不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その1:不動産売買のケース)
「不動産業」は奥が深い!
「不動産業」と聞くと皆さんは、どのような商売を想像されるでしょうか?不動産の売買、賃貸、仲介、管理・・・。「不動産業」と一言で言っても、実は多種多様な、しかも全く性質の異なる業態がその中に含まれています。
今回は「不動産業」の中でも代表的な業務である「売買」「賃貸」「仲介」の3つについて、3回にわけて説明します。初回は、「不動産売買のケース」です。
不動産売買の特徴とポイント
不動産売買は、土地や建物を仕入れて売却し、その差額が利益となる業態です。そのため、その性質は小売業や卸売業といった商品の仕入販売に類似したものとなります。
1.経理の特徴
不動産売買の経理の特徴として挙げられるのは、他の二つとは異なり売上と仕入(原価)のほか、在庫が計上されるということです。
特に注意していただきたいは、在庫の計上です。在庫に計上すべき金額は、不動産の購入に直接要した金額だけでなく、仲介手数料といった取引に関連する費用も含まれます。こういった費用を資産計上せず、費用計上してしまって、税務調査で指摘をうけるケースは多数存在します。
また、在庫として計上された不動産のうち建物は販売を目的としている以上、商品と変わりありません。原則として減価償却を実施せず、売却時に仕入に振り替えることになります。しかし、なかなか売却できないため、一時的に賃貸に出すケースもあります。この場合、売却目的から賃貸目的に変更になったと考えられますので、減価償却が必要となります。
もっとも、不動産の引き渡しを以って、売上や仕入の計上となりますので、売上や仕入の計上タイミングで悩むことは少ないでしょう。
消費税の課否判定も注意が必要なポイントです。建物の売買は、消費税がかかる取引となりますが、土地の売買は消費税のかからない取引(非課税取引)となります。
ただし、建物と土地の同時購入において、契約書で建物と土地の金額が明確に区分されていない場合があります。この場合、消費税額が掲載されているのであれば、消費税額から逆算して建物の金額を確定させることになります。消費税額の掲載がない場合には、建物や土地の固定資産税評価額等、合理的な基準をもって、建物と土地を区分することになります。
2.資金繰りのコツ
不動産売買の場合、通常、仕入(不動産の購入)がまず先行し、その後に売上が計上されます。つまり、現金支出がほぼ必ずと言っていいほど先行しますので、資金ショートを起こしやすい業種です。
ですので、どのタイミングでいくらの支払いがあり、いくらの入金があるのか(もしくはいくらでいつ売却できるのか)、将来の資金繰り管理が重要です。また、不動産売買を専業で営んでいる場合、仕入時に銀行より短期の借入をし、売却時の代金でその返済を実行するというケースがよく見受けられます。
このため、銀行からの借入をしやすいよう、不明瞭な貸付をしない等、「決算書の見た目をきれいに保つ=銀行が貸し出しやすい決算書」を作成すること、そして銀行との関係を良好に保ち、できる限り低金利で継続して借入ができる環境を整えることも重要です。
<関連リンク>
不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その2:不動産賃貸のケース)
不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その3:不動産仲介のケース)