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2020年02月21日(金)

今さら聞けないKPIとは?意味、OKRとの違い、設定方法、運用のコツと事例を紹介

経営ハッカー編集部
今さら聞けないKPIとは?意味、OKRとの違い、設定方法、運用のコツと事例を紹介

KPIとはkey performance indicator の略で、組織の⽬標の達成度を評価するための「重要業績評価指標」です。組織や個人が設定した目標の達成状況、業務の進捗状況などのプロセスを定量的に測定するために使われる指標です。OKRとの違いや、KPIの設定方法、KGIやKFSとの関係、運用のポイントやコツ、KPIの具体的な事例などを紹介します。

KPIとは?

KPIとは重要業績評価指標のこと

KPIとはkey performance indicator の略で、組織の⽬標の達成度を評価するための「重要業績評価指標」のことです。組織や個人が設定した目標の達成状況、業務の進捗状況などのプロセスを定量的に測定するために使われる指標です。KPIを設定してプロセスマネジメント実施すると、進捗状況が計画対比で達成/未達成が定量的に把握できるため、活動の軌道修正がしやすくなります。

KGI、KFSの関係は?

通常、KPIは、
・KGI(key Goal indicator:重要目標達成指標)=最終ゴール・目標
・KFS(Key Factor for Success:重要成功要因)=目標達成の鍵となる要素
・KPI(key performance indicator:重要業績評価指標)=プロセス目標
の3点セットで運用されます。

KGIは、組織や個人が目指すべき方向性を示した最終的な目標数値のことです。KGIを他性するために、最も重要な要素(KFS)を明確にして、そのKFSをクリアするためにプロセス目標(KPI)を設定します。

KGI、KFS、KPIの関係を図示すると以下のようになります。

たとえば、KGIとKPIの関係は以下のようなイメージになります。

<営業活動の例>
KGI=売上、利益など
KPI=成約数、提案案件数など

BSC(バランス・スコア・カード)によるKPIマネジメント手法

KPIマネジメントを実施する際には、BSC(バランス・スコア・カード)のフレームワークを活用することがあります。

BSCとは、
・財務(企業の業績をどのように向上させるか)
・顧客(顧客に対してどのように行動すべきか)
・ビジネスプロセス(顧客満足度を向上させるための業務プロセスをどのように構築するか)
・組織の学習と成長(企業のビジョンを達成するためにどのように能力を向上させるか)
という4つの視点があり、すべての指標が財務に反映されるという考え方です。KGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)と連動させて定期的に進捗をマネジメントします。

OKRとKPIの違い

では、最近話題のOKRとはどのような違いがあるのでしょうか?

OKRとは

OKRとは、Objective and Key Resultsの略でグーグル、フェイスブックなどが導入している企業や組織における目標管理と人材開発が一体となったマネジメント手法です。企業や組織の目指す姿(ゴール)の実現に向けて、その目標(Objectives)と、主な成果指標(Key Results)を設定して、個と組織の目標を連動させて、人材の潜在能力を最大限に引き出してブレークスルーを生み出し、組織の生産性を飛躍的に向上させるための人材マネジメント手法です。

KPIとOKRの比較

OKRとKPIの違いは以下のようになります。

  KPI OKR
目的 プロセス管理、目標達成 生産性向上、イノベーション
考え方 実績を定量的に測定し、達成状況を把握する 目指す方向を示して、自発的なアクションに繋げる
目標設定の水準 達成可能な目標(ルーフショット目標) 達成が困難な目標(ムーンショット目標)
理想的な達成度 100% 60~70%
マネジメントサイクル 組織や業務により異なる 四半期で評価、月・週単位で振り返り
評価 業績評価に直結 業績評価とは別運用
全社目標との整合性 部門目標と連動している 全社目標と個人の目標が連動する
導入企業 マイクロソフト、Amazon等 Google、Facebook、Twitter等

KPIは、組織や個人の目標達成のためのプロセスマネジメント手法ですが、OKRは生産性向上やイノベーションを目的とした人材開発手法だと言えます。

つまり、OKRは企業が目指すあるべき姿とそこに至るロードマップをビジュアル化する手法で、KPIは企業が目標とするゴールを確実に達成するために進捗状況を計測するツールのようなものです。トップダウンで階層別のマネジメントをしやすいのがKPIで、ネットワーク型の組織でボトムアップを志向するのがOKRだと言われています。

