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2020年03月10日(火)

仮受消費税と仮払消費税を決算処理する2つの経理方式を解説

経営ハッカー編集部
仮受消費税と仮払消費税を決算処理する2つの経理方式を解説

syouhizei

 

課税事業者が法人税・消費税の申告書を作成する場合、税理士に依頼するか独自に行うかのどちらかですが、独自に行うなら正しい手順を知っておく必要があります。
 
そこで今回は、法人の納税額を算出するために必要なことをまとめました。
 

 

消費税の会計処理

課税事業者が消費税の会計処理を行う場合、「税込経理方式」と「税抜経理方式」のどちらで処理するかを選択できます。
 
ただし、免税事業者が選択できるのは税込経理方式のみです。
 

“消費税の納税義務を免除される免税事業者となるためには一定の要件があり、一定期間における課税売上高(注1)、または、給与等支払額(注2)と、法人の場合には資本金の額により判定されます。ほとんどの場合は、前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であれば、免税事業者と判定することができます。”
 
<引用元>経営ハッカー:消費税の納税を免除される「免税事業者」とは?

 

税込経理方式

税込経理方式とは、会計処理を行う際に消費税を含める方式で、消費税が含まれているため収入金額は実際よりも多く記録された状態になります。
 
申告後に確定した消費税は「租税公課」として経費で計上されます。
 

税抜経理方式

税抜経理方式は、受け取った消費税は「仮受消費税」、支払った消費税は「仮払消費税」として会計処理を行います。
 
「仮受消費税」「仮払消費税」という勘定科目を用いるのは、消費税の負担者が事業者ではないからです。
 
消費税は商品やサービスを購入した消費者側が支払うべき税金ですが、消費者が直接消費税を納税することはなく、納税するのは消費税込みの代金を受け取った事業者のほうです。
 
消費税をいったん預かった立場であれば「仮受」の消費税、消費税をいったん預けた立場であれば「仮払」の消費税となるのはこのためです。
 
仮受消費税や仮払消費税という勘定科目で記録しておくことで、消費税の納税者が別にいることを示せるようになります。
 
この場合の収入金額や経費はすべて消費税抜きの金額で会計処理されます。
 
決算時には「仮受消費税から仮払消費税を差し引いた金額」を消費税として納税します。
 

 

税込経理方式と税抜経理方式はどちらがお得なのか

税込経理方式なら消費税をまとめて計上できるので、会計処理の手間が省けるというメリットがあるものの、税込経理方式には気をつけるべきいくつかのデメリットもあります。
 
税込経理方式で処理すると、消費税分が上乗せされている分だけ収入や経費が大きく見えますが、税込経理方式でも税抜経理方式でも最終的な利益は同じです。
 
税込経理方式は決算時の租税公課が大きくなってしまうので、もともと赤字だったにもかかわらずいきなり赤字に転落したかのような錯覚に陥ることがあります。
 
この点で税抜経理方式は最初から消費税を別に計上しているため、利益を錯覚する心配はありません。
 
ただし、不動産業者や介護事業者など、一部例外となる事業者はあります。
 
「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例」では、30万円未満の減価償却資産を1年で経費として処理できます。
 
税抜価格が30万円未満で税込価格が30万円以上の減価償却資産は、税抜経理方式で処理するか税込経理方式で処理するかで経費として計上する年数が大きく異なってしまいます。
 
これらのことを考えると、事業規模の大きな企業は税抜経理方式にしておいたほうが多くのメリットを実感できるでしょう。
 

 

消費税の決算処理方

2つの方式のどちらを選択するにせよ、消費税の申告書を作成して納税する消費税額を確定しなければなりません。
 
freeeの場合、メニューバーの「決算」から「振替伝票」を選択し、「振替伝票を作成する」で消費税の伝票を作成していきます。なお、金額は実際の消費税納税額に置き換えてください。


1.税込経理方式での消費税の決算処理は、簡単で、次の通りになります。
2.【図示しているfreee上の画面における前提条件】 freeeで作成した消費税申告書の納税額 : 300,000円 仮払消費税(資産) : 6,087,237円 仮受消費税(負債) : 6,387,000円
consumption-tax1

税抜経理方式での消費税の決算処理は、注意すべき変更点があります。
consumption-tax-2

図で青く囲んで示したように、「仮受消費税」・「仮払消費税」・「雑費」の税区分は、[対象外] に変更しなければなりません。 「仮受消費税」・「仮払消費税」・「未払消費税」の3つを計上して生じる差額は、「雑費」で計上します。この雑費が1万円以上あるようですと、どこかで計算間違いがあるか、土地の売買のある不動産業者や、医者・歯科医、介護事業者などの特殊なケースであると思われます。
 
 

消費税はいよいよ10%へ

令和元年(2019年)消費税は10%へと引き上げられます。
 
多くの企業が消費税改正に向けた対応を急がなければならない状況ですが、対応に苦慮している企業も少なくないようです。
 
導入直後から混乱しないためにも、できる限り早めに準備をしておきましょう。
 

 

消費税改正でおさえておくべきポイント

消費税が10%になると「複数税率制度」がスタートします。
 
軽減税率8%の「消費税率」と「地方消費税率」の割合が変更になるなど、現行の消費税とは税率の内訳が異なります。
 
令和元年(2019年)10月1日からは、現行の「請求書等保存方式」から税率ごとに区分して合計する「区分記載請求書保存方式」になり、令和4年(2013年)10月1日からは「適格請求書等保存方式」になります。
 

“消費税率及び地方消費税率について、次のとおり引き上げることとされています。”
 
<引用元>国税庁:消費税及び地方消費税の税率

 

まとめ

消費税改正に伴い、すべての企業が対応を迫られています。
 
新たな制度では一律だった消費税が初めて2つに区分けされるので、制度の内容と会計処理の方法を正しく理解し、スムーズに対応できるよう準備しておきましょう。

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