『経営に役立つ“管理会計”』第三回:現在地はどこですか?
皆さま、こんにちは、公認会計士・税理士の矢野です。この連載では、経営者の皆さまと、「経営に役立つ“管理会計”」について考えていきます。
第1回目は、「経営者の方が自信を持って経営判断を下すために参考となる情報を提供するもの」が「経営に役立つ“管理会計”」だという記事を書きました。そして、「経営に役立つ“管理会計”」の大前提が「PDCAサイクルを回すこと」ということをお伝えしました。
前回の第2回目は、PDCAサイクルの“P”を深掘りし、「経営者の方が自信を持って経営判断を下すため」の“計画”についてお伝えしました。
3回目の今回は、掲げた計画を達成するためにはどんなことが必要か、“D”と“C”に焦点を当てて話を進めていきたいと思います。
1.カーナビが便利な理由
皆さんは、車で遠出をするとき、カーナビを利用する方が多いのではないでしょうか。(車に乗らない、という方は、スマホの地図アプリで歩く順路を検索するようなシーンに置き換えて読んでみてください。)
カーナビを使うときは、目的地を設定することで、いくつかのルートが提案されますね。ドライバーはこの中から好みのルートを選んで、道順を登録します。ルートが決まったらいざ出発です!
→ここまでが、管理会計でいうPDCAサイクルのP(計画)、前回の記事でお伝えした部分です。話をカーナビに戻します。
出発して、最初のうちは、カーナビが示す道順通り、順調に目的地に向けて進んでいくことでしょう。しばらくして、同乗者との会話も盛り上がってきた頃に…「あっ!今の信号、右に曲がるんだった!」とか、「あっ!今の高速道路の出口が降りるべきところだった!」とか、カーナビが示してくれていた道から外れてしまうという経験、皆さまも一度はあるのではないでしょうか?
→経営でも、計画通りにいかないことはよくある話だと思います。こんなとき、カーナビだったら…
進む道を間違えてしまったとしても、(一瞬焦りますが)カーナビはすぐに次の順路を提案してくれて、落ち着いて運転を続けることができますよね。これがカーナビの便利なところ!もうカーナビなしではどこにも行けません!
→経営にも、カーナビのようなものがあればどんなに便利なことか…
2.カーナビの提案力の源は何か?
さて、道を間違えてしまっても、すぐに次の提案を出してくれるカーナビですが、なぜそれが可能なのでしょうか?それは、カーナビが次の情報を持っているからです。
- 目的地
- 目的地までの予定順路
- 現在地
ドライブをスタートする際に、カーナビに目的地を設定します。そうすると、現在地から最適な予定順路を提案してくれます。ドライブがスタートすると、カーナビは、常に予定順路と現在地を比較し続けてくれます。その結果、現在地が、予定順路から外れてしまった場合、すぐに次の順路を提案してくれるのです。
ここでのポイントは、カーナビが現在地をリアルタイムで把握できている点です。
仮に、カーナビが、30分前にいた位置しか把握できないとしたらどうでしょうか?カーナビは現在地を把握できないので、予定順路通りに進めているかを把握することができず、例え道を間違えていたとしても、新しい順路の提案をすることができなくなってしまいます。やはり、目的地に計画通りに辿り着くためには、リアルタイムな現在地把握が必要不可欠だということが言えますね。
3.カーナビだって“PDCA”している
カーナビを活用して目的地を目指すことをPDCAサイクルに当てはめるならば、次のように考えられます。
P(計画)…目的地の設定と予定順路の決定
D(実行)…予定順路に従って走行
C(確認)…現在地と予定順路のリアルタイムな比較
A(改善)…予定順路を外れた場合に新たな順路を提案
カーナビは、リアルタイムで現在地のC(確認)を行うことができるため、すぐさまA(改善)を提案でき、ドライバーはそれにしたがって、的確にD(実行)することができます。このPDCAサイクルによって、私たちは、例え途中で道を間違えたとしても、目的地にたどり着くことができるのです。
このカーナビのPDCAサイクルを、経営に当てはめるとどうなるでしょうか?
4.経営において“カーナビ”の役割を果たすものは何か?
ここまでは、“カーナビ”の話をしてきましたが、一方で、経営においても、カーナビのようにリアルタイムに経営の現状を把握し、計画との乖離をタイムリーに把握できるようなツールがあれば、設定した計画を達成しやすくなるのではないでしょうか。
私がオススメしているクラウド会計freeeは、必要な情報がリアルタイムに集められ、いつでも経営者が意思決定できるようなプラットフォームになることを目指す「リアルタイム経営ナビゲーター」という思想で開発が進められており、実際に、この「リアルタイムな現状把握」、「タイムリーな予実分析」が可能となっています。
例えば、オンラインバンクとの同期による入出金明細の自動取り込みや、クレジットカードの利用明細の自動取り込み、(飲食店など各種ショップにおいては、)レジアプリとの連携による売上情報の自動取り込み機能などが基本機能として備わっているため、「リアルタイムな現状把握」が実現できます。
また、上級プランであるプロフェッショナルプランであれば、実績集計をする会計ソフト内で同時に「経理プランニング」の機能と、「予実分析」の機能が利用できるため、「タイムリーな予実分析」が可能となります。
車の運転も、経営も、計画通りに実行することは大切です。しかし、現実として、予定通りに行かない場合があるはずです。ただ、そのような場合でも。リアルタイムで現状把握を行い、計画との対比をタイムリーに行うことができれば、“異変”にいち早く気付くことができ、大きな問題になる前に対処することが可能になります。
経営の現状を見える化する会計ソフトは、ぜひ「リアルタイムな現状把握」、「タイムリーな予実分析」ができるものをお選びいただければと思います。
執筆者:矢野裕紀(やの ゆうき)
公認会計士・税理士
矢野会計事務所/代表
つながるサポート株式会社/代表取締役
矢野会計事務所では、クラウド会計freee活用支援を主軸に、“数字や仕組み”でお客さまの目標達成をサポート。つなサポでは、~1/1のひとつなぎ~をテーマに、“場づくりやひとつなぎ”を提供。