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2019年04月19日(金)

経営者なら知っておきたい。事業で悩んだ時に役立つ、プロジェクトマネジメント的解決方法

経営ハッカー編集部
経営者なら知っておきたい。事業で悩んだ時に役立つ、プロジェクトマネジメント的解決方法

JQの下田です。
プロジェクトマネジメント支援事業を軸に会社経営をしています。

「事業スピードが上がらなくて困っている」
「新規事業がうまく立ち上がらない」

経営者にとって、このような事業の悩みはつきものですね。特に新規事業においては、頭を悩ますポイントが次から次へと降ってきます。

私もこれまで、プロジェクトマネジメント支援事業をする中で、数多くの悩みや問題に向き合ってきました。しかし、そのような事業で生じる悩みは全て「プロジェクトマネジメントの力」で解決することができるのです。

今回は、事業で発生しがちな悩みや問題を例にあげながら、プロジェクトマネジメント的解決方法をお伝えしていきます。

【悩み①】新規事業の骨子が固まらず、いつまでもスタート地点で足踏みしている

「新規事業の骨子が決まらず、何も進んでいないのに、ただただ時間だけがすぎていく」
「で、結局何するんだっけ?」

このように超初期段階で悩みを抱えている場合、そもそも新規事業の立ち上げ方を知らないことに問題があります。手順やフレームワーク、ステップを知らずに感覚値で進めてしまうと、イメージだけが膨らみ、「こんなことができたらいいよね、あんなことができたらいいよね」と、ひたすら夢物語を語ることになります。この夢物語を語ることが新規事業の構想だと思っているのだとしたら、いますぐやめたほうがいいです。

私たちプロジェクトマネージャーは、新規事業を始めるときでも、どんな時でも必ず作業の枠組みとなる「フレームワーク」を作って進めていきます。その中で、新規事業においてよく利用するフレームワークが2つあります。一つ目が、Googleの提唱する「デザインスプリント」。もう一つが、リーンスタートアップ提唱者であるエリック・リース氏が提案する「リーンキャンバス」です。この2つの枠組みを取り入れながら、新規事業の立ち上げを進めていきます。

大事とは言いつつも、デザインスプリントの場合は、5日間で「デザイン・プロトタイピング・ユーザーへのアイデア検証を行う」というプロセスのため、承認ステップが多く、またスキルのサイロ化が進んでいる日本の企業、特に大企業においては非常に難しい話になってしまいます。

その場合には、5日間といわず、現実的な日程で下記の3ステップをやってみてください。これは、デザインスプリントとリーンキャンバスを組み合わせて、私が実現しやすいプロセスに展開したものです。

【新規事業立ち上げの3ステップ】
①課題設定と分析洞察
②アイデア出しとサービスの具体化
③MVPの定義

第一ステップでは、新規事業で解決すべしと設定した課題が夢物語なのか本当に実在する課題なのかをリサーチします。さらに、その課題の真因はどこにあるのか、どこが重要なポイントなのかを深く洞察していきます。

第二ステップでは、課題や真因を解決するためのアイデアをひたすら出し、出てきたアイデア同士をぶつけて、どれか一つの良いアイデアに絞り込んでいきます。さらに、リーンキャンバスを用いて、サービスのビジネスモデルを整理していき、ざっくりとフィージブルかどうかをチェックしていきます。

最終の第三ステップとして、MVPを定義します。MVPはMinimum Viable Productの略で、「ユーザーにとって何が一番大切な体験なのか」を定義していきます。第二ステップでアイデアを絞り込んだとしても、だいたいビックアイデアで膨らんでいる状態なので、それを検証できる最小限の機能に絞り込んでいくわけです。

このようにしてしっかりと作業の枠組みを決めて、それに沿って進めていけば、新規事業の初期段階で足踏みすることは少なくなるでしょう。

【悩み②】スムーズに物事が決まらない

「なかなか意見が一致しなくて、まだ決めかねています」
「そこは〇〇に最終確認を取らないとなんとも・・・」

せっかく新規事業が始まったのに、これでは物事がスムーズに決まらず、どんどんプロジェクトの進行が遅れていきます。これは明確に決裁者つまり「意思決定者」を決めていない、または、決裁者を複数人置いているという体制に問題があります。

プロジェクトマネジメントの現場では、必ず最初に決裁者や他のメンバーの責任範囲を決めて体制図を作成します。そうすることで、「この用件は誰に聞けばいいのか?」など関係者も動きやすくなるのです。

ここでポイントは2つあります。

一つ目は、決裁者は必ず一人にすることです。責任分配したいなどの意図が働いて、決裁者を複数人置いているプロジェクトをよく見かけます。しかし、人の意見は簡単には一致しません。一致させるための調整でスピード感が失われていきます。決裁者は一人が基本です。

