学校法人会計 新基準の内容をわかりやすく解説
学校法人会計基準が改正され、平成27年度の決算から適用が始まります。基準制定以来、約40年もの間、大規模な改正がなかった学校法人会計。なぜ今回改正が行われたのか、何がどのように変わったのかについて、簡単に解説いたします。
1)なぜ改正することになったのか
一般企業が適用している企業会計基準については、連結会計の導入、金融商品の時価評価、固定資産の減損会計など、社会・経済環境の変化やグローバル化を踏まえ、今までに何度も大規模な改正や、新基準の導入がされていきました。
一方で学校法人会計基準については、なんと、昭和46年の制定以来、大規模な見直しは一度もされていなかったのです。学校法人は「財政基盤の安定」「補助金配分の基礎」など、その会計が求めるものが一般企業とは異なるため、会計基準が一般企業と相違してしまうのは仕方がありません。そうはいえども、昨今の経済環境の変化などを受けて「経営状態について社会に分かりやすく説明する仕組み」を構築するため、今回の改正が行われました。
2)どんな改正がなされたのか ー主な改正内容について
1. 収支・損益の内容が見やすくなった
学校法人では、収支については「資金収支計算書」、損益については「事業活動収支計算書(旧基準:消費収支計算書)」を作成します。
従来の学校法人会計では収入と支出をずらずらと一覧表示する形で上記の2つの計算書を作成していました。一般会計の損益計算書やキャッシュ・フロー計算書のように区分表示がされていないのです。この形では、活動内容ごとの収支について「利用者が各自で組替えて計算し直さないと数字がつかめない、見にくい」という問題を抱えていました。
そこで今回の改正では、「活動区分資金収支計算書」や「事業活動収支計算書」でも区分表示を行い、活動内容ごとの収支(損益)について明らかにする形に改めました。また、基本金組入前の損益と、組入後の損益を分けて開示する形式に改めることにより、継続的な損益が読み取りやすくなりました。
2. 学校法人の継続可能性について注記
学校法人は一般企業と異なり、「突然の倒産」というものはなかなかありません。しかし、経営困難な状況に陥っている学校法人は少なくないという現状があります。そこで、「第4号資本金に相当する資金を有していない場合」についてはその旨と対策について注記することが求められました。第4号資本とは、おおよそ1か月分の運転資金と考えていただければ結構です。
3)適用時期
文科省所轄学校法人については平成27年度(平成28年3月31日決算)からの適用となります。知事所轄学校法人は適用まで1年間の猶予があり、平成28年度(平成29年3月31日決算)から改正された会計基準となります。また、知事所轄学校法人については「活動区分資金収支計算書」の作成が免除されています。
まとめ
40年ぶりの大改正といわれている学校法人会計基準の改正。新基準では、学校法人基準の特性はそのままに、説明責任に重点をおいた決算書が作成されることになります。関係者からの問い合わせも多くなることが予想されますので、十分な対応が必要になりますね。