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2015年10月28日(水)

支出を減らす管理会計「人件費の管理」

経営ハッカー編集部
支出を減らす管理会計「人件費の管理」

kanrikaikei 利益を出すための方法は大きく分けて、「収入を増やす」「支出を減らす」の2つです。今回はその支出を減らすための管理会計「人件費の管理」についてです。

多くの中小企業にとって、最も比重の高い支出は人件費ではないでしょうか。特にスタートアップは、とかく給料の支払いに四苦八苦するものです。そんな人件費ですが、どうすれば適切に管理できるのでしょうか。

人件費管理の主な工程は、人件費の可視化→集計→差異の把握→対策立案と実行→効果測定です。細かな部分は各会社によって変わってきますので、大筋での流れを書いていきたいと思います。

※補足:会計には、「財務会計」と「管理会計」の2種類があります。財務会計は、簡単に言えば銀行や株主など会社外の人に見せるためのもので、決算書や月次試算表などが該当します。外部の人にとって分かりやすいように、その書式や記入方法は法律において厳密に決められ、統一された形式に作られます。会社ごとの形式だと、経営状態を上手く把握出来ないからです。

管理会計は会社の中の人が見るためのものです。決められた形式は無く、自分たちの会社の課題を可視化したり改善計画の進捗を追う為に作るものです。

1)工程1:人件費の可視化

可視化の基本は「2極の軸」です。基本となる2極は、人件費を発生させる外的要因の項目と実際の作業項目です。外的要因は顧客名、案件名、サービス名などが該当します。作業項目は、テレアポ、商談、提案などの実際の作業フェーズが該当します。個々の会社ごとに適した項目は異なります。

ポイントは、最初のうちは出来るだけシンプルに把握する事です。最初から複雑にしすぎても、データが的を得ない事が多いです。一地点の断面ではなく、経過を観測をして管理して行くことが目的ですので、時間経過に合わせて微調整を行うと良いと思います。

また、中小企業では、特定の業務への専任ではないスタッフがこのような業務を担当している場合も多く、営業、仕入れ、経理がを一人の社員が行っている状況はよくあります。作業項目は職務単位(営業・総務・通販など)ではなく、実際に発生する作業単位(伝票入力・コーティング・商談など)で行う事が望ましいです。

2)工程2:集計

次に仕訳をした作業の実際発生量を集計します。

集計はクラウド型のタイムカードやエクセルで作成したマクロなどで業務ごとの従業時間を打刻していくと良いでしょう。手書きやエクセルに時間を手入力するような方法でも良いのですが、打刻するスタッフが面倒に感じない方法で、また、集計が容易にできる方法を選択する事をお勧めします。

実際に工程1と2をエクセル上に記録した場合、このようになっていきます。システム開発を営む会社という設定です。 article1 これを集計すると下記のようなレポートを作成する事ができます。 article2 今回は簡易的に1日だけ、スタッフ1名の場合でサンプルを作ってみましたが、従業員が何名でも同様にレポートに落とし込むことが可能です。

3)工程3:差異の把握

標準売価、単位工数などの基準値と実績の差異を把握する工程です。システム開発などの案件の場合、見積もり段階で必要となる標準作業時間を試算していると思います。そのような見積時間を基準として、実際に消費した人件費の進捗度合との差異を見ます。

先ほどの例では、「開発」が消費している実績時間は60時間です。見積時点では50時間で見込んでいたとすると10時間の遅れ差異が生じています。比率では60時間÷50時間=120% です。これが差異です。 article3 差異の全体像が分かったので、次はこの差異の詳細を把握します。差異は作業の量や内容などの外的な要因に関係するものと、仕事のやり方やスタッフの能力などの内的な要因に関係するものに分けられます。そして、結果的に「遅れ」と「早まり」が発生します。これらを組み合わせると下記のようなパターンになります。 article4 集計結果に現れた差異をこのようにグループ分けします。漠然としているように感じるかもしれませんが、大事な事は、差異が発生しているという事実を速やかに把握する事です。シンプルに、速やかに差異の把握をしましょう。

集計と差異の把握工程を毎週行った場合、月次試算表などで月1回把握する場合と比較し、1か月近い早期把握が可能になります。月1回の集計をする場合、年間に得られる改善機会は12回しかなく、週1回の集計をした場合にはその4倍程度の機会を得ることができる、と考えていただくと良いと思います。人件費管理の肝はこのスピード感です。

4)工程4:対策立案と実行

ようやく実際に人件費を管理する工程です。個々の会社の状況に合わせて様々な対策案があると思います。ここでのポイントは「重要性」という観点です。例えば、月間20時間の効率化につながる改善は3時間のものよりも優先されます。通常業務以外の限られた時間の中での作業となりますので、重要性が高い物から優先的に取り組みます。

重要性を考察する際は、発生頻度や工程への影響度などの削減効果と合わせ、その改善に必要なコストを加味します。非常に改善効果が高い対策であっても、時間的・金銭的コストが大きいものは優先順位を低く設定した方が良いです。改善は必ず成功するのではなく、通常の業務同様に失敗することもあることを念頭に置いてください。

5)工程5:効果測定

実際に取り組んだ改善の効果を測定します。実際はこの工程は3の「差異の把握」の工程と同じ手順になります。工程4で立案・実行した改善効果を標準とし、この差異の把握と対策の立案を繰り返します。また、適宜工程1の仕訳の調整を行い、その調整の中でより細かなグループ分けへと徐々に変更を加えていきます。

会社が継続する以上、人件費が発生しますから、同様に人件費の管理も終わることなく継続します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。10%の収入アップよりも10%の支出ダウンの方が簡単であることは往々にしてあります。加えて、営業利益への影響力は10%の支出ダウンの方が大きくなります。そして、支出ダウンの中でもっとも効果が出やすいのが人件費です。積極的に人件費の管理に取り組んでいただければと思います。

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