社内で行う業務改善の具体的方法 ~提案編~
業務改善の提案書の書き方
業務改善に実際に取り組むためには、草案や骨子が必要になりますが、これらを作るためには、もとになる問題点に着目しなければなりません。
問題点は各部署、ポジション、現場によって多種多様であり、その場で実際に動いている人でなければ実感を伴わないものですから、必ず全社員から直接改善提案をもらい受けるようにします。 これは、いわゆる「ヒアリング」というもので、問題に関わる人が「不便と感じていること」、「時間がかかっていること」、「スムーズではないこと」などをどんどん吸い上げていくのです。
健全な企業経営のためには、小さな問題点であっても見逃せば致命的になることもありますので、全社員に対して「改善提案書」の提出を義務化することが重要です。 改善提案書には、問題点の指摘と同時に「なぜ問題が起こるのか」、「具体的に何をすれば解決できそうなのか」を記載してもらうようにします。
改善提案書の記載事項
例えば以下のような項目に沿って問題を裏付け、客観的かつ具体的な解決策を提案してもらうことが効果的です。
問題点の指摘
問題の指摘・問題が起こる時の条件・問題によって被る損害
問題改善のための具体案
問題が起こる時の条件を排除するための具体的行動提案・提案を実行した時に予想される具体的な変化
問題改善にかかる労力とコスト
改善行動に必要な人員・時間・コスト・準備
改善スケジュールと障害の可能性
通常業務を遂行しながら改善スケジュールを同時進行させるための予定表・予定を阻む可能性のある事柄の申告
これらの項目は実際に取り組む順に配置し、提案書を読む人が時系列で具体的にイメージできるよう配慮することが肝要です。
改善提案書作成例
【○○改善に関する提案書】
- 日付
- 部署
- 作成者氏名
- 現在直面している問題点
-
現在部署で直面している問題点を具体的に記載する。問題が起こる時の条件や実際の不便について根拠を挙げて説明する。
例)サービス内容が販売当初から改善されておらず、他社商品との比較検討から漏れやすい。
- 問題改善の具体的提案
-
問題解決のための具体的な行動提案を記載する。
例)顧客が商品に求めている機能を徹底的にヒアリングし、ERP導入により即座に全社共有。各部署に把握してもらい、問題改善までのスピードを上げる。
- 提案採用によるメリット
-
提案が採用された場合にもたらされる具体的な利点を説明する。
例)ERP導入により営業部門及びカスタマーサービス部門に直接寄せられた「お客様の声」を全社員が常時確認し、週一回の定例ミーティングによりディスカッションを行う。ミーティングはシステムを活用し全国支社の代表が参加する。
- スケジュール・コスト・障害
-
提案が採用された場合の実施スケジュール、コスト、実施を阻む可能性のある事柄について説明する。
例)平成30年2月1日より2カ月の予定で研修開始。4月1日よりERP導入。 初期費用・ライセンス購入・月額費用を合わせた導入コスト約80万円。 業務改善達成のためには、全社員がシステムを運用できることが前提なので、徹底的な研修を行うことが求められる。
改善案の見つけ方
小さな問題点であっても見逃さず、全社員でできるだけ頻繁に共有することが大切です。
差し障りのない事柄は比較的誰でも指摘できますが、耳あたりの良くない事柄がむしろ重要です。これらも歓迎して意見聴取していき、問題の内容に関わらず必ず具体的解決策とセットで申告してもらうようにしましょう。
例えば「書類作成作業に大幅に時間を取られている」という問題提起には、人員を増やすべきなのか、ERPなどで効率化をはかるのか、具体的な解決策を添えるのです。
日々の業務を行いながら、「手間だと感じること」、「お客様をお待たせしていると感じていること」、「お客様の商品選択肢から外れていると感じたこと」など、常にアンテナを立て、気づいたことをその都度記録していくことが、大小を問わず問題を発見していく唯一最大のヒントとなります。
提出自体のルーティン化
問題発見と改善提案はルーティン化させ、定期的に社員の声を拾い上げるように努めます。毎日書いている業務日誌にそれらの問題を記載し、定期的に社内ミーティングで報告するのもいいですし、クラウドシステムを活用すれば各社員の日々のレポートを瞬時に全社で把握することも可能です。
社員に多少の義務感が芽生えても問題はなく、継続していくうちに完全な習慣として根付いていきます。習慣として当たり前に問題発見ができ、それに伴う改善提案ができるようになると、社内の見えにくかった情報がだんだん顕在化し、循環するので、全社を挙げた意識共有が可能になってくるのです。
他部署の実例
これまでやってきたように、各部署に改善案の提出を課しているうちに、部署によっては実現化されるものが出てきます。
最初の改善提案に関して、シンプルだったのか複雑だったのか、なぜ皆の関心を集めたのか、改善提案書の記載事項に特徴はあるのかなど、未採用の提案書と比較してみると実現のポイントが非常にわかりやすくなります。
このように、他部署の成功事例は社内で大きなモチベーション材料となり、問題解決と改善の具体的サンプルを提示してくれることになります。
業務改善を失敗なく進めるために
先ほど述べた全社員に課すべきである業務改善提案ルーティンですが、成果を上げるコツは「一度に大きな変化を狙わない」ことにあります。
大きな変化を起こすためには多大な思考と労力、コストが必要になります。また、あまりにも目標が大きすぎると実現の可能性すら疑わしく思われるため、モチベーションの維持が難しい状態になります。
そのため、問題はできるだけ細分化してひとつひとつを確実に改善できるような提案を行い実行していくことが大切です。
小さな問題点をクリアした成功体験から、次の問題を克服するための具体的な策と勇気が湧き、この改善サイクルを何度も繰り返すことによって着実に会社の問題点を解決していくことができるからです。
まとめ
社員が常に「問題を発見しよう」、「発見したら報告しよう」という意識を持っていれば、会社は都度修正を加えながら健康的に発展していくことができます。
大きな組織であればあるほど小さな歪みが多大な損失に直結するので、一つのテンプレートを作って常に全社員に問題発見意識を与えておき、発見した事柄はERPなどのシステムを利用して迅速に全社で共有することによって、常に具体的な話し合いと実行をはかることが肝心です。