2020年02月28日(金)4ブックマーク

99%の行政手続がデジタル完結するエストニア。日本が学ぶべきポイントとは?

経営ハッカー編集部
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左からfreee株式会社 プロダクトマネージャー 高木悟、Planetway Japan株式会社 代表取締役CEO/ファウンダー 平尾憲映、freee株式会社 金融事業部 小泉美果

人口約130万人のエストニアは、電子国家として全世界から注目されています。平尾憲映氏が創設し、CEOを務めるプラネットウェイでは、エストニア生まれのデータ連携基盤システム「X-Road」をベースとした技術であるデータ連携基盤ソリューション「PlanetCross」の製品版を提供。エストニアと日本を行き来する平尾氏との対談を通じ、エストニアの事例から日本で実現可能な未来を考えます。

目次

    14歳で日本を飛び出し20代で起業…エストニアとの意外な出会い

    小泉:今回の座談会でファシリテーターを務める小泉です。前職の総務省ではデジタル・ガバメントの推進や、働き方改革などで役所のシステムのオンライン化を進めていましたが、民間企業側からも推し進められると2019年にfreeeに転職しました。 

    平尾:私の経歴はちょっと変わっています。もともと日本の教育があわない、と感じており、縁あって14歳からカナダ、アメリカで教育を受けました。アメリカの大学に在学中からベンチャー企業に関わったのち、日本に戻り、ソフトバンクにて孫さんの近くで5年ほど働きました。その後、半導体の会社を立ち上げ、東北大学と一緒に共同研究を行うなどしたのち、29歳で会社の清算を経験しました。エンタメ、コンテンツ、通信、半導体分野を渡り歩いたあと、ハードウェア分野を経験したいと、台湾のOEMメーカーに就職します。2015年7月のプラネットウェイ創業前には、100人で10億円を生み出すことを目指す会社であるワイヤレスゲートにて未来型の経営を学びました。 

    小泉:これまでのご経歴をおうかがいすると、エストニアに直接結びつくところはなかったのでしょうか?

    平尾:そうなんです。日本の詰め込み型教育に違和感を覚えていたのですが、その原因は、突き詰めると資本主義にあると思っており、漠然と「変えたい」という思いは昔から持っていました。

    たまたまエストニアの方と自分の問題意識についてお話する機会があったのですが、その方が私のビジョンに共感してくれ、「X-Road」(行政の情報連携基盤)について興味がないか、ともちかけられました。それから2年かけて毎月エストニアを訪問し、技術を学び、様々な人たちにお会いしていたら、気づくと従業員の半分がエストニア人で、「X-Road」を民間運用する会社となっていました。

    高木:私は現在freeeでプロダクトマネージャーとして製品開発を担当しています。会計士、税理士のバックグラウンドがあり、監査法人に3年ほど在籍していました。紙資料を転記していくばかりの仕事を続けるうちに、バックオフィスを最適化への課題感を感じていたところ、freeeのビジョンに共感し、入社を決めました。

    99%の行政手続がデジタル完結するエストニア

    小泉:最近では「電子国家といえばエストニア」と言われますが、エストニアがそれほど特別な存在となったのはなぜでしょうか?

    平尾:実は、エストニアはハイテク機器などへのハードの投資に注力してきたからデジタライゼーションが進んだわけではないのです。むしろ、エストニアの人はビジョンに対する共感度や理解度が高い。そのソフトパワーこそが電子国家たる源泉ではないかと思います。例えば私なんかは「資本主義を倒す!」「孫正義を倒す!」なんて大風呂敷を広げますが(笑)、日本だと「そうなんだ」、で終わる。ところがエストニアでは、「やりたい」と言うと、「じゃあどうすればできるだろう」と一緒に考えてくれる。

    そして、政府そのものが、スタートアップのような動き方をする。エストニアでのUber参入時、法律のハードルがありましたが、使えるようにするために半年で法律を変えてしまうんです。

    あとは、政治家が若い。30〜40代が政治の中心にいます。電子投票が当たり前になり、若者が投票するようになったことで、政治家の年齢が10〜20歳下がったと言われています。

    組織、テクノロジー、レギュレーションの三角形が均等なバランスをとらないとエストニアのような事例は起こらない。日本だとテクノロジーだけでなんとかしようと思いがちですが、運営する組織と、それに適合した法律があるから初めてイノベーションが起こる。エストニアはこのトライアングルが理想形を描いているからこそ、今があると思っています。

    小泉:日本だと「鉄のトライアングル」によって政策が作られるなんて言われていました。政治・行政・財界が結束して既得権益を守ろうとするという意味です。たしかにそれぞれ業界ごとに縦割りで、規制、システム、業務フローも縦割り。イノベーションといっても、実は閉じた世界の中のものになりがちかもしれません。

    行政手続のオンライン化の面でも、日本ではオンラインで完結するものはまだ少ないですが、エストニアはどこまで進んでいるのでしょうか?