二つ目は、「本当の」決裁者も体制図に入れることです。ありがちなのが、「ひとまず部長を据えておこう」と仮の決裁者を置くパターン。この部長が決裁権を持っていればいいのですが、実は部長には決裁権はなく、いつも社長に最終確認が必要だなんてことがよくあります。この場合には、社長もきちんと体制図に盛り込み、最終決定の会議にだけは参加してもらうようにします。

この問題は、プロジェクトの初期段階で決裁者をきちんと決めておくことや体制図を作ることで防げます。もしすでに事業が進んでしまっている状態でも遅くはありませんから、今からでも作ってみてください。

【悩み③】期待していたアウトプットが出てこない

「イメージと違うアウトプットが出来上がった」

このような悩みを抱えた場合にはまず、「事前にアウトプットのイメージをすり合わせたか」振り返ってみましましょう。ほとんどの場合、イメージのすり合わせができていないことに問題があります。当然ながら、依頼者と作業者のスキルや知識のレベルには多少なりとも違いがあるでしょうし、会社が違えば粒度のレベル感や分析視点も違ってくるでしょう。社長と部下では、見ている視点も違います。アウトプットに対する期待値の違いが生じてしまうのは当たり前です。

プロジェクトの現場においては、必ず作業に入る前にアウトプットイメージをすり合わせます。複数の会社が関わる場合には、会社によって定義がバラバラですから、まずは認識を合わせるところから始めます。今回はこういうレベル感で作りましょうと合意した上で、作業に入ってもらうのです。依頼者がきちんとアウトプットイメージを明示すれば、アウトプットのずれは最小限に防げます。

【悩み④】現場でお見合いが発生しがち

「これ〇〇がやってくれるんじゃないですか?」

事業を進めていくと、このように現場でお見合いが発生して作業がスタックし、遅延に繋がってしまうことがよくあります。これは、作業を始める前に、作業計画をたてて、発生しうる作業を網羅的に把握しないまま進めていることに問題があります。

このような問題が発生しないよう、プロジェクトマネジメントにおいては必ず、作業工程ごとの計画書を作ります。先に体制図の話をしましたが、これも同様、計画時には必ず発生するタスクを網羅的に洗い出すとともに、その作業者も明確にしていきます。そうすれば、お見合いの発生が無くなります。

例えば、スマホアプリのリリース作業に関する計画であれば、

  • Apple社にアプリ申請をするのは誰か
  • その申請文章は誰が書くか
  • プレスリリースを公開するのはどの会社か

などと、ビジネス面も含めて個別の作業整理と個別の責任分担を改めて決めていきます。

その都度決めていきましょうと進めると、必ず抜け漏れとお見合いが発生するので、最初に決めた上で作業にうつるべきです。

しかしながら、どれだけ最初に計画を入念に行っておいても、事業が進めば当然計画が変わってきたり、新たなタスクが見えてきたりするもの。その場合は、変わった点を課題として管理し、都度、作業の担当を見直していきましょう。

【悩み⑤】関係部署が協力してくれない

「オープン直前までこぎつけたのに、別部署が協力してくれずに足止めをくらっている」

ベンチャー企業やスタートアップの場合には会社全体で進めていくことが多いのであまりない問題かもしれませんが、企業規模が大きくなってくると、一部署内で事業が完結することはまずあり得ません。

この問題が発生する場合の多くもこれまでの問題と同様、事業の計画や体制を定義せずに始めていることに原因があります。そんなこと?と思われるかもしれませんが、最初に定義しているか、していないかで全然違います。

もしあなたが協力を要請された部署だった場合、いきなりお願いをされてすぐに動けるものでしょうか。きっとそんなことはないはずです。部署内のスケジュールや人員調整が必要なら、なおさらですよね。

プロジェクトマネジメントにおいては、関係各所のスケジュールも含めた調整もとても重要な仕事です。事前に計画の段階で相談しておくことができれば、関係者のスケジュールを加味した計画を作れるので、足踏みすることもありません。

ちなみに、ここでは協力を仰ぐ際に使う事業やプロジェクト全体の計画書も重要です。
「なぜこのプロジェクトをやるのか」という、5W1Hの「WHY」がしっかりと説明できていますか?このプロジェクトは何のためにあるのか、そしてどんな役割を果たしてほしいのか、それが伝わらなければ、協力してもらえません。今一度計画書を見直してみましょう。


「段取り八分」という言葉がありますが、事業も全く同じことが言えます。プロジェクトマネジメントに従事していても、段取りが命だと実感しています。

事業における悩みはプロジェクトマネジメント的に解決をして、事業スピードを加速させましょう。


執筆:下田 幸祐(しもだ こうすけ)
プロジェクトマネジメントの専門会社、株式会社JQ代表取締役社長。大学卒業後アクセンチュアに入社。官公庁本部にて政府案件のプロジェクトを担当し、マネージャー昇進後に独立。JQを立ち上げる。デジタルマーケティング系案件、生損保案件、大規模開発案件を得意領域とする。
note:https://note.mu/shimonu
Twitter:https://twitter.com/jqshimoda

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