2019年02月21日(木)1ブックマーク

「こんな人が必要に」「追加工事での資金不足」──建設業の経営課題を、先輩たちはどう解決している?

経営ハッカー編集部

何十種類もの専門職種に分かれ、各自がプロとして工事に取り組んでいる建設業界。ただ、「追加工事分の報酬がもらえなかったので、急に資金繰りが苦しくなった」「建設業の許可を取ろうと思ったのに、こんな人材を採用しないといけないと言われた」など、直面する課題は意外にも共通しているようです。

今回お話を伺った株式会社助太刀の我妻 陽一さん(以下、助太刀 我妻)は長年建設業界で働いてこられましたが、2017 年に新しい会社を設立し、そんな建設業界の課題を解決すべく IT 事業を立ち上げられました。そして建設業の起業・許認可支援を行うGOAL グループ 代表の石下 貴大さん(以下、GOAL 石下)、横浜総合事務所の代表社員で税理士の山本 歩美さん(以下、横浜総合 山本)をお招きし、建設業の経営をスムーズに行うためのヒントを伺いました。

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左からGOAL 石下さん、助太刀 我妻さん、横浜総合 山本さん

 

 ──本日はお三方の立場から、建設業の経営に関する話を伺えればと思います。まずは自己紹介をお願いします。

助太刀 我妻:
私はもともとサブコンの社員で、その後 12 年の電気工事の会社経営を経て、 IT 企業を立ち上げました。建設業、特に職人さんや親方のためのサービスは少ないので、業界経験者として建設業界をより良くできればと思っています。

助太刀」アプリはリリースしてから約1年ですが、5万人以上もの職人さんに登録いただいております。


建設現場と職人をつなぐアプリ「助太刀

GOAL 石下:
GOAL グループ 代表の石下です。行政書士法人 2 つと社労士法人 1 つから成っていて、建設業に関する会社設立や資金調達、許可の取得から入札、経審、許可の管理を支援しています。 後ほど詳しくお話ししますが、電子契約サービスや補助金・助成金の検索システムも提供しており、業務効率化の面でも支援させていただいています。

横浜総合 山本:
私は 20 年前に今の会計事務所に入社し、去年から新しく代表に、経営者という立場になりました。

国内では 400 社ほどお手伝いさせていただいています。 その中でもここ 2 年ほどは、建設業の企業の二代目にあたる方が「そろそろ承継に入りたい」「先代には先代の税理士がついているが、私の話を聞いてくれないか」という形で、友達のツテを頼って来てくださることも増えています。

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助太刀オフィスの裏でも工事が行われていました

 

仕事は安定しているが、予期せぬところから資金繰りのピンチが訪れることも

──建設業というと、今は東京五輪が間近で景気が良いイメージがあります。経営する上ではどんな苦労があるのですか?

助太刀 我妻:
現在は五輪に関わる工事が優先して行われていますが、そのため未着手の工事が増えているのが実情です。「五輪が終わると建設の仕事が無くなるのでは?」と言われることはありますが、止まっている工事が再開するので、五輪後もしばらくは仕事が急激に減るということは考え難いです。

GOAL 石下:
私は親方さん方の起業支援をしてきましたが、みなさん職人として仕事をしてきた中で独立されるので、もともと仕事は安定して受注できている印象です。

助太刀 我妻:
また建設業では、受注できる仕事の量が元請けに依存してしまうので、何年も先を予測するような事業計画を作成していない企業がたくさんあります。ただ、事業計画を作成していなくても年間10億円ほどの売上に到達できる企業も多い業界でもあります。

横浜総合 山本:
顧問先からも景気の良い話は聞くのですが、税理士としては、それくらいの売上の会社が一番危ない気がします(苦笑)。常用の方はいいのですが、二次請けの方、行政の仕事をメインに請けておられる方は入金が遅くなりますし、立替金が多いので心配です。

助太刀 我妻:
サブコンで働いていた経験から言うと、一次請けの資金繰りは悪くない。ただ、建設業界は重層構造なので、下請けになるほど入金までの期間(支払いサイト)は長くなります。

原価としては労務費以外に材料費があります。ゼネコンなどが手配する「A材」はいいのですが、下請けの工事会社が手配する「B 材」は立替金が必要になるので資金状況には要注意です。

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横浜総合 山本:
仕事が増えるほど立替金も増えるという状況では、当然ながら資金繰りは大変になります。ですので「伸びているときほどお金には気をつけてください」「本当に足りていますか?」と確認しています。

