経営ハッカー | 「経営 × テクノロジー」の最先端を切り拓くメディア
2016年11月14日(月)

【消費税還付を受けるために】 輸出代行業者を利用する場合の税務上の論点

経営ハッカー編集部
【消費税還付を受けるために】 輸出代行業者を利用する場合の税務上の論点

pixta_25823790_s 海外に商品を輸出する場合、個人で配送業者(日本郵便、FEDEX、UPS、DHL等)と契約して配送するよりも、輸出代行業者を利用する方が、料金が安く済むケースがあります。これは輸出代行業者が配送業者(日本郵便、FEDEX、UPS、DHL等)と大口契約を締結し、配送料金の割引を受けているためです。

特に新規セラーの場合、配送業者と個別に大口契約を締結するのはほぼ不可能なため、配送料金の差で、他のライバルセラーに負けるケースも珍しくありません。

このように薄利多売のビジネスにおいて、主要なコストの「送料」を削減するために、輸出代行業者を利用されている方が多数います。しかし、輸出代行業者を利用する場合には、非常に重要な税務上の論点があります。こちらの対応を誤ると、消費税の還付を受けられなくなる可能性がありますので、十分な注意が必要です。

輸出代行業者を利用する場合の税務上の論点についてご説明します。

消費税還付を受けるには「輸出の事実を証明する書類」の保管が必須!

消費税法では、消費税還付を受けるための要件として、輸出の事実を証明する書類の保管を求めており、具体的には以下の書類を保管する事が定められています。

  • 原則
    • 輸出許可書(通知書)の保管
    • 20万円以下
      • 税関への申告が不要ですので、「輸出の事実を記載した帳簿」の保存
        • 年月日
        • 販売先の氏名又は名称
        • 商品名、商品毎の数量及び価額
        • 資産の譲渡等の対価の額(税込み)
    • 20万円超
      • 輸出許可書(通知書)の保管

このように、消費税法では輸出の事実を証明する書類として、原則、海外に商品を輸出する際の通関書類である「輸出許可通知書」の保管を求めています。

ただし、日本郵便を利用して海外に商品を発送する場合は、発送する商品の金額が20万円超若しくは20万円以下かにより、通関時に入手できる書類が変わるため、税務上の対応についても金額により以下のように分類されます。

<20万円を超える物品を郵便物として郵送した場合>

税関への申告を行なう義務があります。具体的には、郵便物を郵便局に差し出す前に、最寄りの税関官署又は税関外郵出張所に、インボイス(送り状)1通と「郵便物輸出証明申請書」2通を提出し、輸出証明書の交付を受ける必要があります。その際に提出し承認を得た書類を「輸出を証明する書類」として保存することとなります。

<20万円以下の物品を郵便物として郵送する場合>

税関への申告が不要ですので、「輸出の事実を記載した帳簿」の保存のみでかまいません。

なお、そもそも海外に商品を発送するにあたって、事前に輸出許可が必要な物品があります。このような物品については、その際に入手した「輸出許可証」が輸出を証明する書類となりますので、忘れずに保管するようにしましょう。

輸出許可通知書の記載内容が重要!

個人で配送業者(日本郵便、FEDEX、UPS、DHL等)と契約し商品を発送する場合は、入手した輸出許可通知書に記載されている「輸出者」の名義人と実際の輸出者は必ず一致します。

しかし、輸出代行業者を利用して商品を海外に配送する場合は、輸出許可通知書に記載されている名義人が輸出代行業者となり、実際の輸出者と輸出名義人が相違する事になります。この場合、税務上は、「輸出名義人=輸出者」と見做しますので、「輸出を行ったのは輸出代行業者である」と認定されてしまい、実際の輸出者は消費税の還付を受ける事が出来ません。

そればかりか、実際の輸出者は商品を輸出代行業者に販売(国内販売)したものと見做されますので、実際の輸出者は売上額の8%分の消費税額から仕入・経費の消費税額を控除した金額を税務署に納税する義務が生じます。

このように、実際の輸出者と輸出名義人が相違する場合、税務上の対応を誤ると、消費税の還付が受けられないばかりか、国内販売と見做されてしまい消費税の納税となりますので、十分な注意が必要です。

ここまでで、輸出代行業者を利用する場合のリスクについてご理解頂けたかと思います。

輸出代行業者を利用する場合は「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」が必要!

