2019年09月25日(水)0ブックマーク

IFRS(国際財務報告基準)とは?グローバル戦略で適用するメリット・デメリット

経営ハッカー編集部
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近年、国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)を採用する上場会社が増えています。ソフトバンク、LINE、スシロー、コメダなど、先進的にグローバル会計基準を採用して新規上場するなど、日本もIFRS基準の適用に向けて議論が進められています。今後、日本でもスタンダードになることが想定される、IFRSと日本の会計基準の違い、導入のメリット・デメリット、導入時の注意点などを徹底解説します。

目次

    IFRSとは?

    IFRSの定義

    IFRSとは、International Financial Reporting Standardsの略で、国際財務報告基準のこと。会計基準の国際的な共通ルールです。日本の上場会社等は日本基準の適用が原則ですが、IFRS基準を適用することも認められています。IFRAは、イファース、アイエフアールエスなどの呼び方があります。IFRSを策定している国際会計基準審議会(ISAB)ではイファースと呼んでいるようです。

    日本でのIFRSの適用企業

    日本でも2010年から任意でIFRSを適用することが可能となり、日本の上場企業でIFRSを適用している会社は198社、今後、IFRSを適用することを決定している会社は16社です。

    具体的には、IFRSを適用して新規上場した会社は、ソフトバンク、LINE、マクロミル、MS&Consulting、すかいらーく、スシロー、コメダなど19社です。今後適用を予定している企業は、日本航空、スバル、IDEC、東レ、良品計画など16社が公表されています(2019年7月現在)。

    (参考)日本取引所グループ上場会社情報(IFRS任意適用・任意適用予定会社一覧)より

    適用国

    IFRSを義務付け(強制適用)している国と地域は138法域、自国基準は米国、中国など7法域で、日本は強制適用ではなく、任意適用を採用しています。

    出典:金融庁「会計基準の品質向上に向けた取り組み」平成30年7月5日(木)より https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20180705/4.pdf

    日本における適用の経緯

    当初は、2007年に日本の企業会計基準委員会が、IFRSの会計基準とのコンバージェンス(自国の会計基準をIFRSに近づけること)が決定されました。2015年から自国の会計基準として採用(強制適用)する方針でしたが、東日本大震災等の影響もあり、強制適用は見送られました。

    その後、2018年7月に金融庁が発表した報告書「会計基準の品質向上に向けた取組み」によると、「関係機関等と連携し、国際会計基準(IFRS)への移行を容易にするための更なる取組を進めることによりIFRSの任意適用企業の拡大を促進する」という方針が発表されています。現在、日本の会計基準を国際基準に移行しやすいように順次改定が進められ、一部IFRSの基準を準用するなどの取り組みが進められています。2019年1月にはリース会計においてIFRS基準が適用されました。

    一方で、日本の会計基準の考え方を国際会計基準審議会に意見として提出するなど国際基準と日本基準の違いの歩み寄りも進められています。2019年7月22日の国際会計基準審議会の審議会で、これらの議論の状況を今後ディスカッションペーパー(検討状況を論文等の形式で発表すること)として公開していくことが決定されるなど、IFRSの強制適用の議論が再び活発化する可能性が想定されます。

    IFRSの特徴と日本基準との違い

    IFRSは、以下の5つの特徴、日本基準との違いがあります。

    ①開示基準であること

    IFRSは、国際財務報告基準という名称の通り、情報開示のための基準です。多くの投資家がまず知りたいのは、企業にどれだけの価値があるか(資産価値)、どのような経営をしているか(経営方針)などの情報です。一方で、日本の会計基準は、詳細な会計処理のための決まりごとを示しているものですので、そもそも考え方が異なります。

    ②原則主義であること

    原則主義とは、大まかな原則や解釈指針を示すものです。細かい会計処理のルールや数値基準の定めはありません。そのため、解釈や運用の自由度は高まりますが、独自の会計処理ルールを定める必要がありますので、IFRS基準と解釈が異なる場合などは、その根拠を注記として大量の記載が必要になります。日本の会計基準は細則主義と言われ、会計処理の基準や解釈や実務指針などが、細かく規定されています。

    ③貸借対照表重視であること

    IFRSでは、企業の資産価値を評価する情報として貸借対照表(B/S)を重視しています。日本では当該事業年度の損益を重視する損益計算書重視の考え方です。

    ④グローバル基準であること

    各国の独自性(税制の違いなど)は考慮せず、英語を共通言語としています。日本では財務会計基準機構、日本公認会計士協会などが日本語で情報を発信しています。

    (参考)

    公益財団法人財務会計基準機構 IASBのプレスリリース等

    日本公認会計士協会 IFRSに関するお知らせ

    ⑤ムービングターゲット(常に変化するもの)であること

    随時改訂が行われることが前提のため、時代の変化に応じて新たな基準に対応していく必要があります。たとえば、2018年には、M&A(企業買収)を巡る会計処理の見直しに着手し、2019年度中に「のれんと減損」に関する新たな検討資料が公表されて議論が活発化することが想定されます。また、2019年1月にリースの基準の改定があり、これまでオフバランス(貸借対照表に掲載しない)としてきた一部のリース資産をオンバランス(貸借対照表に掲載する)にすることが義務付けされるなど、会計基準に適応していくために、常時フォローアップが必要となります。

