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2016年09月07日(水)

出張が多いなら「出張旅費規程」を作ろう。会社経営のための節税ワザ

経営ハッカー編集部
出張が多いなら「出張旅費規程」を作ろう。会社経営のための節税ワザ

出張

起業して数年経つと、気になるのは税金です。事業も軌道に乗り、経営も安定、でも利益が出ると税金にその分持っていかれます。さまざまな節税策がありますが、リアルにキャッシュが出ていくものがほとんどです。資金繰りにいつも頭を悩ませている経営者にとっては、節税も決断が迫られる負荷が高い項目です。

そこでオススメなのが「出張旅費規程」による節税です。特に、役員や社員の出張が多い会社には「やらないと損」といっていいかもしれません。理由は、出張旅費規程を作ると節税できる以外にもメリットがあるからなのです。

■出張旅費規程ってそもそも何?

会社の役員や社員が出張した場合、通常、出張に伴う交通費や接待交際費、宿泊費などを会社との間で経費精算することになります。出張の都度、細かい経費を精算するのは、精算する個人にとっても会社にとっても面倒なもの。そこで、オススメしたいのが「出張旅費規程」の作成です。

「出張旅費規程」とは、出張に伴う様々な経費の取扱いを定めた条項です。税法上、この規定に従って出張に伴う旅費を定め、それに従って経費精算をすれば、その分経費として落としてよいとされています。

ただし、税法条文に「日当は5,000円まで」「宿泊費は20,000円まで」など、内容や数値に細かいルールがあるわけではありません。社内で妥当額を定めることが可能です。

■出張旅費規程は1度作ると3度オイシイ

先ほど「出張旅費規程を作ると様々なメリットがある」と申し上げました。そのメリットとは次のようなものになります。

メリット1.実際の旅費以上の金額を経費とすることができる メリット2.経費精算がラクになる メリット3.実質所得税のかからない給料がもらえる

それぞれについて解説しましょう。まず、「メリット1.」についてです。出張旅費規程では出張先との距離や地域、出張するメンバーの役職や職位などによって、交通費や宿泊費などの支給する定額を定めます。若干多めに設定すれば、実際の支出額以上の金額を経費とすることが可能になります。

次に、「メリット2.」についてです。出張旅費規程がない場合には、その都度レシートなどで細かい金額を計算し、会社との間で精算しなくてはなりません。場合によっては1円単位の端数が生じることもあるでしょう。これはとても面倒です。

しかし出張旅費規程があれば、規程に定められている金額を出張日数で計算すればよいだけなので、処理の手間が軽減されることになります。

最後に「メリット3.」です。出張旅費規程では、実際に実費が出ていく交通費や宿泊費などのほかに、役員や社員に対して「出張手当(日当)」についても定め、支給金額を決定することができます。

出張手当とは、出張した者が出張のために自腹を切った「会社経費にならない支出」に対する埋め合わせの意味を持ちます。

通常、自宅から遠く離れた場所に出張に行く場合、普段ならかからない飲食代やランドリー代などを支払わなければなりません。それを個人に負担させるのは酷なので、それを補う日当を出張旅費規程で定め、支給してよいことになっています。

これも、出張した者の役職や職位などによって支給額を妥当な金額に定めなくてはなりませんが、あくまで出張経費の一部であるため、所得税や住民税、社会保険料の計算対象とはなりません。さらに、所得税法上も課税仕入として処理することが可能となります。

■出張旅費規程の作成時の注意点

出張旅費規程の内容は会社ごとによって違いますが、一般的に次の手順に従って作成します。

1.出張旅費規程の目的を最初に書く

法律と同様、規程も一つのルールです。そのため、「この規程は、役員及び従業員が業務命令により出張する場合の旅費の支給について定める」と言った具合に「何のためのルールなのか」を明確にします。

2.「誰に出すか」を決める

出張旅費規程は、原則、社員全員が対象となります。この考え方は福利厚生費と同じ考え方です。もしパートやバイトといった正社員以外の人が出張する可能性があるならば、それも明記しておく必要があります。

3.「会社で言う『出張』とは何を指すのか」を明確にする

出張と言っても、会社によって様々です。東京から群馬に行くだけでも出張になる会社もあれば、大阪まで行かなければ出張にならない会社もあります。移動距離で出張にあたるか否かを定めるのが一般的です。

上記に加え、旅費の区分の項目の作成、役職や移動距離による支給金額の設定などが必要となります。

先ほど「出張旅費規程は法律に細かい定めがないので、社内で妥当額を決められる」と書きました。だからといって過度な支給額を設定してはいけません。役員報酬など他の経費と同様、不当に高額な支給は税務当局から指摘を受け、課税されることになります。

そのため、妥当な額はいくらか、普段の出張費はおおよそどれくらいかかるのか、同業他社はどうなのかなど、あらかじめリサーチしておいた方がよいでしょう。

まとめ

出張旅費規程を作ったからと言って、その後はどんぶり勘定で経費精算していいわけではありません。「出張旅費精算書」を作成し、規程にのっとって計算する必要があります。

その点ではやはり手間はかかってしまうのですが、それでもレシートで細かく計算して端数まで精算するよりはまだラクだと言えます。さらに、会社にとって節税になるだけでなく、役員や社員にとってはちょっとした小遣いになると思えば、やはりメリットは大きいです。

節度を持って出張旅費規程を活用することで、会社だけでなく、役員も社員も元気になる事業拡大を目指しましょう。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事。現在、会計や税金、数字に関する話題についてのWeb上の記事執筆を中心に活動している。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。

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