こうしたマネジメント手法は、戦略実行のための手法であり、そもそもマネジメントの目的が異なりますので、一概にどちらが優れているかといったものではありません。自社の戦略を実行するために、組織のマネジメントをどのように最適化するか、どのように自社にあった形で運用するか、といった視点でいずれかを選択するか、両方を駆使していくという視点で検討すること重要です。

参考:
OKRとは? 
URL:https://keiei.freee.co.jp/articles/c0201846

KPIの設定手順

KPIは、①KGIの設定、②KFSの選定、③KPIの設定の手順で設定します。

KPIは、KGI(最終ゴール)をブレークダウンしたプロセス目標という位置づけになります。そのため、以下の様なロジックツリーを作成して、ゴールとプロセスを関連付けて、最終的には、目標を達成するための実行可能なアクションにまで分解して、見える化することが重要です。

KGIの設定

KGIは、最終ゴール・目標となる数値を設定します。全社目標、部門目標、チーム目標、個人目標といった単位で設定し、数値で計測できる指標で、かつ達成可能な水準である必要があります。

KGIの設定にあたっては、組織の上位の階層の目標をブレークダウンして連動させるようにしましょう。部門間やチームで目標のすり合わせをして、より上位の階層の目標が達成できるように全員で共有して決定します。

KFSの選定

KFSの選定は、KGIを達成するための成功要因とその因果関係を明確にして、適切なKPIを設定するための重要なステップです。

KFSの選定は、①プロセスの分解、③数式化、④ロジックツリーの作成、⑤KFSの選定のステップで行います。

たとえば、あるウェブサイトの訪問者が月間1万ユーザー、商品Aが300件購入されているとすると購入率は3%です。この商品Aの売上を1.5倍にするという目標(KGI)を達成しようとした場合を想定してKFSを設定してみましょう。

プロセスの分解

ここでは、営業部門が商品Aの受注までのプロセスを洗い出してみます。

たとえば、
・ウエブサイト閲覧
・資料請求/問い合わせ受付
・アポイントを取得
・コンタクト①(ニーズ把握)
・コンタクト②(提案・見積もり)
・コンタクト③(クロージング)
・契約手続き 
・受注
という8段階のステップがあるとします。


このステップを階段を上るようにスムーズにステップアップすると受注に至るわけですが、営業担当者の得意不得意や、ユーザー特性によっても、つまずきがちなステップなどの傾向が変わります。部門として共通のボトルネックになっているステップがあるかもしれません。こうした特性を分析して対策を検討するためにも、現状の営業プロセスで次のステップに進むことができるステップアップ確率を算出します。

たとえば、ウェブサイトに月1万人が訪問して資料請求/問い合わせが1,000件あったとすれば反応率は10%。アポイントを取得できる確率が50%、初回訪問してクロージング面談に進む確率は30%、そこから受注に至る確率は90%といったプロセス毎のステップアップ率を算出します。こうした統計データの収集は、SFAや業務管理ツールなどを利用して業務プロセス毎のデータを抽出すると効果的です。

数式化

次に、KGI(ゴール)を達成するために、先ほど洗い出したステップを数式化できるように分解していきます。

たとえば、売上額=受注件数×1件あたりの平均売上単価に分解できます。
さらに、受注件数=提案案件数×受注率に分解できます。

次に、案件数=新規案件数+既存案件数に分解すると、
新規案件数=提案数×受注率に分解できます。
既存案件数=既存顧客数×継続率に分解できます。

このようにゴールとなる売上額を、数式化が可能な構成要素で分解していくと、売上目標を達成するための施策が、ゴールから逆算しやすくなります。

たとえば、商品Aの売上を〇円にするという目標に対して、受注件数を増やす×販売単価を高めるという2つの方向性がありますが、販売単価を高めるのが難しい場合、受注件数を〇件に増やすという可能性のほうがゴール達成がしやすいことがわかります。受注件数を〇件にするには、新規案件数と既存案件数を増やす方法がありますが、そのうち新規案件数を〇件に増やすには、どういう施策をどの程度の水準で強化すべきか、あるいは既存顧客の継続率を〇%にするにはどのような施策が有効か、といった過去の実績や見込みなどの数値に基づいた具体的な議論ができるようになります。たとえば、新規のサイトの訪問数を増やすコストよりも、既存の継続率を高める施策を優先したほうが費用対効果が高い、といった分析もしやすくなります。

