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2015年10月07日(水)

知っていますか?「企業会計・7つの基本原則」

経営ハッカー編集部
知っていますか?「企業会計・7つの基本原則」

kaikei-keiri
今回は中小企業の経営者の方が5分で会計のコツをマスターするためのコラムです。

会計は難しいなと思っている方、分からないから会計士や税理士に丸投げしている方は多いと思います。もちろん、実際の税処理や原価計算などは顧問の専門家にお願いすればいいと思いますが、月に1-2回しか会わない専門家がすべての会計に関与することは現実的ではなく、レシート一枚ずつ判断を仰ぐわけにも行きません。

よって、ある程度の範囲で経営者が自身で判断をしないといけない場面は出てきます。今回のコラムは、そのような時に判断する基準としてご利用いただければと思います。

それでは、まず最初に会計における原則とはなんだろうか、という点からまとめていきましょう。

 

1)企業会計原則

会社法に下記のような条文があります。

「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。(会社法 第四百三十一条 )」

そして、その一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行とは、「企業会計原則」である、と一般的に解釈されています。

つまり、企業会計原則とは、あらゆる企業が会計処理を行なうにあたって、必ず従わなければならないとされている「会計指針」のことを言います。 では、なぜこのような指針が必要なのでしょうか。

そもそも、現代の日本にはさまざまな業種業態の企業が営業活動を行なっており、全く同じ会計処理方法で完全に統一する事はその性格上難しくなっています。

けれども、何の基準もないまま、会計処理の全ての判断を個々の会社に委ね、そしてその会社の会計担当者に委ねてしまうと、バラバラな会計基準が生まれてしまい収集がつかなくなります。

そこで、そのような事態を防止し、会社の財務諸表に社会的な信用度を持たせるために、客観的で合理的な指針を示す必要があるのです。

なぜ「法律」ではなくて「指針」なのか

そもそも企業会計基準は法律そのものではないため、強制力は及びません。 ではなぜ強制力のない指針にとどめているのでしょうか。 仮に全ての企業の会計基準を法律でガチガチに拘束してしまうと、会計実務上さまざまな不都合が生じてきます。

企業が多様化している現代において、一つの法律で会計基準を規定する事は合理的ではないため、あえて指針とすることで、企業の多様性に対応できるようにしているのです。

2)「公正妥当」とはなんだろう?

企業会計原則の説明に先だって「公正妥当」について説明します。なぜ、会計原則は「公正妥当」という歯切れの悪い定義なのでしょうか。経営者からすると、もっとはっきり言ってくれれば良いのに、という気持ちも起きると思います。

しかし、会社が行う活動や社会環境は、流動的で予測不可能な事態に満ち溢れており、いかに法や制度の整備をしても決して追いつくことはなく、明確な基準を設けることができないことが往々にしてあります。そこで、「公正妥当」という表現になっているのです。この公正妥当を一言で説明するのは難しいのですが、今回のコラムの中でヒントを掴んでもらえれば幸いです。

3)企業会計原則 一般原則

では、本題である「企業会計原則」を見てみましょう。企業会計原則は全7項で成り立っています。今回のコラムのメインはこの概念の理解です。是非ご一読ください。

1)真実性の原則

規定:「企業会計は、企業の財政状態および経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。」

解説:企業会計は公正妥当な範囲でその具体手法は企業側にゆだねられており、その公正妥当の範囲は絶対的真実ではなく、相対的なもので十分とされています。

絶対的・相対的の部分をもう少し柔らかく言うと、誰がいつ計算しても同じ答えになる、というほどの正確さは無くても良いが、本質が変わらない程度の正確さが必要ということです。この原則は企業会計原則の最高位に位置し、この後の6項目のすべてに共通します。

例えば、車や建物などの減価償却は、毎年一定比率(1/3ずつなど)で償却するような方法、毎年一定額(100万円ずつなど)償却するような方法、走行距離に応じて償却する方法など色々とあります。どれも正しい方法であり、どれを採用するかは、会社の規模や業務を加味して会社側で選択することができますが、その償却度合いや現在価値が公正妥当であるようにしましょう、ということです。

2)正規の簿記の原則

規定:企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

解説:一般的に企業会計は網羅性・立証性・秩序性の3つの要件を満たしていることが必要だと言われています。

個々に説明すると相当長くなるので割愛しますが、実務レベルでは「複式簿記を採用しましょう」という認識で足りると思います。

複式簿記とは、すべての取引はその二面性を表現できるように帳簿をつけなさい、ということです。二面性とは、商品を仕入れるとその支払があり、製品が増えると材料が減る、というような関係性のことです。