    ⑥科目別の相違があること

    上記のように、IFRSと日本基準は考え方の違いはありますが、その差は順次調整が進められています。しかしながら、たとえば、「のれん」は、日本では20年以内の期間で均等償却しますが、IFRSは定期償却せずに毎年実際の資産価値がどの程度変化しているかを再評価し、価値が大幅に低下していれば減損処理するという方式が採用されています。また、開発費は、日本では発生時の費用計上ですが、IFRSでは資産計上するなど、このように実際の会計処理をする際のルールが異なりますので、グローバル展開により海外子会社を設立したりIFRSを任意適用する場合は注意が必要です。

    IFRS対応の必要性

    これまで述べてきたように、IFRSが世界の会計基準になりつつあります。これまで会計制度は国ごとに異なるのが当たり前でしたが(米国や中国は現在の独自基準ですが)、近年のグローバル化の急速な進展から、世界中の企業や自社の海外事業の実態を正確に把握したり、海外からの投資を呼び込むためにも世界共通のモノサシが必要になってきました。今後、順次、日本基準とIFRS基準の差がなくなり、日本企業のIFRSへの任意適⽤が拡⼤していくことが想定されますので、日本基準と国際基準の違いを十分理解したうえで、今後の強制適⽤に備えておくことが必要となります。

    IFRS導入のメリット・デメリット

    ここであらためてIFRS適用のメリット・デメリットを整理してみましょう。

    メリット①グローバルマネーの呼び込みが期待できる

    海外投資家に自社のIR説明がしやすくなります。会計基準が統一されれば、日本の会計基準との違いを説明する必要がなくなりますので、投資家の投資判断がしやすくなります。

    メリット②効率的な投資判断ができる

    海外で展開する事業や海外子会社が多い場合でも、会計基準をIFRSに統一することで、会社間の財務指標の連動が可能となるので自社の実態が把握しやすくなり、事業への投資判断がしやすくなります。

    メリット③連結財務諸表作成の効率化が図れる

    海外で展開する事業、海外子会社が多い場合、これまで国ごとに異なる会計基準で財務諸表や帳簿を作成する必要がありましたが、IFRSを適用すると各国共通の指標で作成できますので、作成が効率化されます。

    メリット④企業価値の適切な反映ができる

    IFRSには、のれんや収益の考え方など、日本の会計基準より自社の実態を適切に反映できる場合があります。

    メリット⑤経営者が自社の経営方針を語りやすくなる

    IFRSは、原則主義であり、企業価値を重視した情報開示の基準です。そのため、経営者が、自社の会計の考え方ではなく、自社の企業価値を高めるための考え方、戦略や事業展開などを中心に自分の言葉で話しやすくなるという効果も期待できます。


    一方で、IFRSを導入する場合、たとえば以下のようなデメリットがあります。

    デメリット①事務負担の増加

    日本国内では現在は日本基準の適用が原則ですので、任意適用をしても日本版とIFRS版の複数の帳簿が必要になります。また、IFRSでは注記の記載が増大しますので、専門家へのアウトソーシングなども含めて検討する必要があります。

    デメリット②コスト増加の可能性

    IFRSを新たに適用するためには、追加的な監査、アドバイザリーフィーや、システム対応などが必要です。上場準備をするには、こうした点を踏まえた監査法人の選定や、会計システムの検討が必要です。

    デメリット③制度変更を前提とした対応が必要

    前述のようにIFRSはムービングターゲット方式ですので、適宜、社会情勢等により基準の見直しが行われます。会計基準が時代にあった内容にアップデートされると、自社の会計方針もIFRSに合わせて変更が必要となり、自社にどのような影響が出るかを検討する必要があります。これまで以上に、最新情報の収集と対応が必要となりますので、会計システムの開発や導入にあたっては、常時アップデートが可能なツールを選定する必要があります。

    デメリット④細かな会計基準が異なるため、なじませるための移行期間が必要

    上記のように日本基準とIFRSの基準が異なる部分があるため、日本でも基準をIFRSの国際基準にあわせていく取り組みが進められています。日本では強制適用までの移行期間として5~7年は必要との意見があります。

    IFRS導入の際に注意すべきポイント

    これまで述べてきたように、IFRS基準は、世界共通のモノサシとして普及が進む一方で、IFRSの基準は常に追加、改訂されるなどの変化があります。日本の考え方がIFRSで採用、考慮される場合もありますが、自社にとって有利でない改訂が行われる場合もあります。

    たとえば、2019年1月にはリースの新基準が適用され、これまでのリース会計基準よりも対象範囲が拡大し、オフバランス化できていたものが資産計上が必要になるなど、多くの企業に影響のある基準変更となりました。

    国際会計基準審議会と日本の考え方が異なる「のれんの償却」については、M&Aの会計基準の見直しが行われることとなり、日本の意見を国際会計基準審議会に提出するなど国際基準と日本基準の融合も進められています。これらの議論の状況を、2019年7月22日の国際会計審議会で、ディスカッションペーパー(検討の途中経過を論文形式で公表して議論のスピードを速めるもの)として公開していくことが決定されました。2022年には新たな基準であるIFRS17「保険契約」の適用も予定されています。

    このように、自社に関係する会計基準も改定されていく可能性があり、常時フォローアップが必要となります。

    まとめ

    グローバル化、テクノロジーの進化、少子高齢化社会で労働力人口が減少する中、日本企業は転換期を迎えています。会計基準に大幅な変更が伴う場合、企業にとって大きなターニングポイントになります。会計基準の変更を如何に戦略的に活用するかという視点も必要になります。企業の経理部門も、今後のIFRS基準への準拠への対応、制度変更へのスピーディな対応、ITによる業務プロセスの変革など、変化への柔軟な対応力が求められていると言えるでしょう。

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