GOAL 石下:
創業時に融資を受ける方は少ないので、資金繰りが苦しくなって初めて相談する際は要注意ですね。いくら借りるかという金額も「なんとなく」決めて、借りすぎてしまうことは避けるようにアドバイスしています。

我妻さんが仰ったように、事業計画を細かく立てている方は少ないと感じます。お金を借りる前には社長と一緒に考えて、お互いに数字で認識すると経営状況を把握する良い経験になります。

横浜総合 山本:
建設業において、気をつけておくべきタイミング、資金繰りが苦しくなる要因はどんなものがありますか?

助太刀 我妻:
私の経験で言うと、一番大変なのは竣工のタイミングです。工事は 出来高が100% にならないと請求を100% 上げることができません。消費税などもまとめて請求するので、最後の 1 ヶ月は資金繰りが苦しくなります。

横浜総合 山本:
なるほど。

助太刀 我妻:
建設現場は、必ず追加工事が出てきます。追加工事は竣工したあとに契約し直さないといけないので、入金が遅れることになります。

そのほか、出来高がスムーズに請求できない場合や、工事自体が遅れてしまって予定通りの売上が入らない場合など、期待通りに入金されないときは苦労するので、前もって運転資金を借りておくこともありました。

横浜総合 山本:
顧問先から「追加工事分の報酬がもらえなかったので、今月の資金繰りが苦しい」という話をよく聞きます。

GOAL 石下:
建設業の “親方” さんは、気前のいい方が多い。たとえばお酒が好きな方が何かと「いいよいいよ」と気前よく支払う際も、経費という認識が薄い。そうやってお金を使いすぎていると、予想外の状況で資金繰りに苦労されることもあります。

万が一に備えておくことは経営において大切です。知識があるのとないのとでは違いますからね。

助太刀 我妻:
建設業の資金調達手段には、融資だけでなくファクタリング(※入金を早める手段)のサービスもあります。ただ、私の経験では数千万単位でしか使えなかったり、手続きも煩雑なものが多く、気軽には利用しにくいと感じていたので、当社でも工事代金をその日に受け取れる「助太刀 Pay」というサービスをつくりました。アプリから簡単に個人事業主の方でも使っていただけるので、もしものときに備えていただければと思います。

横浜総合 山本:
ファクタリングは昔に比べると身近になりましたよね。freee とも連携しているOLTA さんは2〜9 %の手数料で利用でき、土木やリフォーム業などの建設業をはじめ、広い業界で使われているそうです。

資金繰りが苦しくなる要因一覧
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資金よりも苦労するのは「人」の問題

──仕事は安定して入ってきて、資金繰りも気をつけてさえいれば大丈夫。建設業界で会社を経営する上で他に課題はあるんですか?

助太刀 我妻:
人の問題です。建設業界は高齢化が深刻なので、五輪が終わったら大勢が引退してしまうのではないかと、ゼネコンなどの方も心配しています。

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GOAL 石下:
人手不足は深刻な課題です。職人さんももちろん、社長さんが引退されると会社の経営、存続が苦しくなります。

横浜総合 山本:
親族以外で、社内の人材から新しい社長を任命することは難しいですよね。

助太刀 我妻:
相性の問題もありますし、そもそも本人が経営をやりたいかという問題もあります。

ですので、後継者の社長を社内で見つけるよりは、若い方が新しく会社をつくるほうが良いこともあると思います。たとえば、70代の親方が10代の職人を教育するのはなかなか大変ですよね。そのような状況では、年の近い若い親方や社長が増えることで、若い方の入職率が上がって建設業界が若い人たちにとっても魅力的な職場になると考えています。

横浜総合 山本:
若い方で社長になりたい方は多いのですか?

