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2019年03月07日(木)

オンプレミスとは?クラウドとの違い・オンプレミスのメリット・デメリット

経営ハッカー編集部
オンプレミスとは?クラウドとの違い・オンプレミスのメリット・デメリット

「オンプレミス」とは、以前から企業システムで多く採用されてきたような、自社でデータセンターを保有してシステム構築から運用までを行うサーバーの運用管理形態のことをいいます。

従来は情報システムの構築・運用形態としては自社でインフラを用意するのは、ごく一般的なことだったので、特にそれを示す用語というものはありませんでしたが、現在ではインターネット上に仮想のサーバーを置く「クラウド」が広まってきたため、クラウドと区別するための対義語として「オンプレミス」という用語が使われるようになりました。 

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オンプレミスとは

サーバーの運用形態は、自社で運用する「オンプレミス型」とクラウドサービスを利用して運用する「クラウド型」に大別することができます。
オンプレミスとは、「自社で保有する設備でシステムを運用管理していく」という運用形態のことで、クラウドとは「システムを保有しないで、必要に応じてシステムを利用する」という運用形態です。

土地をサーバー、管理ソフトウェアを家に例えるなら、オンプレミスは土地と家を購入するイメージです。
オンプレミス型の運用形態はネットワーク機器もサーバーも自社のものとして購入するので、思い通りにシステムをカスタマイズできるなどメリットが多い運用形態ではありますが、初期費用がかかり運用するまでにも時間がかかるというデメリットもあります。

クラウドとの違い

クラウド型とは、クラウド事業者が保有する設備でシステムを運用管理していくシステムの運用形態のことをいいます。
クラウドは、必要な時に必要な量のリソースを利用することができ、利用した分だけ料金を支払うシステムです。

オンプレミスが、前述したような土地と家を買うイメージであるのに対し、クラウドは賃料を払うだけで家に住む(=サービスを利用する)賃貸のようなイメージとなります。 言うまでもなく賃貸の方が初期費用は少額で済み、土地や住宅を購入した方が初期費用や管理費がかさむということになります。

たとえば、GmailなどのWebメールもクラウドの技術を利用していますし、Dropboxやチャットワークなどもクラウドの技術を利用しています。 近年は、オンプレミスから初期費用のかからないクラウドに移行するケースが増えています。

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オンプレミスのメリット・デメリット

前述したとおり、オンプレミス型の運用形態は、自社で保有する設備でシステムを運用管理するので、思い通りにシステムを構成できるなど多くのメリットがありますが、反面、構築までに数カ月かかることもあり、その他にも初期費用などのコストがかかるなどといったデメリットも指摘されています。

オンプレミスのメリット

オンプレミスのメリットは多々ありますが、主に「思い通りに構成でき、既存システムと連携しやすい」「自社内のシステムなのでトラブルに対応しやすい」の2点を挙げることができます。

1. 思い通りに構成でき、既存システムと連携しやすい

オンプレミスは自社で設備を保有しシステムを運用管理します。
したがって、システムの内容に沿って思い通りにカスタマイズできるため、既存システムとの連携がしやすいというメリットがあります。

2. 自社内なのでトラブルに対応しやすい

オンプレミスは自社サーバーで管理するため、自社サーバーが停止してしまうとシステムすべてが停止してしまうことになるわけですが、これは反面、自社で管理しているので状況を把握しやすいということでもあり、トラブルシューティングしやすいということもできます。

オンプレミスのデメリット

オンプレミス型は、設備や機器など自分たちで調達しなくてはならず、設備スペースを確保する必要もあるなど、さまざまなコストがかかり、実際に運用するまでに時間がかかるなど、いくつかのデメリットがあります。

1. コストがかかる

オンプレミス型は、機器やライセンスなどすべての設備を自分たちで調達し構築しなければなりません。サーバーやソフトウェアライセンス、ネットワーク機器の購入などの初期費用がかなりの高額になります。そのうえ設置するためのスペースも確保しなければなりません。
そのため、クラウド型よりコストがかかるのが一般的です。

2. 時間がかかる

オンプレミス型の場合、機器を調達するだけでも数週間から数カ月かかることもあります。そして、機器を調達してからシステムを構成していくことになりますので、実際に運用するまでにはかなりの時間がかかるケースがほとんどです。

 

クラウドのメリット・デメリット

前述したとおり、クラウドは利用料を支払うだけでサービスを利用することができる、ネット上の賃貸サービスのようなものです。したがって、オンプレミスでかかるような初期費用、システム管理費用、運用負担が大幅に軽減できることから、近年はクラウドサービスを利用するケースが増えています。

クラウドのメリット

クラウド型の最大のメリットは、何といってもシステム管理コストの負担や運用の負担が大幅に軽減できるという点です。

1. コストや時間がかからない

クラウドは、クラウド事業者が保有する設備を利用してシステムを運用管理するので、機器を調達する必要もありませんし、システム構築のための時間もかかりません。
サーバーを増強したりシステムを変更したりする場合にも、オンプレミスと比較すると格段に安価かつオンデマンドに実現することができます。

2. サーバーのスペックを自由に変更できる

クラウドは、サーバーのスペックを臨機応変に変更して利用することができるので、さまざまなスペック要件にも対応しやすいというメリットがあります。

3. 税金面のメリットが期待できる

オンプレミスからクラウドに移行することで、固定資産税がかからなくなったり減価償却等の省力化が実現できたりといった、税金面の効果が期待できる場合もあります。
どのくらいの節税効果があるかについては、早めに税理士に確認してアドバイスを受けておくと良いでしょう。

