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2019年06月07日(金)

『経営に役立つ“管理会計”』第二回:目的地はどこですか?

経営ハッカー編集部
『経営に役立つ“管理会計”』第二回:目的地はどこですか?

皆さま、こんにちは、公認会計士・税理士の矢野です。この連載では、経営者の皆さまと、「経営に役立つ“管理会計”」について考えていきます。前回は、「経営者の方が自信を持って経営判断を下すために参考となる情報を提供するもの」が「経営に役立つ“管理会計”」だという記事を書きました。そして、「経営に役立つ“管理会計”」の大前提が「PDCAサイクルを回すこと」ということをお伝えしました。
第2回目の今回は、PDCAサイクルの“P”に焦点を当て、「経営者の方が自信を持って経営判断を下すため」の“計画”について考えていきたいと思います。

1.地図を広げて旅に出よう!

皆さんは、初めての場所に行く時に、次のうち、どちらの行動をとりますか?

 とりあえず「こっちの方向だ!」といって出発する。
 地図やアプリなどでルートを確認し、道順を計画してから出発する。

これまで訪れたことのない目的地に、車で向かう方は、住所を調べ、カーナビをセットしてから出発するという方が多いのではないでしょうか?また、歩いて向かう方は、スマホの地図アプリで目的地をセットして、道案内を確認しながらゴールを目指す、という方が多いのではないでしょうか。

初めての場所に向かう時に、ルートを計画してから出発するように、きっと、経営者の皆さまも、事業の目的、実現したい世界、貫きたい理念など、“経営のゴール”に向かうための道順を“計画”して日々奮闘されていることとお察しします。

今回は、そんな“計画”に関するコラムです。

PDCAサイクルのP(計画)に該当する言葉としては、経営計画や事業計画、予算など、いくつか思い浮かぶものがあります。これらは、書籍や記事によって多少使われ方のニュアンスが違う抽象的な言葉かと思いますので、このコラムで“計画”といったときには、どのような言葉をどのような意味で使うか、最初にお伝えしておきたいと思います。
ぜひ“言葉”に惑わされず、“意味”に着目して読み進めてください。

経営計画 ⇒経営理念を達成するためにどんな事業を行うかを決めたもの。
事業計画 ⇒各事業において、どのようなアクションを実行し、どれくらいの利益をあげるかを計画したもの。
予算 ⇒各事業の目標利益を達成するために、どのくらいの経費をかけ、どのくらいの売上を獲得するかを計画したもの。

もう少し具体的にイメージしていただけるよう、簡単な形にはなりますが、架空のイベント会社T社を例にしてお示しします。(翌年1年間のもの、という想定でご覧ください。)

経営計画 「人生を楽しむことができている人を増やしたい」という経営理念を達成するために、①イベント企画事業、②コミュニティ運営事業を行う。
事業計画 ①イベント企画事業では、1,000人の来場者に人生を楽しんでもらえるよう、年度末に大型イベントを実施し、計500万円の利益を獲得する。
②コミュニティ運営事業では、5,000人のメンバーに人生を楽しんでもらえるよう、計50のテーマ別コミュニティを運営し、計250万円の利益を獲得する。
予算 ①イベント企画事業で500万円の利益を確保するために、1,000万円の経費をかけ、1,500万円の売上を獲得する。
②コミュニティ運営事業で250万円の利益を確保するために、750万円の経費をかけ、1,000万円の売上を獲得する。

いかがでしょうか。私が伝えたいイメージは伝わっているでしょうか。

旅行の際、あらかじめ旅程を計画しておき、「何時に途中のどこどこにいるはずだ!最終的には何時に目的地に着くはずだ!」という想定をしておけば、実際の途中地点への到着時間を知ることで、順調に目的地に向かうことができているか、遅れているならばどれくらい急げばよいか、自信を持って判断することができます。

経営においても、例えば、月次予算を設けて、実際の状況と比較をする体制を整えておけば、事業が順調に進んでいるか、対処すべき課題は何か、自信を持って判断する材料を揃えることができます。

経営者の皆さまの想いをカタチにした経営計画、それを事業別の利益に落とし込んだ事業計画、そして、その利益の根拠となる予算、これら“経営の地図”を広げて、皆さまの想いを達成する旅に出ましょう!

 

2.旅の“順調さ”を知るための目安は?

