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[速報]そのハンコ、本当に必要?政府発表押印Q&Aの気になる中身

経営ハッカー編集部
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本日(2020年6月19日)、内閣府・法務省・経済産業省の三省合同で「押印についてのQ&A」と題する文書が発表されました。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業がリモートワークへのシフトを進める中、契約書等への押印のために出社する「ハンコ出社」が社会問題として注目されたこともあり、政府内では4月頃から規制改革推進会議を中心に、規制や慣習によって要求されてきた押印がどこまで必要かの議論が活発になっていました。今回の文書は、その最初のアウトプットとして位置づけられるものです。それでは、早速中身をみてみましょう。

目次

    そもそも押印は契約成立の要件ではない

    最初のQ&Aで、そもそも契約は当事者同士の合意があれば成立するものであって、押印がなくとも成立する、ということが宣言されています。ハンコ文化に慣れている私たちは、つい押印がないと契約が成立しないような錯覚に陥ってしまいますが、日本では、法令で定められた例外を除き、契約は当事者の合意があれば成立します。これを諾成(だくせい)主義の原則といいますが、Q&Aではこのことを改めて確認しています。
    そもそも、契約書を作る目的は、後になって当事者間で揉めた際に契約当時の合意内容を証拠として残しておくことが主なものです。では、そこに押されるハンコの意味は(押印がなくとも契約が成立するなら)一体何なのでしょうか。

    押印の意味って何?

    続くQ&Aでは、やや難解になってきますが、押印が民事裁判でどのような役割を持つのかを説明しています。
    もしあなたが、民事裁判で何かしらの契約に関するトラブルについて争っているとして、証拠として契約書を示したとします。このとき、契約書に先方の印鑑の印影があれば、

    1. 文書に本人の印鑑による押印があれば、本人の意思にもとづいて押印されたものであり、
    2. 本人の押印があるならば、その文書が本人の意思に基づいて作成された(文書の真正の成立)

    と推定されます。これがいわゆる「二段の推定」と呼ばれるもので、この契約書の内容が先方の意志の正しい現れ(真正)だと、ひとまずは「推定」されるのです。そもそも、裁判で文書の成立自体が争点になることが多いわけではありませんが、押印の意味はここにあります。
    続くQ&Aには、この裁判上の押印の証拠力が、限定的であることが語られています。

    押印の限界

    例えば、先方が「その印影は当社のハンコのものではない」と主張してきたとしましょう。印鑑が単なる角印(印鑑登録のある実印ではない、会社の認印)だった場合は、印鑑証明書での立証も出来ませんから、再反論は容易ではないでしょう。
    また、「そのハンコは当社のものだが、盗用されてしまったものだ」、「当社のハンコを確かに押したが、押印後に新しい文章が挿入されてしまい意味が変わってしまったのだ」といった争いもあり得るでしょう。つまり、あくまで推定は推定であり、反論により崩れうるものなのです。
    Q&Aでは、こうした押印の限界とともに、そもそも裁判における立証の仕方は色々あるので、普段の商取引において押印に無闇にこだわることはない、とかなり踏み込んだ趣旨が述べられています。特に、認印・角印の意味については、印鑑証明がないことや、技術の進歩に伴い偽造が容易になってきていることなど、強く疑義が指摘されているといっていいでしょう。

    メール履歴がちゃんとあれば十分

    では、押印以外の方法で商取引の証拠を残すことは出来るのでしょうか。それについても、このQ&Aでは踏み込んだ記載があります。
    具体的な手段としてはいわゆる電子署名等もあげられていますが、特に注目するべきは電子メールの履歴です。商取引においては、契約書だけが突然発生するわけではなく、当然その前後の流れがあります。前後の文脈がメールのやり取りの履歴から読み取れれば、点ではなく線で、契約の内容を証拠として残すことができるでしょう。
    この内容は、特別に難しいこと、コストがかかることをしなくとも、既にビジネスシーンで日常的に行われている方法で、ちゃんと証拠力を持たせることが出来るという、極めて実務的なものです。また、メールの宛先を担当以外の複数名のCCにすることや添付PDFも一緒に保存することなど、明日からも簡単に実行可能で、かつ合理的に証拠力を強化できる方法も示されています。

    リモートワークがしやすい社会は実現できるか?

    freee株式会社が実施したアンケート調査によると、リモートワークをしづらい要因として、紙のやり取りや押印作業があげられています。

    (備考)freee株式会社「テレワークに関するアンケート調査」により作成。
2020年4月13日、1~300名規模のスモールビジネス従事者1146人を対
象に実施。回答数は316、複数回答。(備考)freee株式会社「テレワークに関するアンケート調査」により作成。 2020年4月13日、1~300名規模のスモールビジネス従事者1146人を対 象に実施。回答数は316、複数回答。 (引用)経済財政諮問会議 内閣府 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0529/shiryo_02-2.pdf

    最後に

    今回のQ&Aは、リモートワークのハードルになってしまっているとわかっていても、長年の商習慣から続けざるを得なかった押印という行為を見直すきっかけとして、十分以上の示唆があるものだと感じられる内容でした。これを機に、まず身近な社内の慣習を一つずつ変えていってみはいかがでしょうか。

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