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2018年09月06日(木)

会社売却(M&A)では、どのような企業の市場価値が高いのか?

経営ハッカー編集部
会社売却(M&A)では、どのような企業の市場価値が高いのか?

中小企業の会社売却(M&A)におけるリスクとして、「買い手企業が見つからない」というものがあります。M&Aは、売り手と買い手企業の双方があってこそ、交渉がスタートするものです。今回は、中小企業の会社売却において、どういった企業の市場価値が高いのかを見ていきましょう。

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M&Aで買収する側のメリットを考えよう

まず、買い手企業はなぜM&Aによって他社を買収したいのか、買収する側のメリットを考えてみましょう。

M&Aによる会社買収のメリットは、ずばり「時間を買う」という点にあります。自社のコアビジネスを伸ばすにしろ、新規事業に参入して多角化を目指すにしろ、新しいことを始めるには何かと時間がかかります。その点、すでにその分野でのノウハウや技術、人材、取引先や顧客を持つ他社をまるごと買収してしまえば、新たな事業を育てる時間を節約できます。まさに「時は金なり」なのです。

M&Aでは「将来性のある会社」が好まれる

M&Aによる会社買収は、「買収して完了!」というわけではありません。買収がまとまった後、企業風土の異なる両社を統合して、シナジー効果を発揮していかなくてはならないからです。

その点、「将来性のある会社」がM&A市場では好まれます。例えば、この先発展や需要が見込まれる最先端の技術を持っている会社、事業拡大に欠かせない優良な取引先や顧客、強い供給網を持っている会社などです。逆に、今の時点では業績好調であっても、将来的に頭打ちが予想される場合は、M&A市場における評価は低くなってしまいます。

このように、会社の将来性とは、技術力やマーケティングなど、企業自身が持っている「収益力」に加え、市場環境などの「需給」によって評価が変わってくるのです。

M&Aでは「資産のある会社」が好まれる

会社売却によるM&Aの場合、売り手企業が抱えていた借り入れなどの債務も同時に譲渡されます。中小企業の場合、出資や増資などの直接金融ではなく、金融機関からの借り入れなどの間接金融に依存しているケースが多く見られます。また、こうした借り入れを経営者個人が保証していることも少なくありません。借金が多いとそれだけ返済も大変ですし、利息を多く払う必要も出てきてしまいます。

そのためM&A市場では、資産がたくさんあり、財務的に安定している企業が好まれる傾向にあるのです。

ワンマン体質の企業はM&Aにおいてリスクあり

M&Aの成否は、統合後の「PMI」(Post Merger Integration、ポスト・マージャー・インテグレーション)にかかっているともいわれます。PMIとは、「M&A成立後の統合プロセス」のことです。PMIにおける統合領域は、経営戦略(企業理念、戦略やビジネスモデルなど)、社内の管理体制(組織、業務管理、人事・雇用など)、運用体制(業務システム、従業員の意識など)など多岐にわたります。

こうした中で、中小企業にありがちな「ワンマン経営者に全てを依存している」体質の企業は、買収された後の統合が難しくなる可能性があります。M&Aでは、買収した側が上、買収された側が下という構図が出来上がってしまう場合があります。これは条件交渉次第ですが、買収された側の経営陣が統合後もその地位に残れるとは限りません。経営者に全てを依存しているような体質だと、その経営者が抜けた場合に事業そのものが立ち行かなくなる可能性も考えられます。

また、ワンマン体質で社内のガバナンスが行き届かない企業の中には、社内にトラブルを抱えているケースも散見されます。例えば、パワハラやセクハラなどのハラスメント、人事制度での不公平、取引先との癒着や予期せぬ債務など財務上のリスク、経営者のプライベートでのスキャンダルなどが挙げられます。

こうしたトラブルを抱える企業は、統合後のリスクにつながるのでM&A市場では忌避されます。ただし、こうしたトラブルは残念ながら買収完了後に発覚するケースも多いので、買収する側は、デューデリジェンス(事前調査)を念入りに行う必要があるでしょう。

中小企業の企業価値はどうやって算出するのか

上場していない中小企業の場合、企業価値(株価価値)を正確に把握していない経営者も多いものです。企業価値を正確に把握していないと、「会社を安く売ってしまった」「高値づかみしてしまった」ということになりかねません。

売却価格の算出にはいくつかの方法がありますが、代表的なものとしては以下の手法が挙げられます。

DCF法(Discounted Cash Flow)法

一定期間の利益計画に基づき、将来獲得すると見込める資金(キャッシュフロー)を現在価値に還元して算定します。投資の採算性という点では望ましい方法といえますが、将来性を精緻に見込むには、キャッシュフローの予測などの計算方法が複雑になるため専門知識が必要となり、算出に時間がかかります。

メリットとしては、競合他社の動向や経営環境の変化などを踏まえた多様な分析が可能で、イメージが沸きやすいという点があります。

類似会社比準法

事業内容、市場規模、収益の状況などから類似企業を複数選定し、これらの会社と株価を比較して算出します。DCF法のように様々な要素を踏まえた価値評価はできないものの、比較的わかりやすく算出しやすいのが特徴です。しかし、類似企業との比較ポイントを明確にしなければ論理性が失われてしまいます。また、評価対象となる企業がごく小規模の場合は、類似する企業を見つけられない可能性も高まるため、不適切となるでしょう。

純資産法

決算書に基づいて純資産額を算出する方法です。公正な方法により作成された決算書をもとに企業価値を決めるので、誰が見ても基準が明確で、納得しやすいのがメリットです。中小企業のM&Aにおいても一般的に利用されています。この純資産額に将来見込める収益を「営業権」として上乗せすることもあります。営業権は「のれん代」とも言います。

( 出典:帝国データバンク「第5回 : M&Aにおける企業価値評価」

M&Aを検討しているなら、専門家に企業価値について相談しよう

企業価値の算出は、監査法人や公認会計士事務所、税理士事務所などの専門家が手掛けるケースが多くなります。また、買収する側の企業が実施するデューデリジェンズは、財務、人事、事業、法務と多岐にわたる分野を検証していくため、スペシャリストの力が必要になります。

M&Aを検討している企業で、自社の企業価値を知りたい、M&Aで会社を売却できる可能性について知りたいという場合は、M&Aアドバイザリーなどの専門家に相談することをおすすめします。

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