助太刀 我妻:
一匹狼の職人さんもいますが、仲間を集めて仕事をしている "親方" タイプの方からは、ゆくゆくは仲間を社員として雇用して "社長" になりたいという話をよく聞きます。

しかし、法人になるには、先ほどお話にあった資金繰りや、社会保険・雇用保険の加入などが必要になるほか、建設業の許可証取得には「経営管理責任者」という大きな壁があります。建設業許可証を取得している会社で、3年以上役員を務めていた人材を常勤で雇う必要が出てきます。この条件を満たすために、人材を見つけることはもちろん、創業期にその方の給料を払うことも難しいです。

GOAL 石下:
大変ですよね。当社は許認可のサポートもしているので、大手人材派遣会社さんと提携し、ゼネコンさんを卒業された 65 歳くらいの方を紹介したこともあります。

助太刀 我妻:
これまでの建設業界では、人を紹介してほしいときも仲間からの紹介しかありませんでした。それではこれから独立しようという若い人にチャンスが生まれづらいですよね。

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ですので、私は「助太刀」というサービスで、若くても建設業の会社を立ち上げて軌道に乗せられる人を増やしたいと思っています。助太刀で取引先や協力会社を見つけて、体制が整ったら親方から社長になれるという流れをつくっていきたい。

 

パートナー探しや経費の記録もスマホからできる時代に

──石下さんや山本さんは実際に若い個人事業主や社長さんを支援されていますが、どんな悩みを聞きますか?

GOAL 石下:
「経営の相談をできる人がいない」という悩みが圧倒的に多いです。それは専門家の知識不足や怠慢が原因でもありますし、お互いにパートナーとしてお付き合いできる関係が重要だと思います。

横浜総合 山本:
悩みがハッキリしていれば具体的にアドバイスできますが、まだ問題に気づいていない場合もありますね。ただ、経営のデータが共有できていないと専門家の勘も働きません。ですので、私はほぼ毎月会って「最近どう?」と聞くようにしていて、危なくなる前に対処しようとしています。

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GOAL 石下:
うちにかかってくる電話の 9 割は仕事と関係ない話なんですけど、私はそういう関係性が好きです。自分で解決できなくても「その悩みなら、頼れる人がいますよ」と提案することができます。

助太刀 我妻:
素晴らしいですね。そもそも建設業だと、税理士さんとは決算の時に年に一度しか会わない方も多いと思います(笑)。

GOAL 石下:
ある程度は深いお付き合いにしないと、結局「これをやっておいて」と頼まれるだけの下請けになってしまって、私たちも面白くないですから。

助太刀 我妻:
私が電気工事会社を経営していた頃、資金繰りのサポートを税理士の方にしていただくという経験はありませんでした。確かに、資金繰りなども含めて社長をサポートできる人がいるといいなと思います。

GOAL 石下:
特に、若い社長さんは資金繰りに限らず、業務効率化など前向きな話ができます。

横浜総合 山本:
スマホで簡単に税理士を探せる時代ですし、経営や資金調達のアドバイスなどもできる士業の方も見つけやすくなりましたよね。

パートナーとなる税理士・会計事務所が見つかる「税理士検索freee

助太刀 我妻:
若い職人さんはスマホでゲームをやっている方が多いので、スマホのサービスだと使ってもらいやすいです。「助太刀」のアプリも、彼らが馴染みのある SNS のように使える工夫をしています。SNSに近い使い勝手で、スマホで仕事のパートナーを見つけることを可能にできました。

GOAL 石下:
私たちも電子契約サービスが普及できたのはスマホのおかげです。私たちのサービスはスマホだけで利用できます。 

f:id:ats_satomi-iwamoto:20190220111818p:plain GOALが提供する建設業特化型電子契約サービス weee

また、助成金・補助金は現在 3,000 種類ほどあるのですが、知られていない上に探すのが大変なので、ほとんど使われていないという現状があります。そこで補助金や助成金の検索・マッチングサイト「みんなの助成金」をつくり、今は 7,000 社ほど導入してくださっています。

横浜総合 山本:
まずは顧問先の税理士に会社の状況を共有するところからでもいいので、習慣づけてもらえるとありがたいです。最初さえきちんとしておけば、あとは経費の記録もスマホでつけられますし、資金の調達も freee や助太刀 Pay ならスマホでできるような時代になっています。

私の顧問先だけが悩んでいるのかと思っていたのですが、人手不足などは建設業界全体の課題だったのですね。今日は貴重なお話、ありがとうございました。

 

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執筆:Hiroaki Takahashi
富山県高岡市出身。地方国立大学の工学部から音楽業界を経て、複数の IT 系事業会社にてマーケティングとクリエイティブの境界を消しながら "PR Editor (ディレクター)" として働く。「21 世紀における Public Relation とは、オープンソースの情報の塊である」という思想のもと、Web サイト・メディア、LP・SNS 広告、動画、プレゼン資料などの企画・制作業務を通して企業ブランドを編集する。
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