    平尾:エストニアは真逆で、99.8%の行政手続がオンラインで完結します。できないことは2つしかなく、離婚と不動産売買だけ。これは技術的な理由ではなく、倫理的・法律的な観点から、対面での手続きをあえて残しています。

    小泉:では、エストニアでは、オンラインで本人確認し、顔が見えない手続きのほうがむしろ普通なのですね。

    平尾:はい、役所に人はいませんし、紙も置いてありません。受付に何人もいて、記入用の紙や朱肉が陳列されている日本の役所とはかなり違います。

    小泉:確定申告も違いそうですね。私は毎年e-Taxで電子申告してきましたが、昨年は何故かうまくいかず、デバイスを変えたりしながらいろいろ調べましたが原因がわからず、結局紙に出力して郵送するという体験をしました。

    平尾:エストニアは確定申告が3分で終わります。その利便性は日本も目指すべきですが、行政だけではなくて、やはり民間を巻き込んでいかないと変化しないのではないでしょうか。

    高木:そうですね。行政のAPIは公開しているところ、していないところがあるため、民間のサービスを部分的につなぐことになります。便利なサービスでも、行政への接続部分は行政側のシステムを前提とするため、どうしてもそこに依存する部分があります。行政側のシステムで使いづらい部分があれば、具体的に声をあげて行政と一緒に作っていく形にしていかないと、日本全体の行政手続のデジタル化がいい形で進まないと思っています。

    平尾:日本の場合、そういった声をどうやって行政に届けたらいいかわからない方が多いかもしれませんが、エストニアでは、日本と国の規模は違うとはいえ、例えば総理大臣クラスが話を聞いてくれます。僕みたいな日本から来た知らない人でも、アポをとれば会ってくれますし、聞く耳をもってくれる。

    政府のCIOポジションは民間から登用します。重役ポジションに民間のスタートアップのスタープレイヤーが入っているので、政府自体がスタートアップ気質になっていて、価値のある提案に対しては動きが早い。理想形に近いと思います。

    小泉:日本の組織では、ビジョンをフラットに議論するとか、新しいものを走りながら作るということには、たしかに慣れていないかもしれません。

    平尾:日本の場合、先に誰がやっているのかとか、誰が言い出したのかとかが重要になってしまったりしますよね。調和に重きを置くあまり、個性を押しつぶすというか、予定調和をかき乱すとすぐ変わり者扱いされてしまいます。それではイノベーターは生まれにくい。

    実は、日本とエストニアは、歴史的なバックグラウンドは共通している部分があります。
    エストニアは、ソ連崩壊でうまれた国ですが、もともと旧ソ連の中で、サイバーセキュリティの中枢でした。エストニアの中には、ソ連はアメリカに負けたが、エストニアの技術力が負けたわけではない、と考える人たちがいる。国が負けた後も、自尊心やプライドを持ち続け、ここまで成長したんです。

    同じように、日本も戦後成長しました。日本の良さや強みを活かしつつ、エストニアからビジョンに対する共感力や、組織、テクノロジー、レギュレーションのバランスを学ぶ。そうすることで、(持つ者と持たざる者の差が拡がりつづける)今の資本主義の問題を解決していくというのがプラネットウェイの構想です。

    デジタル化の不安を乗り越えるためには

    小泉:日本では、デジタル化推進に対して、個人情報の保護や、デジタルサービスから取り残される層が生まれるデジタルディバイドを心配する声もあります。そういった不安の解消については、エストニアではどう進めていったのでしょうか?

