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2016年08月23日(火)

【消費税】簡易課税制度とは具体的に何が“簡易”なのか?

経営ハッカー編集部
【消費税】簡易課税制度とは具体的に何が“簡易”なのか?

簡易課税制度

今回は個人事業主や法人の経営者のとっては切っても切り離せない消費税について解説します。事業者であればどこかで耳にしたことがあると思いますが、消費税には簡易課税という計算方法があります。これは中小事業者に対して認められた特例計算であり、事業者が原則課税と比較し有利な方を選択することができます。

ただ簡易課税とは言いますが、いったい何が簡易なのかわからないという方もいるかと思います。そんな方のためにこのコラムではその特徴やメリット、デメリットをご説明していきたいと思います。

簡易課税制度の概要

簡易課税制度とは

原則課税の場合、事業者は預かった消費税(売上に係る消費税)から支払った消費税(仕入、経費に係る消費税)を差し引いて差額を国へ納税することになります。

一方簡易課税の場合には預かった消費税の計算は原則課税と同様ですが、支払った消費税の計算はせず、その代わり預かった消費税に一定の率(みなし仕入率)を乗じて算出した額を支払った消費税とみなして、簡便的に納税額を計算する方式です。つまり預かった消費税のみ集計すれば計算できるので、原則課税よりも簡易な計算と言えます。

消費税の計算上、仕入れや経費については消費税がかかっていないものが多くあり、その区分が不要となるため事務処理の負担軽減につながります。なお、消費税がかからない経費は主に人件費、社会保険料、会費、保険料、減価償却費、地代、住宅用家賃などが挙げられます。

対象となる事業者

中小事業者の事務負担軽減のため簡易課税制度が設けられている背景があるため、対象となるのは一定の規模までの事業者に限られます。具体的には基準期間(基本的には2年前の課税期間を指します)の課税売上高が税抜きで5,000万円以下である事業者が対象者となります。

簡易課税を選択するには

簡易課税を選択しようとする課税期間開始の日の前日までに所轄税務署に対し「簡易課税制度選択届出書」の提出する必要があります。 ただし一度簡易課税を採用すると2年は継続して簡易課税を採用しなければならないので選択時には注意が必要になります。

簡易課税の適用をやめるためには

簡易課税の適用を受けることをやめようとする課税期間開始の日の前日までに所轄税務署に対し「簡易課税制度選択不適用届出書」の提出する必要があります。

事業区分

第一種事業(みなし仕入れ率90%) 卸売業

第二種事業(みなし仕入れ率80%) 小売業

第三種事業(みなし仕入れ率70%) 農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業

第四種事業(みなし仕入れ率60%) 飲食店業、事業用固定資産の売却 第三種事業から除かれる加工賃等を対価とする役務の提供を行う事業

第五種事業(みなし仕入れ率50%) 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除きます。)

第六種事業(みなし仕入れ率40%) 不動産業

簡易課税のメリット

簡易課税制度のメリットで一番よく言及されるのは、前述のとおり支払った消費税の計算がみなし仕入れ率で行えるため煩雑な計算がない点といえるかと思います。そのため、期中でもおおよその税額を常に把握できるというメリットがあります。

個人事業主や法人の経営者の方の中にはご自分で経理をしている方もいらっしゃると思います。

ただ期中に消費税額を知りたいと思った時、原則課税を採用している場合には今どのくらいの消費税を見込んでおけばよいか知るためには、経費に係る消費税を正確に経理する必要があります。この経理が正確でないと税額の見込みをしておいても期末になったら見当違いだったということにもなりかねません。

それに比べて簡易課税を採用していると売上のみを正確に把握すれば税額予測もできるので比較的容易に消費税の支払いを資金繰りに織り込むことが可能となります。

税額シミュレーションの例

ここでは具体的な計算の例を挙げてご説明します。個人事業で飲食店を営んでいる方で本年1月~8月までの売上が1,520万円(税込)だった場合について考えてみます。

飲食店業は事業区分が第四種に区分されるため、みなし仕入れ率は60%となります。

  • 預かった消費税の計算
  • 15,200,000×8/108=1,125,900円(百円未満切捨)
  • 支払った消費税とみなす額の計算
  • 1,125,900×60%=675,540円
  • 現在までに預かっているとみなす額(8か月間)
  • 1,125,900円△675,540円=450,300円(百円未満切捨)
  • 1か月当たりの消費税額
  • 450,300円÷8か月=56,287円 (約5~6万円)

上記のようにこれだけの計算で現在まで預かっているとみなす消費税が計算できてしまうのです。この要領で1年間の売上が予想できる場合には上記の計算に当てはめれば決算の時に納める消費税が計算することができます。

また、売上予測がつかない場合には8か月分の消費税が450,300円ということで1月当たりの消費税額がだいたい5~6万円という予想ができ、1年間では60~72万円くらい準備しておけばいいのでは、と言った感じで納税の準備ができるようになります。

まとめ

事業を行う方にとっては消費税の支払いは大きなウエイト占める支出になるので決算の時に多額の税額が判明し大慌てなんていうこともあるかと思います。そんなことにならないように簡易課税をうまく利用して、資金繰りの準備をしておけばいざという時に資金繰りに窮することも予防できるのでは。是非中小事業者の方は一度簡易課税の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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