不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その3:不動産仲介のケース)
3回にわけて不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイントを解説していますが、前々回は「不動産売買」、前回は「不動産賃貸」に特化してご説明しました。
今回は「不動産業仲介」について説明します。
不動産仲介の経理処理等の特徴とポイント
不動産仲介業は、不動産売買や賃貸を仲介し、それにより手数料収入を得るという業態になります。そのため、その性質は会計事務所や銀行のような手数料収入を主としたサービス業に類似します。
1.経理の特徴
前述した二つの業態(不動産売買と不動産賃貸)とは異なり、不動産を保有しません。このため、他の二つに比べ、貸借対照表に計上される資産と損益計算書に計上される減価償却費が少ないことが特徴です。
また、労働集約型の業種であり、人件費が費用の大半を占めるのも大きな特徴です。人件費については、収入に直接影響を及ぼす部分とそうではない部分に区分することが困難であるため、一般的には販売管理費として損益計算書に計上されます。このため、売上原価が計上されるケースは稀です。
また、前述した通り、人件費が費用の大半を占める一方で、基本給と歩合給が支給され、かつこれらの締日と支払日に相違があるケースも非常に多く(例えば基本給は当月末締め、同日払、歩合給は当月末締め、翌月末支払といったケース)、同一の方への同日の支払いであっても、計上時期が異なるケースが考えられます。よって、人件費の費用計上時期については特に注意が必要です。
売上についても、不動産売買と不動産賃貸とは違い、不動産の移動という明確に分かる基準がありません。税務上は、仲介手数料にかかる契約の効力発生日もしくは仲介サービスの提供完了時に計上すべきとされていますので、しっかりとこれらの日付を客観的な証拠をもとに説明できるようにしておく必要があります。
消費税の課否判定については、外国人(非居住者)との取引のような特殊な取引でない限りは、全ての取引において消費税はかかってきますので、判定で悩むことも少ないでしょう。
2.資金繰りのコツ
こちらも不動産売買と不動産賃貸とは異なり、不動産の購入という大規模な投資がありませんので、一時的に必要な資金が少なくて済み、かつ銀行から借入をする必要性も低いため、開業のハードルも低いのが特徴です。
ただし、労働集約型の業種ですので、売上の有無にかかわらず、人件費が継続的に発生します。このため、こちらについても不動産賃貸同様、長期的な視点をもって、資金繰りをみる必要があります。
人件費以外の費用についてはさほど多額にならないことと、固定費であるケースが一般的ですので、資金繰りの見込みは非常に立てやすいです。そういう意味では、売上と人件費のバランスに特に注意を払い資金繰りを計画すれば、資金ショートを起こす可能性を他の2つの業態よりも低減することができます。
この他にも不動産業には、管理、リフォーム、建築、開発…と多種多様な業態が存在します。どの業態にも必ずといっていいほど、他の業種と似た側面がありますので、不動産業という括りで考えるのではなく、似た業種を思い浮かべながら考えると理解が深まります。
<関連リンク>
不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その1:不動産売買のケース)
不動産業の経理と資金繰りの特徴とポイント(その2:不動産賃貸のケース)