    平尾:エストニアの電子化は銀行からはじまっています。独立直前、まず銀行が必要になったが、人もいない、マーケットもない、でも技術力はある。当時はインターネットがでてきた時期だったため、じゃあインターネットで作っちゃう?と(笑)。まず銀行が電子化され、そのあとに政府がついてきた。

    1991年くらいから電子化の動きがはじまり、2001年に電子国家プロジェクトが立ち上がっていますが、この間に国民全員への義務として、ITリテラシーをあげるための教育プログラムが導入されました。セキュリティ、個人情報の取り扱いについてのベーシックな情報を理解できる期間をしっかり設けています。そして、IDをもつことも法律で定め、普及率も94%です。教育、法律で義務付ける代わりに、サービスとしての利便性をしっかり確保している。

    日本のマイナンバー制度も、発想はエストニアから来ていますが、なかなか浸透しないのはいろんなしがらみがあるから。我々プラネットウェイとしては、プラネットIDの技術とマイナンバーをつなげることで、マイナンバーの普及を促すことができると思っています。例えば、本人確認をマイナンバーを使って銀行がやってくれて、認証をプラネットウェイがやるなど。

    小泉:なるほど、電子国家として成長する過程で、それに対応する教育プログラムも導入したエストニア。日本の場合、ある意味すでに確立された教育プログラムがあるわけですが、どうデジタライゼーションを浸透させていけばよいのでしょうか。

    平尾:エストニアでは、ITリテラシーを高める教育を幼少期から入れることができたが、それを日本でやるのは大変だし時間もかかる。まずは自治体単位など、コミュニティでやってみるのがいいのではないでしょうか。エストニアの国家規模と同じような規模の自治体で、利便性を実際に感じてもらうユースケースを一緒に考えていければと思っています。

    小泉:たしかに、生産性向上とか効率化●%達成と言われるよりも、実体験として「こんなに簡単にできるんだ」という驚きや発見がないと、紙での処理や従来のやり方に慣れている人の心を動かすことは難しいですよね。

    高木:従来のやり方を変えるインセンティブでいうと、確定申告の電子申告のためだけにマイナンバーカードを取得するハードルは高いように思います。年に一回の確定申告のためにマイナンバーカードを取るのかと。他にもマイナンバーの利便性があれば、積極的に取得するようにはなると思います。

    平尾:そうですね。マイナンバーに対する不満をいうより、エストニアをよく知る自分が実際に動いて、便利に使えるサービスを増やすという方向で進めようと考えています。個人が自分の情報を自分の意思でコントロールできる世界での成功体験をつくっていきたいですね。

    たて割り組織に横串を通し、メッシュ構造へ

    小泉:日本では業ごとのたて割り規制や、ベンダーロックインなどと呼ばれる囲い込み戦略があり、スタートアップが新規参入しにくい環境だとも言われています。エストニアでは、スタートアップ支援がオンライン上でパッケージ化されていますよね。

    平尾:そうなんです。スタートアップがフェーズごとにどういう支援が必要かをワンストップで教えてくれるサービスがあります。エストニアに居なくても住民登録をして、法人を設立し、そのあとスタートアップのエコシステムに入る。すべてオンラインで可能です。

    日本は、平和で、かつ、市場が大きいので、長らく参入障壁とかスタートアップのエコシステム育成が意識されていなかった。対して、エストニアはいつも外部からサイバー攻撃を受け、常に脅威にさらされている状態で、また、市場が小さいので、最初からグローバルをみている。そのため、たて割りになりようがないんです。
    日本はそれぞれの業界の中でパイを取り合うだけで成り立つほど市場が大きいので、外をみなくなる。そして、外からは見えにくい派閥やルールをどんどんつくってしまうので、それを壊していく、もしくは横串を通していかないといけない。

    小泉:たしかに、たて割りにも合理性がある一方で、変化のスピードが速い時代には、調整に時間がかかるとか、業をまたいだ課題への対応が十分できないなどのデメリットもありそうです。日本のたて割りの組織の中で、枠を超えたデジタライゼーションを進めるにはどういう戦略があるでしょう。

    平尾:たて割りには、実はプラスの面もあると思っています。同じ枠の中で、上が動けば下が動くのがたて割り組織における特徴の一つなので、すべてのキーパーソンをおさえて横でつなげてしまえば、ガラっと変わることもできるはずです。影響力のある特定の業界のプレイヤーと新しいケースをつくることで、その他の企業がついてきて、業界全体に変化が起きる。それぞれの業界で成功事例をつくったあと、横同士をつなげていき、メッシュ状の構造にしようとしています。5年くらいかければ、日本もかなり変わるのではと思っています。

    そうなると、結局、それぞれの業界のトップをどう説得するかに行き着きます。そこは私の役割だと思っていますが、我々だけでやるには限界がある。同じような視点をもった企業と連合を組んでやっていかないと疲弊するし、どこかで壁にぶつかるのではないかと思っているので、今はビジョンを共有する仲間づくりにも注力しています。

    小泉:一つの組織だけではなく協力してやっていくことで、日本全体が変わるスピードも加速しますよね。スタートアップ支援など経済面だけではなく、高齢化や地方創生の文脈でも、デジタル化の波を加速させることは意義深いと思います。

    日本でデジタライゼーションを加速するには

    小泉:さて、それぞれの業界のトップ層にアプローチする平尾さんに対して、freeeでは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションの下、スモールビジネスのバックオフィス効率化とビジネスの成長にフォーカスしています。スモールビジネスにおけるデジタル化の課題はどこにあるとお考えですか?

