしやすさと、一部売却した際に分かりやすくするためです。
8.取得年月日
→取得年月日を使用開始日として、減価償却費が発生します。会計処理の根拠となるほか、買い替え時期の検討など、資産の管理にも有用です。
9.取得金額・期首簿価・減価償却累計額・期末簿価
10.当期減価償却費・特別償却費金額
→これらの合計が貸借対照表や損益計算書と合うはずです。
11.固定資産管理番号
→資産にテプラなどで管理番号を貼っておくと、管理がしやすくなります。
<台帳の例>
固定資産台帳には法定のフォームがありませんので、用途に合わせて必要な情報を記載していきます。固定資産台帳の更新時期は、固定資産処理の都度が理想です。しかし、更新の手間とコストとメリットを考え、毎月や3か月ごと、遅くとも年度末には一度、更新しましょう。その際、過去のある時点にさかのぼって固定資産台帳が確認できるよう、上書きしないでおくことも大切です。
4)まとめ
いかがでしたでしょうか?会計数値の根拠としても、税務署への対応用としても、社内管理用としても、固定資産台帳はとても重要なものになります。作成ルールを決めたら、さっそく固定資産台帳を準備し、随時更新をしておきましょう。更新の際は、過去にさかのぼって確認できるような配慮をお忘れないようご注意ください。