例えば、ある日突然在庫だけが増えるのは正しい複式簿記ではありえません。在庫が増える場合は、材料の仕入れや人件費も在庫に合わせて増えるはずであり、そのための買掛金や運賃などももちろん増えているはずです。同様に、仕入や納品などの在庫推移を伴わない売上発生などもあり得ません。

この実在しない在庫の計上は不正会計の典型的なパターンですが、一度行ってしまうと帳尻を合わせるのは難しいでしょう。経営者自身にとっても、会社の財務実態を把握できなくなる危機的な状況に派生しますので、十分に気を付けておきましょう。

3)資本取引・損益取引区分の原則

規定:資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

解説:本業(主たる業務)の収支と、増資や社債の株式転換などによる収支を区分けしましょうということです。※中小企業の日常的な経営業務との関連性が低い項目なので、簡単な説明にとどめます。

4)明瞭性の原則

規定:企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

解説:財務諸表は会社が債権者や株主に対して、その判断材料になるように提供するものです。よって、その中に誤った情報や、誤りを誘導するような情報が入っていてはいけません。

例えば、実際には存在しない取引を期末に大量に計上すると、決算書上は売上が大きく伸びます。すると債権者や株主が会社が順調だという判断を下すように誘導することができます。これは「不正な会計処理」と言われるものの代表格です。最近ニュースでよく取り上げられるので、身近に感じるかもしれませんね。

また、会社と利害関係者の間だけでなく、部下と上司などの間の営業成績評価などにおいても同様の粉飾行為が発生する事がありますので、経営者の方は内部不正にも十分に注意しましょう。

5)継続性の原則

規定:企業会計は、その処理の原則および手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

解説:一つの会計事実に複数の処理や原則の選択適用が認められている場合に、いったん採用した選択肢は原則的に継続して採用しなければいけないということです。

例えば、10月にクレジットカードで決済して営業車のガソリンを入れ、11月にその代金が引き落とされるとします。その場合に、発生主義に基づく費用発生日を実際にガソリンを入れた10月とするか、引落日である11月とするかは、その基準が公正妥当であれば、いずれも選択できます。

しかし、ある時は決済実行日、ある時は引落日というように、その都度処理の選択をしてはいけません。同じ選択を継続する必要があります。

では、一度行った選択はいつまで継続すべきでしょうか。正当な理由がある場合にはその選択肢の変更をすることができます。例えば、当初はクレジットカードの引落日を費用発生日としていたが、従業員も営業車も増えてきたため、買掛で給油できるようにし、その請求書の締日を費用発生日と変更するような場合などです。ただし、この場合でも、一度変更選択した選択肢は継続的に採用しなければいけません。

6)保守主義(安全性)の原則

規定:企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

解説:企業の安全を保持し、健全な発展を図るためには、将来の危険に備えておくことが重要です。この原則は、危険に備えて、慎重な判断に基づく会計処理を行うことを要求する原則です。

例えば、貸倒引当金の見積もりプロセスにおいて「昨年よりも貸倒率は低いだろう」と思い込むのではなく「新規取引先の実態把握は出来ておらず、取引規模も予想しえないため、昨年と同様かそれ以上の貸倒率があるかもしれない」と考えるよう促すのが保守主義の原則です。ただし、当然ながらその引当金額の程度は公正妥当であることが要求されます。

7)単一性の原則

規定:株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のためなど、種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

解説:「複数の財務諸表を作ってはいけない」ということを言っているのではなく、その場合に「事実の真実な表現をゆがめてはいけない」といっています。つまり、相手先毎に必要とされる財務諸表の形を変えても良いが、すべての場合で中に盛り込まれる情報は単一性を有する事を促しています。

例えば、債権者(銀行など)に提示する決算書は黒字、税務署に提出するものは赤字、という大規模なものは問題外ですが、6)で述べた貸倒引当金の計上を株主用には楽観的なものを、税務申告には保守的なものを、というようなものも本則に反します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
来年から施行されるマイナンバー法や、現在議論されている消費増税の還付制度など、新しい制度は矢継ぎ早に出てきます。経営の現場にいながら、それらすべてへの会計的な対策知識を身に付けることは困難ですが、そのすべての根本には企業会計原則があります。

よって、この企業会計原則の基本趣旨を理解することは、経営者の迅速で正確な判断の基礎としてメリットがあると思います。

また、企業会計原則は会計だけでなく、その他の企業活動においても十分に参考にできると思います。個人的には社内の業務改善や人事評価などもこれらの基準と前提を同じくすることで、企業活動全体の価値観を統一性の高いものにできると思います。是非とも経営に活かしていただき「公正妥当」な企業経営を心がけてしてください。

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