本当の旅行であれば、「いつ、どこにいるか」という点が旅の順調さを測る目安になります。言い換えれば、時間と場所です。

経営の場合はどうでしょうか?「いつ」という時間の観点は経営にも言えることですが、旅で言う“場所”は、経営で言うと何に当たるでしょうか?
お察しの通りかと思いますが、売上高や利益など、“数値”で表すことができる目標と言えるのではないでしょうか?

ただ、一口に“数値”といっても、様々な“数値”があると思いますので、先ほどのT社を例に挙げて整理したいと思います。

「コミュニティ参加者5,000人の中から、1,000人の方に年度末の大型イベントに来場してもらい、イベント企画事業で500万円の利益を出す。5,000人の方にコミュニティに参加してもらうためには、SNSで“人生を楽しみたい”に共感してくれる50,000人にフォローしてもらう。」

という事業計画があった場合に、これを絵にしてみると、以下のように表現出来ます。

この中で、“500万円の利益”と、“人生を楽しみたい50,000人のSNSフォロワー”という数値に着目してみてください。
最終的な目標である、“500万円の利益”を管理会計的にKGIと言い、その過程の数値目標である“人生を楽しみたい50,000人のSNSフォロワー”をKPIと表現します。

 KGIは最終的な目標値。(Key Goal Indicator)
 KPIは最終目標を達成するための鍵となる数値。(Key Performance Indicator)

目標となる“数値”も、最終目標(KGI)をブレイクダウンして、KPIまで落とし込むと具体性が増し、最終目標の達成確率が高まります。

現状お持ちの“計画”を見直していただいて、さらにブレイクダウンして具体化可能な“数値”があるとしたら、業績アップのチャンスです!経営が、計画通りに順調に進んでいるか、その目安となる、ご自身の会社に最適なKGI、KPIを見つけてください!

 

3.旅のしおりはすぐ出せるところにしまっている?

目的地に向けて順調に進んでいるかどうかを確かめるためには、旅の計画を記しているしおり(旅程)が目安となりますが、そもそも、そのしおりをしまった場所を忘れてしまって、探すのに戸惑っていたら、この先どう進んでいいか、確認するのに時間がかかってしまいます。

これは経営にとっても同じことが言えるのではないでしょうか?予算と実績とをスピーディに比較することができたら、その先必要なアクションもスピード感を持って検討できます。

この点、例えば、私がオススメしているクラウド会計freeeは、必要な情報がリアルタイムに集められ、いつでも経営者が意思決定できるようなプラットフォームになることを目指す「リアルタイム経営ナビゲーター」という思想のもとに開発が進められており、その中でも、プロフェッショナルプランでは、予算と実績との比較がスピーディにできる機能が利用可能です。

まずPDCAサイクルのP(計画)の段階で、具体的なKGI、KPIを設定し、進むべき方向を明確にすること、そして、その計画をスピーディに確認できるツールを活用することによって、経営判断の材料となる情報が、必要な時に手に入る管理会計体制を整えることができます。

 

4.旅の計画に無理はないか?

経営計画は、何も自分たちだけが使うものではありません。上場を目指すようであれば審査機関のチェックが入りますし、融資を受けるためには金融機関のチェックが入ります。
第三者が経営計画をチェックするうえで重視するのは“合理性”。合理的な根拠のある計画となっているかどうかです。

会社が今後、そんな道を歩もうとしているか、その計画に無理はないか、という観点で合理性のチェックが行われます。例えば、先ほどのT社のケースでは、「コミュニティ参加率10%」、「来場率20%」は実現可能な目標であるのか、絵に描いた餅になっていないか確認されることでしょう。
旅の計画は、このような“合理性のチェック”を受けることを前提に作成していきましょう。

以上、今回のコラムでは、PDCAサイクルの“P”に焦点を当て、「経営者の方が自信を持って経営判断を下すため」の“計画”とは何か、についてお伝えしました。次回は、“D”と“C”について深掘りしたいと思いますので、ご期待ください!

執筆者:矢野裕紀(やの ゆうき)

公認会計士・税理士

矢野会計事務所/代表
つながるサポート株式会社/代表取締役

矢野会計事務所では、クラウド会計freee活用支援を主軸に、“数字や仕組み”でお客さまの目標達成をサポート。つなサポでは、~1/1のひとつなぎ~をテーマに、“場づくりやひとつなぎ”を提供。

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