地方法人特別税が2017年に廃止!廃止によって経理に及ぼす影響まとめ
昨年末に発表された税制改正大綱によると、2017年に地方法人特別税が廃止されることが明記されています。今回は、地方法人特別税の廃止に伴い、経理実務にどのような影響を及ぼすのかを解説していきます。
1)そもそも地方法人特別税とはどのような税金?
地方法人特別税は、地域間の税源偏在を是正するための暫定措置として平成20年から適用されました。昨年末に発表された税制改正大綱により、2017年から法人住民税法人税割の一部が地方法人税に税源移譲されることで、暫定的な措置として行われていた地方法人特別税が廃止されることになりました。また、廃止された地方法人特別税は法人事業税に復元されます。ちなみに、地方法人特別税の計算を都道府県の税額計算をする第六号様式で行っているために、地方税と勘違いされる方もいらっしゃいますが、実際には国税に分類される税金です。法人事業税などと併せて都道府県に対して納付された地方法人特別税は、都道府県から国に対して払い込まれ、その後に地方法人特別譲与税として各都道府県の自治体に分配される仕組みとなっています。
2)地方法人特別税の廃止による実務への影響
地方法人特別税は廃止されますが、法人事業税に移譲されるために会計上の取り扱いで大きな差異は発生しないと予想されます。地方法人特別税は法人税法第38条に規定される法人税額等の損金不算入項目には該当せず、法人税法基本通達9-5-2に規定されている通り事業税と同様の損金経理を行うこととなります。つまり、会計面では事業税と同等に扱うことができるので、地方法人特別税が廃止されて法人事業税に復元されたとしても会計上の取り扱いはほぼ変わりません。また、地方法人特別税の納付についても法人事業税と同じ納付書で申告納税を行いますので、地方法人特別税の欄がなくなって法人事業税の額が増えるだけなので大きな問題点は発生しません。
上記のように会計面では影響が軽微ですが、申告書ではいくつかの違いが出てくるので詳しく確認してみましょう。
3)申告上の注意点
地方法人特別税が廃止されることにより以下の申告書に影響を及ぼすと予想されます(平成29年4月1日以降開始の事業年度で適用されるため、本稿作成段階では申告書様式などが決定していません)。 (1)第六号様式 (2)第六号様式別表十四 (3)法人税申告書別表五(二)「租税公課の納付状況に関する明細書」
(1)第六号様式の地方法人特別税の計算欄が無くなります。また、第六号様式の下にある地方法人特別税の計算欄は不要となります。
(2)法人事業税で超過税率が適用されている都道府県に提出する第六号様式別表十四が不要になります。また、地方法人特別税の税額計算基礎となる課税標準は所得割額を標準税率で計算した基準法人所得割額です。超過税率を適用している東京、愛知、大阪などの都道府県では基準法人所得割額を計算するために、この第六号様式別表十四が必要となりますが、地方法人特別税の廃止に伴い不要となる見込みです。
(3)法人税申告書別表五(二)「租税公課の納付状況に関する明細書」で事業税に含めて表記していた地方法人特別税の額がなくなり、法人事業税のみの金額を表記することになります。
まとめ
地方法人特別税の廃止について、会計実務面での影響を確認してみましたがいかがでしたでしょうか?会計処理上は地方法人特別税を法人事業税の一部と考えることで大きな問題点は発生しないように思えます。申告書の相違点についても、現在は様々な会計システムを利用して申告書作成を行いますが、税法改正に則したアップデートが行われていることを確認しておけば問題は発生しないでしょう。ただし、資本金1億円超の外形標準課税適用法人については、平成29年の地方法人特別税の廃止までに段階的に地方法人特別税の税率が変わりますので注意してください。
〈参考〉地方法人特別税Q&A