事実に基づいた我が店の強みと弱みを知る ~飲食店の「利益管理指標」とは何か~
「将来は独立して、素敵なレストランを開き、お客様の笑顔がみたい」という夢をお持ちの方も多いのではないでしょうか。大人になったらなりたい職業ランキングでも、依然「食べ物屋さん」は男子7位、女子では1位に入る人気ぶりです(2016年1月公表。第一生命保険)。
しかし、通りを歩いてもお気づきのとおり、オープンさせても短期間で消えていく飲食店が多いのも厳しい現実です。今回は、いつか飲食店開業の夢をかなえたい方も、すでに開業なさっている方も、まずは知っておきたい一般的な飲食店の「利益管理指標」をご紹介します。
現金商売ならではの陥りやすい錯覚
飲食店は多くが現金商売のため、ついつい儲かっている感覚に陥ってしまい、月末の給与や家賃・仕入代金の支払い時に資金繰りで焦ってしまう傾向にあるようです。
利益=売上高-コスト
ですので、売上高だけでなくコストも日々意識することが重要です。売上高とコストに分けて、指標をみてみましょう。
材料費と人件費をできるだけ下げる
FLコスト
売上高に占めるF(FOOD=材料費)、L(LAVOR=人件費)の割合です。規模や業態によって異なりますが、一般的には「売上高に対し60%程度に抑える」ことが一つの目安となります。
なお、材料費には食材ロスも含みます。一皿あたりの材料費を抑えたとしても、廃棄が増えればトータルFLコストは低くならず、お客様の舌も満足させられず更に廃棄が増える…という悪循環に陥りかねません。
また、材料費とともに人件費も飲食業には重くのしかかる経費です。人件費を削減するためには、まずは店舗の忙しい時間・客数がまばらな時間帯を把握し、各時間帯の作業量に応じたスタッフ配置を検討することが必要です。
賃借料
家賃は固定費ですので、FLコストと異なり日々のコスト管理対象ではありません。しかし、一旦契約してしまえば日々の努力でカバー出来ないコストとなることから、自分の店の家賃が立地や売上高等に比較して妥当なのか、大きな目で情報収集することが必要です。一般的には「売上高の10%程度に抑える」と良いでしょう。
その他固定費
固定費とは、売上高に関係なく毎月支出がある経費です。リース料や水道光熱費、通信費、広告宣伝費等が含まれます。売上高-FLコスト-家賃-その他固定費=利益と考えます。一般的に「売上高の20%程度に抑える」ことが目安です。
売上を上げる
利益=売上高-コストと述べたとおり、利益を上げるためには、コストを下げることも大事ですが、何より売上を上げることが最も重要です。
売上は以下の要素に分解して考えることが出来ます。 売上高=(客単価×客数)×営業日数
客数はさらに、客席回転率(1日の客数÷座席数)に分解できます。例えば、25席のお店で1日100人のお客様が来店すれば、客席回転数は100÷25=4回転となります。
客数=客席回転率×座席数
※より詳細には満席率(店内満席だが、4人テーブルに3人客など、満席=満員でないことを考慮する指標)もありますが、今回は紙面の都合上割愛します。
売上を上げるためは、客席回転率、客単価をどう向上させるかを考えていくことが必要です。また、客席回転率は、その日の天気や曜日・時間帯による傾向を分析することで、経営者の予想と異なる事実に気づくこともあります。同様に、客単価も飲料やメニュー毎にデータを集計することで、経営者の勘だけではなく、より現実に基づいた分析を行うことが可能となります。
これらの指標を使いこなすために
これまで述べてきた利益管理指標が、なぜ必要とされているのか-それは、とりもなおさず、これらの指標が経営者の羅針盤となり得るからです。
自分達の提供するサービスが、果たして利益に結びついているのか? お客様のニーズと合致しているのか? 価格は妥当なのか? どんなに経営者の思い描いたとおりの店構えやサービスを提供していたとしても、利益を生まなければ、最終的にはお店を続けていくことが不可能になります。
これらの指標を使いこなすことで、経営者の勘だけでなく、『事実に基づいた我が店の強みと弱み』を知り、より的確な改善アイデアを考える助けになります。
なお、よりスピーディーに利益管理指標の元となるデータ(売上高、仕入、経費、客数他)を把握することで、課題にタイムリーに手を打つことができます。クラウド会計のfreeeやPOSレジアプリのAirレジ、クレジットカード決済システムのSquare等、大規模な設備投資をしなくても効率的にデータを収集出来るものもありますので、ご参考ください。