不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その2:不動産賃貸のケース)
3回にわけて不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイントを解説していますが、前回は「不動産売買」に特化してご説明しました。
今回は「不動産業賃貸」について説明します。
不動産賃貸の特徴とポイント
不動産賃貸は自己が所有する土地や建物を他者に貸し、その使用料収入をという業態です。そのため、その性質はレンタカー業のような物品賃貸業に類似したものとなります。
1.経理の特徴
不動産を購入し、それを賃貸することにより収入を得ることが特徴です。気をつけなければいけないのは、不動産売買同様、仲介手数料といった取引に直接関連する費用も含めて固定資産に計上する必要があります。
この費用は、建物と土地を同時に購入したような場合、建物は減価償却の対象になりますので、不動産売買の場合は主に消費税のためだけでしたが、同様に合理的な基準をもって、建物と土地にかかる費用にそれぞれ分けて計上する必要があります。
加えて、耐用年数がそれぞれ異なることから、購入もしくは建築した建物の価額を、その内容ごとに建物・付属設備・構築物・備品・無形固定資産に分けて、計上する必要があります。特に建物とその他固定資産は耐用年数が大きく異なりますので、充分な注意が必要です。
売上については、契約によって定められた賃貸料を毎月計上していきますが、通常、翌月分の賃貸料を当月に受領すること、また、賃貸料の滞納が生じる場合もあることから、賃貸収入(売上)にかかる債権債務が生じます。このため債権債務の管理が資金繰りを考える上でも重要になります。
消費税の課否判定もやはり注意が必要なポイントです。建物の賃貸のうち、居住用は消費税のかからない取引(非課税取引)、それ以外はかかる取引になります。
また、土地の賃貸のうち、土地そのものの賃貸は消費税のかからない取引(非課税取引)、駐車場のように施設の賃貸と判断される取引や土地そのものの賃貸であっても、賃貸期間が1カ月未満である取引はかかる取引となります。そして、どのような趣旨の取引であるのかは実態ではなく、契約書の内容によって判定されます。
2.資金繰りのコツ
こちらも不動産売買と同様、まず不動産(賃貸用不動産)の購入が先行し、その後に賃貸収入(売上)が計上されます。そのため、銀行借入をもって賃貸用不動産を取得するケースがよく見受けられますので、銀行を意識して決算書を作成することは重要です。
また、不動産賃貸は、時の経過により、
1.賃料が低下していく
2.修繕費が増大していく
3.金利の変動により銀行借入の毎月の返済額が変動する
ので、長期的な視点をもって、資金繰りを考える必要があります。
ただし、これらの事項は、事前にある程度見込みを立てることは可能で、その見込みにより、不動産の購入の是非を検討します。そのため、不動産購入前の綿密な計画の策定が特に重要になります。いったん作成してしまえば、後はそれを元に毎年の資金繰り計画を検討・修正するだけです。
<関連リンク>
不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その1:不動産売買のケース)
不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その3:不動産仲介のケース)