こうした数式化は、加減乗除(足算、引算、掛算、割算)で分解することが可能です。
基本的には、ユーザー数は足算、行動の分解は掛算で数式化できます。

ロジックツリーの作成

プロセスを分解して数式化したら、それをロジックツリーにして見える化します。
ロジックツリーを作成すると、ゴール達成のための構成要素とボトルネックが明確になります。また、チームの問題意識やゴール達成のための役割分担が明確になります。

たとえば、先ほどの数式を図示すると以下のようになります。

図示した要素の中で、成功のカギとなる構成要素を選択して、KPIとして設定できる指標を選定します。

KFSの選定

KFSは、KGIの目標達成に影響が高い項目を優先的に選定します。目標化するには、自分でコントロールできるもの、KPIとして設定できる項目を選択する必要があります。

先ほどロジックツリーで洗い出した項目のうち、売上目標の達成の鍵となる指標や、ボトルネックになっている(なりそうな)項目は、重点強化項目として目標に設定します。

1つのKGIに対してKPIは3~5項目程度を選定するのが妥当です。KPIが10項目以上あると、何に注力すればいいのかがわからなくなり、活動が散漫になってしまいますので、自分でコントロールできるもの、目標達成に影響度が高い項目を選定してください。

KPIの設定

KGI達成のために重要な要素となるKFSを絞り込むことができたら、その進捗を数値的に計測できるKPIを設定します。KGIが達成できるようなプロセスの数値目標としてKPIを設定します。

KPIを設定したら、KPIを達成するための具体的なアクションが明確になるまで行動を分解してください。たとえば、ウェブサイトへの新規訪問数を〇件に増やすというKPIが設定したら、検索エンジンからの流入を〇件に増やすにはどのような広告をどの程度の予算で実行するか、メルマガからの流入を〇件にするためにどのようなアプローチをするか、といったアクションプランが明確になるようにKPIを設定することが重要です。

KGIとKPI設定のポイントとコツ

正しいKGIとKPI、目標設定のコツは、SMART(スマート)と呼ばれる5つの視点です。SMARTの解釈にはいくつかのパターンがありますが、概ね以下のような内容となります。

Specific:具体的

誰が見てもわかるような明確で具体的な指標を設定しましょう。曖昧な表現や抽象的な言葉は避けて、具体的な行動や目標を設定してください。

Measurable:測定可能

目標の達成度合いが明確に判定できるような指標であることが重要です。達成/未達成が明確で、どの程度まで到達しているのかが判定できるように数値化する必要があります。

Achievable:達成可能

目標の達成が可能な水準である必要があります。チャレンジングな目標でも数値や論理的な裏付けがある場合は設定できますが、KPIとして100%の達成をコミットする場合は非現実的な水準の設定はモチベーションの低下を招きますので避けてください。

Relevant(Related):適切さ

企業や部門の最終目標やビジョンを実現するために適切であるかどうか、全体目標と関連付けされたものであるかが重要です。KPIの目標を達成しても、最終的な目標を達成できないときは、最終目標とKPIにズレが生じている可能性があります。なお、Result-oriented(結果志向)という解釈をする場合もあります。

Timely(Time-bound):期限がある

いつまでに目標を達成するか、その期限を明確に設定することが重要です。期限を設定しない目標は行動する動機につながらないため、達成率が低下します。

以上のように、誰にとってもわかりやすく、納得感がある目標設定を心がけてください。

KGI・KPI設定の注意点

KGIとKPIの設定でありがちな失敗は以下のようなケースです。

KPIの数が多すぎる

KFSの選定の際に、事業内容によっては構成要素が多くなり、業務が複雑化している場合はKPIの数が増えてしまう場合があります。しかし、実効性の高い目標管理が可能なKPIの数は、1つの組織や個人の場合、3~5項目が適切です。10項目を超えると、最終目標とKPIの因果関係や、KPIの位置付けが曖昧となり、活動も散漫になりますので、成果に集中するためにも最大でも10項目を超えないようにしましょう。

KPIが全体目標と連動していない

KGIからKFSを明確にせずにKPIを設定してしまうと、KPIを達成しても最終ゴールが達成されないケースが出てきます。また、KPIの数が増えていくと、KGIとKPIそれぞれの関係性が曖昧になり、アクションが最終目標にどのようにつながっているのかが見えにくくなるため、エンゲージメントが低下するケースがあります。

