原価計算と原価管理の違いをわかりやすく解説
原価は経営の源泉であり、非常に大事なものです。この原価に関係してよく聞くのが「原価計算」と「原価管理」です。この2つの違いを明確に答えることが出来る経営者は少ないのではないでしょうか?
「当社は原価計算をしているから原価管理も出来ている」こんな事を平然と言う経営者がいたとしたら、それは大きな誤りを犯しています。今回は非常に大事なものですが、曖昧で、ブラックボックスになりがちな「原価計算」と「原価管理」の違いを理解して頂きたいと思います。
1)原価計算と原価管理は全然意味が違う
簡単に違いを説明すると、原価計算は「ツール」、原価管理は「原価計算というツールを使用した業績向上スキーム」という意味になります。「ツール(tool)」とは、文字通り「道具」という意味です。「スキーム(scheme)」とは、枠組みをもった計画という意味です。先ほどの原価管理の説明をわかりやすく言い換えると以下のようになります。
「原価計算という道具を使用した、業績が向上する仕組みを持った行動を決めたもの」
原価管理の本質は、原価計算の結果を業績へ繋げることです。原価を計算して把握(平たく言うところの「管理」)する事が全てではありません。原価管理を言葉そのままに“原価を管理する事”としてしまうと、この言葉に隠された本質を理解することはできないでしょう。このように原価計算と原価管理は全くの別物なのです。
2)原価計算とは
原価管理のツールとなる、原価計算とはどのようなものでしょうか?原価計算とは、費用のうち原価に分類されたものをサービス、または製品毎に集計する計算方法です。
「費用」と「原価」の違いを理解しておくと、より一層理解が深まると思います。そもそも「費用」とは、収益を生み出すために要した努力とされています。この「費用」は、発生原因により「原価」「販売費及び一般管理費」「損失」に分類されます。
売上高に直接的な対応関係のあるものを「原価」、売上高よりも期間と対応関係のあるものを「販売費及び一般管理費」、単発的に発生するようなものを「損失」といいます。つまり、費用は原価よりもレイヤーが高いものになるのです。
費用を原価として分類しただけでは業績向上には繋げられません。原価をサービスや製品の売上に対応するもの毎に集計することによって、そのモノに利益が出ているか出ていないのかがやっと分かります。このような計算ののち、原価管理を経て業績へ繋ぐことが出来るのです。
3)原価管理とは
原価管理とは先に説明した通り「原価計算という道具を使用した、業績が向上する仕組みを持った行動を決めたもの」です。
原価計算と原価管理を事例で考えてみましょう。例えば、チーズカレーを650円で売るとします。まずは、広告宣伝のような期間に対応する費用、売上高に直接対応するカレールーのような費用を分類します。
その分類した費用のうち、売上高に直接対応する費用が原価となり、これを1人前毎に集計するのが原価計算です。
チーズカレーの原価を把握した上で、いかにして利益を生み出すのかを考えること、それが原価管理です。材料の変更、人件費の削減、配送コストの抑制など、業績向上のための一手を決定します。
この決定に対して、目標となる原価を算出します。その原価を達成すれば、業績が向上するという仕組みです。実際に算出された原価と、目標との差を埋めることで業績の向上を図る方法もあるでしょう。
そして、業績が向上するまで決定した行動を続けます。この一連の業績向上に繋がる行動を決め、実行することこそが原価管理(原価計算という道具を使用した、業績を向上させるための仕組みをもった行動を決めたもの)となるのです。
まとめ
「原価計算と原価管理の違いについて、全然知らなかった!」「原価管理が出来ていなかった!」という発見を1人でも多くして頂ければ幸いです。
しかし、原価は奥が深い上に成果が出るまで、時間がかかります。そして、原価管理を本格的に実施し始めると、組織との関係性が重要になることも多いです。組織の連携がうまくいかない、自主的に動いてくれる人がいない、現場の協力が得られない、 情報が入手できないなど、挙げればキリがありません。原価管理を実施する際は、周りとの関係性も考えて、くれぐれも慎重に進めてください。