    高木:2、3年前だと、クラウドに対する漠然とした不安があると感じていましたが、そこは時間が解決し、最近ではクラウドへのアレルギーみたいなものは徐々に減ってきたように思います。

    あとは、行政のシステムの壁ですね。freeeはクラウド会計ソフト・人事労務ソフトに加え、実は、個人事業主の開業や法人設立の手続き、また、毎年の納税申告をオンラインで行うサービスも提供しており、政府のシステムに接続しています。その行政への接続部分では、いくらユーザ体験を重視しても、民間企業である自分たちだけでは改善しきれない壁がどうしても今はあります。それらの電子手続のハブとなっている行政システムを、民間と共同でブラッシュアップしていく必要があると思います。そのために、個社としてだけではなくて、業界の横ぐしを刺すような協議会なども使って発信する必要があります。

    平尾:全く同感です。国もそうですし、LGWAN(Local Government Wide Area Network、総合行政ネットワーク)などの地方のハブもそうですね。地域に住んでいる人々に「なぜこの手続きが必要なのか、なぜ面倒なフローになっているのか」と素朴な疑問をあげてもらうことも大事ですし、民間企業からの継続的なフィードバックやアプローチもやめてはいけない。デジタルを進める我々からの働きかけと、生活者の生の声を伝えていくことを、同時並行で行う必要があります。

    小泉:私も役所にいたのでわかりますが、お役所の中の人、つまり、公務員は、真面目にエンドユーザや民間企業にとって使い勝手のいい制度やシステムを作りたいと思って日々励んでいます。一方で、1、2年で人事異動をするため、細かい改善や外とのリレーションが異動でリセットされてしまうこともあります。

    平尾:民間と行政間のレンタル移籍とか、いままでと違う視点を組み込む仕組みを試してみたほうがいいですよね。エストニアの成功のトライアングルでも「組織」が一角をなしているように、やっぱり組織そのものの行動原理やマインドを変えていかないと。
    あとは、外の視点を入れるには、先に他国にデジタル化を浸透させることで、日本は遅れていますが大丈夫ですか?と競争心を煽る手もあります。

    小泉:キャッシュレスはまさにそうかもしれませんね。ちなみに平尾さんは日本だけでなく、他の国でも提言される機会が多いですが、それぞれの国の意思決定プロセスで違いはありますか?

    平尾:日本では「持ち帰って検討します」が多くて時間がかかります(笑)。エストニアやアメリカだと、オーソリティを持っている人がフロントにくるので、フレキシブルで速い。ただし、日本はワンクッション置きたがるぶん、決断のクオリティは高いと信じています。そこをうまく使いながら、異なる文化それぞれの強みを活かしてものごとを進めていくつもりでいます。
    あと、日本の大きなチャンスだと思っているのは、さきほども話題に挙がった人口減少と高齢化です。一般にはマイナスに聞こえますが、日本の課題が世界で一番進んでいるからこそ、他国から注目されている。どの国よりも先駆けて、世界にソリューションを提供できる可能性があるということ。我々は、デジタライゼーションを進めるだけではなくて、そういう日本の強みを世界に発信していくことも、自分たちの役目だと思っています。

    個人データは誰のもの?便利さと引き換えに諦めるべきもの

    小泉:日々の生活にデジタルツールが組み込まれていくに従って、データは誰のものかという論点が出てきます。日本だと、個人情報の保護に対する意識は高いものの、実際に自分のデータを自分自身でコントロールできている、あるいはコントロールできるためのツールがある、という意見はあまり聞いたことがありません。

    平尾:その状況は、EU一般データ保護規則、いわゆるGDPR(General Data Protection Regulation)の浸透によってここ数年で変わるとみています。カリフォルニア州では、今年GDPR相当の州法がつくられたりと、欧州以外、また国家以外でも、自分の個人データをコントロールする権利を規定する流れが起きています。法改正が世界的に広がっていく中で、必然的に「データは企業ではなく個人に帰属するものだ」という方向へ意識が変わっていくと思います。