クラウドのデメリット

メリットの多いクラウドではありますが、「思い通りに構成できない」「トラブルに対応しづらい」など、いくつかのデメリットもあります。

1. 思い通りに構成できない

クラウドは、クラウド事業者が所有する設備の中にシステムを構築するので、限られた枠組みの中でしか構成を組むことができません。
スペックを変更することはできますが、枠組みを超えた柔軟な構成まで実現するのは難しく、オンプレミスほど自由にカスタマイズできるわけではありません。

2. トラブルに対応しづらい

トラブルが発生した場合にはクラウド事業者が復旧作業を行うため、トラブルシューティングしづらいという点も、クラウドのデメリットのひとつです。
インターネット経由で復旧の進捗を確認することはできますが、オンプレミスと比較すれば、状況を把握するのが遅れがちになります。
大手クラウド事業者になればなるほど、安全性や機能性は高まりますが、それでも状況を把握するという面では、オンプレミスより劣ることになります。

3. ずっとコストが発生する

クラウドは、使った分だけ支払うという「従量課金制度」のサービスです。
オンプレミスと比較すれば初期費用を安く抑えることができますが、使い続ける限り料金が発生します。
したがって、数年経つと自社で機器を調達し設備を購入・管理した方が安く済む場合もあります。

 

オンプレミスからクラウドへ移行する際の注意点

クラウド型の運用形態が登場した際には、初期費用を抑えることができる、工数がかからず利用を開始できるなどのメリットが重視され、クラウドへの移行が大きく進みました。 しかし、時間の経過とともに前述したようなクラウド化のデメリットも指摘され始め、「クラウド化したものの、思った通りの効果が期待できなかった」などの理由から結局またオンプレミスに戻ったというようなケースも多々あります。

したがって、オンプレミスからクラウドへの移行を検討する際には、「クラウドへの移行が大前提」として検討を開始するのではなく、システムの運用基盤や社内システムが、オンプレミスとクラウドのどちらが適しているか、以下のようないくつかのポイントに注意しながら綿密に比較する必要があります。

1. 優先順位をつける

オンプレミスで運用してきた既存システムをクラウドに移行するにあたっては、ビジネスに影響を与えないように綿密な計画を立案し、優先順位をつけることが必要です。
優先順位を決める場合には、システムの導入や運用にかかるコストの他にもアプリケーション開発、立ち上げの迅速化、システム拡張の柔軟性などさまざまな面から検討する必要があります。また、コンプライアンス対応やセキュリティ機能の充実度についても併せてしっかりチェックすることも重要です。

2. 運用管理コストを把握にする

移行を検討する際には、現在、オンプレミスで運用しているサーバーやストレージ、ネットワークなどのシステムリソース、データセンターの電力コストや設置スペース、人的コストなどの運用管理コストを正確に把握する必要があります。
どのくらいのコストをかけて運用しているか正確に把握することで、クラウドに移行した場合のコストとの比較シミュレーションが可能となります。

3. クラウドサービスの種類を検討する

クラウドサービスにはさまざまな形態がありますが、大きく「laaS(アイアース)」「PaaS(パース)」「SaaS(サース)」の3つに大別することができます。

  • laaS…メモリやCPU、ストレージ、ネットワークなどのインフラを提供します。
  • PaaS…アプリケーションを稼働するための基盤を提供します。
  • SaaS…ソフトウェア(サービス)を提供します。

上記3つのうち最も柔軟な対応が可能なのはIaaSですが、システムの種類によってはPaaSやSaaSを利用する方が、時間もかからずコスト削減も同時に実現できることもあります。 したがって、クラウドへ移行する際には、どのタイプのクラウドサービスを活用するのか十分に比較検討してから、選定することが重要です。

4. インスタンス構成の検討を行う

必要となるインスタンス(構成パラメーターを設定するためのデータベースなどのこと)構成を検討することも、クラウドへ移行する際の重要なポイントです。
また、現在使用している機能・ツール・製品のバージョンがクラウドへ移行した後でも利用可能かどうか、利用できるとしてもどのような影響を及ぼすかなどについても事前に精査しておきましょう。これらの点について確認しておかないと、例えば、クラウドへの移行後、オンプレミスシステムとの連携に際して帯域が保障されたWANが必要と判明し、当初試算した運用コストから大きな差違が生じてしまった……といった、想定外のコストが発生してしまう可能性があるからです。

5. クラウドの運用体制を把握する

オンプレミスとクラウドでは、システムの運用体制が大きく変わります。
オンプレミス型の運用形態を選択した場合には、自社サーバールームかデータセンターで運用をすることになりますが、クラウド型の運用形態を選択した場合にも、実際にそのうえで稼働するアプリケーションが正常に動作しているのかについては、引き続きサービスの監視が必要となります。したがって、それに対応した運用体制を確立しておくことが必要となります。また、トラブルが発生した時の対応も異なりますので、併せて対応マニュアルなども準備しておくようにしましょう。

 

まとめ

以上、オンプレミスとクラウドのそれぞれのメリット・デメリット、オンプレミスからクラウドへ移行する際のポイントなどについてご紹介してきました。
これまで述べてきたように、オンプレミスとクラウドはそれぞれ特徴があり、どちらを選択するのか、移行する際にはどのような点に注意すればよいのかは、個々のケースによって異なります。
したがって、クラウド化を成功させそのメリットを最大限に享受するためには、コンサルティングサービスを利用するのがおすすめです。
また、税金面でどれほどの効果が期待できるかについては、税理士に詳しいアドバイスをもらうようにしましょう。

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