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2016年10月25日(火)

攻めの経営における経営者報酬の考え方

経営ハッカー編集部
攻めの経営における経営者報酬の考え方

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攻めの経営戦略にマッチした経営者報酬の戦略を考えましょう

スタート時は役員1人でスタートした会社も、成長に応じて経営を支える経営幹部は増えてきます。また、競争はますます激化し、経営戦略はよりアグレッシブな攻めの戦略が求められます。攻めの戦略を達成するためには、経営幹部が一丸となって、戦略に合致した行動をとることが必要です。

そのためには、経営トップの想いをいかに経営幹部に理解してもらうかが最も重要ですが、より戦略達成の確実性を高めるためには、経営幹部の実入り(すなわち報酬設計)を経営戦略と同じ方向に向けることも重要です。

経営者報酬に関しては、最近は「譲渡制限付株式」が報酬として制度化されたことに伴い注目されていますが、本来は株式報酬だけではなく、固定給や賞与も含めた総合パッケージとして検討するものです。上場企業だけではなく、未上場の中小企業においてもとても重要なテーマです。

そこで、本稿では、経営戦略と一致した経営者報酬を設計するうえでの考え方と設計のポイントについて考えてみたいと思います。

「従業員給与と経営者報酬は別物」と考えましょう

従業員給与と経営者報酬の区別は、経営者報酬を考える上での重要なポイントです。従業員給与は、従業員の安定的な生活基盤の維持ということを主眼とした設計を考えるべきですが、経営者報酬は、安定的な生活基盤の維持以上に、経営戦略達成をコミットした仕組みとすることが重要です。

例えば、赤字決算となってしまった場合、従業員については、通常、安定的な生活基盤の維持という観点からある程度の賞与支給は行いますが、経営者報酬については、賞与ゼロとなる仕組みも当然あり得ます。

また、損益に与えるインパクトの点では、従業員給与は人数が多いが故に損益に与えるインパクトが大きいため、損益に与える影響を慎重に考える必要があります。しかし、経営者の人数は少ないため、経営者報酬が損益に与えるインパクトは従業員給与よりも少なく、損益に与えるインパクトよりも、経営戦略達成に貢献する制度設計になっているかどうかの視点を重視します。

経営者報酬の「対象」を確認しましょう

経営者報酬の対象は経営幹部です。具体的には取締役および監査役といった役員及び執行役員等が対象となります。

経営者報酬の「構成要素」を確認しましょう

経営者報酬は、固定報酬、短期インセンティブ、長期インセンティブ、退職金の4つの要素に分割することができます。

  1. 固定報酬:業績にかかわりなく固定的に支給される報酬です。月給とほぼ同義です。
  2. 短期インセンティブ:1年間の業績で支給額が決定する報酬です。いわゆるボーナスです。
  3. 長期インセンティブ:複数年の業績で支給額が決定する報酬です。代表的なのは株価で支給額が決定するストックオプションですが、複数年の業績で支給額を決定するボーナスも長期インセンティブに含まれます。
  4. 退職金:退職時に支給する報酬です。業績向上に貢献しない報酬であるとして、上場企業では廃止する企業が多いですが、パフォーマンスがあげられない経営者の新陳代謝を効率的に行うため、手切れ金として活用するケースもあります。

経営者報酬は上記の4つパーツがあり、経営戦略に応じて、構成内容を調整します。

報酬設計のプロセス

<報酬コンセプトの立案>

経営者報酬の最初のステップは、制度骨格としての報酬コンセプトの立案を行います。具体的には、支給対象者ごとの総支給額とその内訳として上記の報酬の各構成要素をどのような割合とするかを決定します。報酬コンセプトの設計では経営戦略と一致させることがポイントです。

例えば、経営戦略において単年度ごとの業績を重視しているのであれば、経営者報酬は単年度インセンティブを重視した設計にするという形になります。固定報酬の割合が大きく、単年度インセンティブの割合が小さい設計だと、経営戦略と整合しているとはいえません。

<インセンティブ制度の詳細設計>

報酬コンセプトが決定したあとは、各インセンティブ制度の詳細設計を行います。中小企業の場合、ボーナス設計がメインとなりますが、基本的な設計はターゲットとする業績指標の決定、目標業績とそれを達成したときのボーナス支給額の計算式への落とし込みを行います。

経営者報酬を設計するうえでのポイント

経営者報酬を検討するうえでのポイントは下記の3点です。

  1. シンプルな仕組みであること
  2. 事前にコミットする仕組みであること
  3. 頻繁な変更を必要としない内容であること
<シンプルな仕組みになっているか>

経営者報酬のシンプルな仕組みであることが重要です。具体的には、貰い手自身がどの程度頑張ったらいくらもらえるか計算できる程度のシンプルさが最低限必要です。経営者報酬の設計において、複雑な経営指標を織り交ぜているケースがありますが、貰い手側がしっかり理解できる仕組みでないと絵に描いた餅になってしまい、経営戦略達成という目的に貢献しない制度になってしましまう場合もあります。

<事前にコミットする仕組みであること>

インセンティブ設計で特に重視するポイントですが、どの程度の業績を達成したらいくら貰えるかが明確に仕組み化され、貰い手と共有していることが必要です。今期は儲かったからボーナスはたくさん出るだろうではなく、今期の業績がこの程度で、自分の担当領域の業績がこの程度だったら、支給額は◯万円となるといった形で、業績と支給額の関係が明確になっていることが必要です。

<頻繁な変更を必要としない内容であること>

経営者報酬を検討する際によくある失敗ケースですが、小さな修正を繰り返して制度設計を行おうとすると、統一感の無い制度になってしまい、結果的にうまく機能しなかったという場合があります。経営者報酬の設計は細かい修正を繰り返すのではなく、一気に制度を変更したほうが、上手くいくケースが多いです。

節税よりもコンセプト

経営者報酬のうち、役員に対する報酬は役員給与税制対象となるため、報酬が税務上の費用となるかは重要なポイントですが、税金に与えるインパクトが許容できる範囲でしたら、まずはどのような仕組みが自社の経営者報酬として望ましいか、そのコンセプト作りを優先し、そのコンセプトの範囲において役員給与として税務上の費用とすることができるかどうかを検討すると良い制度ができると思います。

中小企業における経営者報酬設計の考え方

スタートアップの時期は、経営幹部は経営者の人柄や理念に惚れ込んでいるという場合が多く、報酬設計について細かく考える必要は無いと思います。しかし、企業が成長し創業メンバー以外の者も経営幹部になるようになると、経営者の想いだけではなく、経営幹部が経営戦略達成に向けて行動するように仕向ける仕組みを考える必要があります。経営者報酬はその仕組みの1つです。

特にオーナー企業の場合、経営者報酬は社長のためではなく、オーナーでは無い経営幹部が気持ちよく働いてもらうための仕組みとして考える視点も重要です。まずは自社の経営戦略を今一度確認して、目標達成にむけて経営幹部が気持ちよく働けるにはどのような制度が望ましいかじっくり考えてみましょう。

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