    それを体現するのが、PlanetCrossなどプラネットウェイが提供するデータ連携基盤です。これはエストニアのX-Road(行政の情報連携基盤)を日本で初めて民間企業向けにカスタマイズしたもので、例えば利用者が医療情報を保険会社に送りたい場合、保険会社から利用者に対してリクエストが送られ、許諾された場合に初めてデータが連携されます。利用者個人が、自分の意志で、自分のデータを誰に渡すのか決める権利があるということです。

    小泉:なるほど。自分の意思で、企業や自治体が持っている自分のデータを、業界の垣根を越えて、安全に第三者に連携できる仕組みなのですね。

    freeeでは、オープンプラットフォームという理念のもと、会計freeeのパブリックAPIを公開しており、利用者が使いたいツールと組み合わせて自分のデータを利活用できる環境を提供していますので、共通する世界観ですね。会計freeeにおいて、データの利活用における課題は何でしょう?

    高木:今はAPIを自由に利用していただいていることもあり、大きな課題を感じたことはありませんが、会計freeeの利便性を存分に享受いただくには、銀行が提供するオンラインサービスの利用は一つのポイントですね。

    会計freeeに銀行口座からデータを自動連携するのはとても便利なのですが、お客様によっては、そもそも銀行のインターネットバンキングのアカウントを作らない方や、インターネットバンキングのIDやパスワードを会計ソフトに入力することに抵抗感がある方もいます。会計freeeの利用者数が増加するにつれ、インターネットバンキングとの連携によるメリットが認知されるようになり、自分もその便利さを享受したいと選択する方が増えてきました。

    小泉:便利さは、セキュリティと必ずしもトレードオフではなく、セキュアなサービスを選択することで、便利さも享受できるようになるということですね。

    高木:あとは、会計事務所において会計freeeの利用が拡大してきことも、エンドユーザーのクラウド会計ソフトに対する心理的障壁を取り払う一因になっています。

    平尾:コミュニティの力で口コミが広がっていくことによって、当たり前になってきたのですね。先日ダボス会議でもお話したのですが、便利なサービスには時に落とし穴があります。セキュリティもそうですが、個人のデータの価値もそうです。例えば、GAFAMのサービスを使うとき、50ページもある利用規約をきちんと読んで同意ボタンを押す人がどれだけいるでしょうか。規約には、個人のデータの権利を放棄させるなどの条項が入っているかもしれませんが、それを個人が弁護士にチェックを依頼して、いちいち判断するのは現実的ではありません。それを変えるには、個人が自分のデータの使い道を許諾できる適切なツールと、それを判断するための正しい知識のインプットが必要です。日本人ならではのコミュニティの連帯感や流行への敏感さを活かせば、データ主権は、世界最先端にいける分野だと信じています。

    小泉:たしかに、私はいままで行政というコミュニティだけでキャリアを積んできたので、他の業界のことは恥ずかしながら全く知らず、freeeに転職して、いろいろなカルチャーに初めて触れています。例えば、日々の勤怠管理や会計処理でモバイル対応が進んでいることも、驚きでした。

    高木:はい、会計freeeを使って、社内の経費精算も、個人事業主の方の確定申告も、スマートフォンでできることが増えており、開発がどんどん進んでいます。昔は経費精算の承認のために会社に戻る、なんてこともありましたが、今はスマートフォンで外から対応できるようにもなって、働き方改革にもつながっています。

    平尾:そういったプロダクトの方向性は、社内でどういうふうに決まっていくのですか?

    高木:freeeは、いわば蜘蛛の巣型の組織で、代表も次々に新しいアイデアを出しますが、それがトップダウンというわけでもなく、マネージャー層も現場も意見を出します。誰が言ったか、というのはあまり関係がないですね。

    平尾:そういう組織は理想形ですよね。大体がトップダウンか、ボトムダウンのどちらかで、メッシュ状の組織は実はなかなか少ないと思います。新しい組織体の民間同士で手を組むことで、スピード感をもって日本を変えていきたいですね。

    小泉:そうですね。色んな組織で生まれたアイデアを、横串でつなげ、行政や色んな業界を巻き込んで、日本全体にムーブメントを起こしていきたいと感じました。本日はエストニアと日本の比較から、今後の日本のデジタル化をどう進めていくべきか、様々な知見をいただきました。貴重なお話をありがとうございました。

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