所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)の記載の仕方をわかりやすく解説
サラリーマンや個人事業者などの個人が得た収入(所得)には所得税※がかかります。所得税については、所得者自身が所得や税額等を計算し、自主的に申告・納税する「申告納税制度」を建前としています。申告納税制度とあわせて、会社が従業員の給与を支払う際に、所得税を給与から天引きするように、特定の所得については会社がその従業員に代わってまとめて納税する「源泉徴収制度」を採用しています。
では、会社が源泉徴収した所得税(源泉所得税)はどのような納税手続きがとられているのでしょうか?納税に使用される所得税徴収高計算書の書き方について解説しました。
※復興特別所得税も課税されますが、文章を分かりやすくするため省略しております。
1)所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)について
1.所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)
会社が源泉徴収した所得税(源泉所得税)は、その金額等を所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)に記載して期限までに納税します。
源泉徴収の対象とされる所得は様々で、また納付書の種類も下記のように様々です。 ・「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」 給与や賞与、退職金、弁護士や税理士といった一定の資格を有する者に対する報酬等に対する源泉所得税を記載する納付書 ・「配当等の所得税徴収高計算書」 配当所得等に対する源泉所得税を記載する納付書 ・「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」 原稿料や講演料、プロスポーツ選手の報酬、馬主が受ける競馬の賞金等に対する源泉所得税を記載する納付書
今回は会社の実務で必ず使用する納付書「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」について、その記載の仕方を解説いたします。
2.「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」
「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」は納期の特例の適用を受けていない場合と受けている場合とで様式が異なっており、納付期限等は下記の通りです。
■納期の特例の適用を受けていない場合(一般分)
給与等から天引きした源泉所得税は、原則として給与等を実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。
例えば6月25日支給の給与から天引きした源泉所得税は翌月の7月10日までに税額等を納付書に記入して国に納めなければなりません。
■納期の特例を受けている場合(納期特例分)
給与の支給人員が常時9人以下の源泉徴収義務者(会社等)は、天引きした源泉所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。これを「納期の特例」といいます(この特例を受けるためには、申請が必要です)。
例えば、1月~6月の半年間に支給した給与から天引きした源泉所得税は、7月10日までに税額等を納付書に記入して国に納めなければなりません。
※なお、これらの納付期限が日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。
2)所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)の書き方(通常編)
■納期の特例の適用を受けていない場合(一般分)
1.年度(4月1日~3月31日)を記載します。※ 2.所轄税務署名を記載します。 3.整理番号を記載します。 4.給与等について、実際に支払った年月日を記載します。 5.支給人員を記載します。 6.給与等の支給総額(社会保険料等控除前)を記載します。 7.天引きした源泉所得税の総額を記載します。 8.税理士等へ報酬を支払った年月日を記載します。 9.税理士等へ報酬を支払った人数を記載します。 10.税理士等へ支払った報酬総額を記載します。 11.税理士等の報酬から差し引いた源泉所得税の総額を記載します。 12.源泉所得税の合計額を記載します(77,100円+5,105円=82,205円)。 13.上記のケースでは本税の82,205円をそのまま記載し、金額の前に¥マークを記載します。 14.給与や報酬等を支払った年月を記載します。
なお、「徴収義務者」の欄には住所(所在地)及び氏名(名称)を記載します。
※ 年度単位ですので、例えば平成28年2月支給の給与から天引きした源泉所得税を平成28年3月10日に納付する場合は「27」と記入します。また、平成28年3月支給の給与から天引きした源泉所得税を平成28年4月10日に納付する場合は「28」となります。
■納期の特例を受けている場合(納期特例分)
1.年度(4月1日~3月31日)を記載します。 2.所轄税務署名を記載します。 3.整理番号を記載します。 4.給与等について、納期の特例の期間内の最初と最後の支払年月日を記載します。 5.支給した実人員の合計数を記載します。(延べ人数となり、上記のケースでは9人×6ヶ月=54人) 6.給与等の支給総額(社会保険料等控除前)を記載します。 7.天引きした源泉所得税の総額を記載します。 8.税理士等への報酬の最初と最後の支払年月日を記載します。 9.税理士等へ報酬を支払った人数を記載します。 10.税理士等へ支払った報酬総額を記載します。 11.税理士等の報酬から差し引いた源泉所得税の総額を記載します。 12.源泉所得税の合計額を記載します(277,560円+30,630円=308,190円)。 13.上記のケースでは本税の308,190円をそのまま記載し、金額の前に¥マークを記載します。 14.納期の特例の期間の最初と最後の支払年月を記載します。 ※徴収義務者の欄には住所(所在地)及び氏名(名称)を記載します。
3)所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)の書き方(年末調整編)
■納期の特例の適用を受けていない場合(一般分)
年末調整の結果、過納額を充当したり還付したりしたため、納付する税額がなくなった(「本税」欄が「0」)場合でも、納付書に必要な事項を記載して所轄税務署に提出する必要があります。
・過納額481,800円、12月中の源泉徴収税額425,605円の場合 1.年末調整の際に払いすぎの金額(過納額)があった場合に記載します。 2.0円と記載します。 3.上記のケースでは本税の0円をそのまま記載し、金額の前に¥マークを記載します。 4.摘要欄に残った超過税額を記載しておくとよいでしょう。 ※12月に還付しきれなかった56,195円(481,800円-425,605円)は、翌年1月に繰り越して精算します。
■納期の特例を受けている場合(納期特例分)
・過納額289,080円、12月中の源泉徴収税額514,190円の場合 1.年末調整の際に払いすぎた金額(過納額)があった場合に記載します。 2.今回納付すべき源泉徴収税額から超過税額を差し引いて記載します。 3.上記のケースでは本税の225,110円をそのまま記載し、金額の前に¥マークを記載します
まとめ
源泉所得税を納付期限までに納付できなかった場合には、10%もしくは5%の不納付加算税がかかってしまう可能性があります。一日でも遅れると痛い目にあうかもしれませんので、納付期限はきちんと守って、不明な点は専門家に相談してください。