さて、実際の輸出者と輸出名義人が相違する場合、税務上は、以下の手続きを踏む事で、実際の輸出者が消費税還付を受ける事が可能となります。

<実際の輸出者>
  1. 輸出許可通知書の原本を輸出代行業者より入手する。
  2. 「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」を作成し、輸出代行業者へ送付する。
  3. 輸出代行業者に対して、消費税還付を受けるのは「実際の輸出者」である旨を指導する
<輸出代行業者(輸出名義人)>
  1. 実際の輸出者より入手した「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」を確定申告時に税務署に提出する。

消費税輸出免税不適用連絡一覧表はこちら

「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」の提出がキーワードです。「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」とは、実際の輸出者が自分である事を主張するための書類です。本件書類を輸出代行業者に提出する事により、消費税還付を受ける事が可能になります。

輸出代行業者を利用している方は、必ず「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」を提出し、自分が「実際の輸出者」である事を書面で残すようにして下さい。

輸出代行業者は慎重に選ぶべし!

 消費税輸出免税不適用連絡一覧表を作成するには、輸出許可通知書の原本を輸出代行業者から入手する必要があります。しかし、越境EC市場で展開している輸出代行業者の多くは、こちらから依頼をしないと輸出許可通知書の原本を送付してくれません。そればかりか、依頼をしても入手までに相当期間を要するケースや、誤った輸出許可通知書を渡されるケースもあります。

したがって、輸出代行業者を利用される場合は、事前に「輸出許可通知書の原本」の入手方法と「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」の提出について質問し、適切な回答を得られるかを確認しておきましょう。(理想をいえば、本記事の内容をホームページ内で謳っている業者が良いでしょう。)

なお、筆者の主観では、株式会社グローバルブランドグループの株式会社サンタリタのTRANSFERサービスであれば、定期的に輸出許可通知書の原本を送付してもらえますので、依頼漏れ等のリスクもなく輸出者にとって利用しやすいサービスだと感じております。(運営会社の代表者は、商社の勤務経験があり、また4年間の海外駐在経験がある事から、海外へ商品を輸出する際の留意点を熟知しており、高品質な輸出代行サービスを提供しています。)

越境ECビジネスにとって、消費税還付を受ける事は必須ですので、輸出代行業者を利用される場合には、質的に信頼のおける業者と契約できるように、事前に十分な調査をされる事をおすすめ致します。

弊事務所は、Amazon、e-bay等のマーケットプレイスを利用した越境ECに特化した税務サービスを提供しております。その他に、輸入仕入による国内販売、店舗仕入によるせどり等のビジネスモデルについてもサービスを提供しております。 弊事務所の代表者は、FEDEX様/ペイオニア様/グローバルブランド様が主催する越境ECセミナーの講師役として登壇しており、日本国内の税務だけでなく、国際税務、特に欧州付加価値税に精通しております。 越境ECは、様々な国の税法が複雑に絡み合うビジネスであるため、日本国内の税務知識だけでは到底対応できません。また、世界各国で越境ECに関する税法の見直しが進んでおり、税務リスクは日々増加しております。本格的に越境ECビジネスを展開されている方は、是非、一度、弊事務所にご相談ください。 (お問い合わせの際は、弊社メールアドレス宛にご一報ください。)

人事労務freee

この記事の関連キーワード

関連する事例記事

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    経理・財務2022年02月28日経営ハッカー編集部

    決算開示の「45日ルール」を解説

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    経理・財務2020年11月26日経営ハッカー編集部

    経費精算や稟議機能の活用法が満載!ユーザーイベント「f-1グランプリ」開催レポ

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    経理・財務2020年06月27日経営ハッカー編集部

    固定資産の修繕費と資本的支出の違いと見分け方をわかりやすく解説

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    経理・財務2020年06月26日経営ハッカー編集部

    扶養手当と扶養控除の違いとは?2つの制度の違いを解説

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    経理・財務2020年06月26日経営ハッカー編集部

    損金って何? 損金に算入されるとかされないってよくいうけど? 

関連記事一覧