税金の払い過ぎでは?海外で払った税金を取り戻そう「外国税額控除」
最近の証券会社における外国株式取扱い強化などにより、海外への株式投資が容易になっています。特に米国企業は、なじみのある企業が多く、かつ株主重視のゆえの高い配当利回りを実現している企業も多いので、投資先としては魅力的です。私も外資系企業に勤務していた時期があり、その際に取得した株式をいまだに保有していますが、年に4回配当があるなど、その魅力を実感しています。
ただ海外への投資にはデメリットもあります。ひとつは為替リスク、そしてもう一つが税金です。例えば配当は、投資した会社がある国で課税されるのが一般的です。日本から投資する場合には、海外で課税された後に、さらに日本でも課税されます。つまり投資をした国と日本において二重に課税されてしまいます。 上記の例は、アメリカにある会社から配当を受けた場合ですが、投資した会社があるアメリカと、あと日本で課税されます。このように海外と日本における国際的な二重課税を排除してくれる制度が「外国税額控除」です。
海外で払った税金を日本で取り戻せる「外国税額控除」
海外で払った税金は日本での税金から減らしてあげよう、というのが外国税額控除になります。海外の税金を日本が肩代わりしてあげるというイメージです。下のイメージ図をご参照ください。アメリカで支払った税金である10円を、日本で源泉徴収された税金の18円から控除することによって、二重課税の状態を解消します。
外国税額控除が使えるもう一つのシナリオ(個人の場合)
海外に子会社や工場があり、その拠点に日本の社員を派遣する場合もあるのではないでしょうか。多くの国の場合、派遣期間が6カ月を超えると、その国で課税されるのが一般的です。例えば台湾ですと、年間の居住期間が90日を超えると二重課税状態が発生します。派遣期間が1年未満の場合には、日本においても給料の全額に課税されてしまうので、国際的な二重課税状態が発生してしまいます。
この国際的な二重課税状態を解消するためにも外国税額控除を使うことができます。
法人の場合も海外の税金を取り戻せる
個人のみならず、法人でも外国税額控除の制度があります。海外に子会社がある法人においても、この外国税額控除の制度が使えるわけです。
例えば、海外の法人から特許の使用料を受け取るとします。特許の使用料などのロイヤリティを受け取る時に、その海外法人がある国において源泉徴収が必要になる場合があります。外国税額控除を用いて、海外で源泉徴収された税金を、日本の税金から控除することができます。
外国税額控除の注意点
メリットのある外国税額控除の制度ですが、注意点もいくつかあります。
1) 確定申告が必要
外国税額控除ですが、自動的に控除をしてくれる仕組みは残念ながらありません。確定申告書を作成して、申告をすることで初めて控除が適用されます。確定申告書には、海外で税金を支払ったことを証明できる書類の添付が必要ですので、海外から確定申告書や納税証明書の類を入手する必要があります。
2) 全額が控除できるわけではない
残念ながら、海外で支払った税金が全て控除できるわけではありません。日本で支払った税金額が限度になります。日本より高い税率の国(日本より税率が高い国は多くありませんが…)からの配当などの場合には、全額が控除できるわけではないのです。
正確には、以下の計算式による金額が控除できる限度になります。 ただし、その年に控除できなかった金額は、個人の場合も法人の場合も確定申告をすることにより3年間繰り越すことができます。
3) すぐに控除できるわけではない
支払うことが”確定”した外国の税金が、外国税額控除の対象となります。支払うことが確定するタイミングは、日本と同様に確定申告の時が一般的です。日本の場合、法人は事業年度終了後2カ月以内、個人の場合は翌年3月15日が確定申告の期限ですが、海外では日本よりも確定申告の期限が遅い国の方が多いです。
その場合、例えば2015年の税金が、2017年になってようやく税金が還付される、ということがよくあります(下の図参照)。税金の控除に2年を要してしまうということがあるので、資金繰りの観点で注意が必要です。
まとめ
海外に投資する際にぜひとも知っておきたいのが、外国税額控除です。海外で課された税金を取り返すことができます。しかしながら、海外の税制に関する最低限の知識が必要であり、対応できる税理士は多くないのが現状です。ご不明な点がありましたら、国際税務に詳しい税理士に問い合わせされることをお勧めいたします。