数値化が難しい重要なKFSを省略してしまう

KPIはKFSを定量化して計測するためのモノサシです。できるだけ現場で計測できる数値(金額、件数、率、回数、リードタイムなど)を設定します。ただし、数値化が難しいけれどもKGIの達成に重要な影響を及ぼす定性的なKFSがある場合は、省略するのではなく、できるだけ定量化、数値化するようにしてKPIとして設定することが肝要です。

KPIを設定して見直しをしない

KPIを初めて設定したり、新たな業務分野に参入した場合、対象業務の目標達成のための鍵となる要素(KFS)が明確でない場合があります。そのような場合は、仮説として一旦複数のKPIで運用を開始して、KGIに連動したKPIか否かを判断する必要もあります。KPIは一度設定したらそれで完成ではなく、定期的に連動性や最終ゴールへの影響度などを検証して、必要があれば軌道修正を図る必要があります。

SMARTな目標になっていない

また、前述のSMARTの視点でKGIやKPIを設定していない場合は、そもそも
Not Specific:曖昧な
Not Measurable:測定できない
Not Achievable:達成不可能な
Not Relevant(Related):不適切な、関連性のない
Not Timely(Time-bound):期限を定めない
といった形骸化した目標になってしまいますので、目標設定にあたってはSMARTの視点を参考にしてください。

KPIの具体例

KPIは、業種、職種、企業毎に適切な指標が異なります。

BSCの視点でのKPIの設定の具体例

たとえば、BSC(バランス・スコア・カード)のフレームワークでKPIを導入するケースは、財務、顧客、ビジネスプロセス、組織の学習と成長といった視点で、KPIを設定する方法が有効です。顧客、業務プロセス、組織の学習と成長の視点は、すべて最終的には財務指標に成果が集約されるという関係になります。

  財務 顧客 業務プロセス 組織の学習と成長
KPI指標例 売上高、営業利益、1㎡あたり売上、従業員1人あたり利益、キャッシュフロー、ROA(純資産利益率)、EVA(経済付加価値)、固定比率、流動性比率、など 顧客満足度、顧客ロイヤリティ指標(NPS等)、リピート購入率、新規顧客獲得件数、有効面談件数、返品率、解約件数、クレーム件数、など 従業員1人あたり販売件数、顧客応対時間、電話応答時間、生産性向上率、新製品売上高、生産リードタイム、棚卸資産回転率、欠品率、不良品発生率、など 従業員エンゲージメント指標(eNPS等)、社員定着率、年間教育訓練時間、従業員1人あたり研修費用、資格保有者数、業務改善提案件数、特許獲得数、など
視点 成長期(売上・収益の成長率)、成熟期(利益最大化、投資回収、等) 顧客の視点(商品・サービス、ブランドイメージ等)、企業の視点等 マーケティングやイノベーション、オペレーション、アフターサービス等 社員の意識、能力開発、ナレッジマネジメント等

サプライチェーンの視点でのKPI設定の具体例

サプライチェーン等の業務の時系列の流れに沿ってKPIを設定する場合は、トヨタ自動車のKPIが参考になります。トヨタでは、お客様からオーダーされてから納車するまでの一連のサプライチェーンに沿って、販売、調達物流、生産、輸送、販売実績として登録されるまでの原価損益などを含めて設定されています。

参考
プロセスKPIマネジメントシステム-創発と進化の組織体を目指して-(今井範行、名城論叢5巻1号、2004)

http://wwwbiz.meijo-u.ac.jp/SEBM/ronso/no5_1/imai.pdf

まとめ

KPIは、企業が目指す最終ゴールの達成に向けて、その成功要因となるKFSを明確化して、その達成状況を把握するためにKPIを設定してプロセス管理を行うためのマネジメント手法です。
KPIの設定にあたっては、最終目標を達成するために重要な業務プロセスを洗い出し、業務プロセスの構成要素を数式化できるように分解し、さらに目標達成に向けたロジックツリーを作成して見える化することで、最終目標と達成までのプロセス目標になるKPIとの関連性が明確になります。
KPIやロジックツリーは一度作成したら完成というわけではなく、環境変化や現場の実情を踏まえて運用しながら常に見直しをして最適化していく必要があります。

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