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2019年06月11日(火)

資金調達とは?さまざまな資金調達方法と事業計画作成のポイント

経営ハッカー編集部
資金調達とは?さまざまな資金調達方法と事業計画作成のポイント

新規事業を始めるにも、既存の事業を拡大するにも、先立つ資金が必要になります。自己資金で必要な事業コストをすべてまかなえればよいのですが、現実的にはなかなかそうはいきません。そのようなときに外部から資金調達をする必要があります。今回は、資金調達の方法や資金調達に必要な事業計画書の書き方について解説します。

資金調達とは

資金調達とは、会社設立や事業に必要な資金を集めることです。資金調達にはさまざまな方法がありますが、どの方法を採るかにより担保や調達にかかる時間、金利などが大きく異なりますので、どこから資金を得るかを戦略的に考えることが必要です。

4つの資金調達方法

一般的によく使われる資金調達方法は、以下の4つがあります。

① 借入を増やす(デットファイナンス)
②資本を増やす(エクイティファイナンス)
③今ある資産を現金化する(アセットファイナンス)
④クラウドファンディング

上の3つは資金調達の基本ですが、最近では第4の方法としてクラウドファンディングで資金調達するケースも増えています。それぞれの方法については、以下で詳しく解説していきます。

資金調達方法①借入を増やす(デットファイナンス)

資金調達の方法としてもっとも思い付きやすいのが、銀行や信用金庫などから融資を受ける(借入をする)ことではないでしょうか。最近は金融機関も創業融資に力を入れているという触れ込みですが、各金融機関ともそれぞれ融資目標の枠を持っていて、枠の大きさにより積極的に貸してくれるところもあればそうでないところもあります。そこでまずは、国として開業促進をしなければならないミッションの一翼を担う公的な金融機関に当たるのが先決と言えます。

日本政策金融公庫の融資制度を利用する

資金調達をしたい場合、最も利用しやすいのが、政府系金融機関である日本政策公庫の融資制度です。中でも特に創業時にあたり知っておきたいのが新創業融資制度です。この制度を利用すれば、スタートアップでも無担保・無保証でも融資が受けられます。その他、「女性、若者/シニア起業家支援資金」「新事業育成資金」といった制度もあるため、いろいろ調べて当たってみるとよいでしょう。

信用保証協会の制度融資を利用する

次に、信用保証協会の制度融資を受ける方法もあります。信用保証協会とは、中小零細企業が金融機関から事業資金として融資を受ける際に、保証人となってくれる公的機関のことです。ただし信用保証協会の制度融資を利用する際には、信用保証協会に一定の保証料を支払う必要があります。また、信用保証協会に保証人になってもらう場合、代表者(経営者)が連帯保証人にならなければならない点は要注意です。
 
信用保証の申込窓口は、「金融機関」と「信用保証協会」です。そのほか、地方自治体や商工団体(商工会議所や商工会、中央会等)でも受付を行っているケースもありますが、ここでは2つの事例を紹介します。

1.金融機関経由での申込

金融機関の窓口で融資を申し込む際に、信用保証の申込手続を行います。
金融機関が融資適当と判断した場合、必要書類を金融機関経由で信用保証協会に提出します。

2.信用保証協会での申込

各地域にある信用保証協会で相談の後、申込書を受け取ります。申込書に必要書類を添付の上、提出します。
※信用保証協会によって異なりますので、訪問前に最寄りの信用保証協会に問い合わせる必要があります。

銀行、信用金庫で借り入れをする

銀行や信用金庫からの借入は、もっともオーソドックスな資金調達方法です。しかしながら、すでに借入実績のある企業の新規事業には利用しやすいものの、純新規の融資はハードルが高いです。よって、先述の信用保証協会枠でまず借り入れを行い、返済の実績を積んだうえで、銀行、信用金庫の融資の利用を相談するという方法がもっとも確実です。

ビジネスローンを利用する

事業に対する融資である、ビジネスローンを利用する方法もあります。ビジネスローンは金融機関が独自の審査スコアリングで、無担保でも貸出できるように開発したものです。商品により使途が事業性資金に限定されているものもありますが、担保や第三者保証人は不要で、100~1,000万円まで融資を受けられるものもあります。融資を受けられるまでの期間は即日のものもあれば数週間かかるものもありますので、必要に応じて商品を選ぶことが必要です。ただし、金融機関にとってのリスクをコストとして盛り込んでいるため金利がやや高い点に注意すべきでしょう。

デットファイナンスのメリット・デメリット

<メリット>

  • 自己資本比率を維持できる。つまり、会社を乗っ取られるリスクがありません。
  • 低コストで借り入れができる。
  • 「借りたお金をきちんと返済できる会社」として対外的な信頼が高まる。

<デメリット>

  • 利益が出ている・出ていないに限らず、期日が来たら利子をつけて返済しなければならない。
  • 多くの場合、担保や保証人が必要になる。
  • 審査に時間がかかることが多い。

資金調達方法②資本を増やす(エクイティファイナンス)

資金調達には、外部から出資を受けて資本金を増やす手段もあります。大きく分けて、個人から出資を受ける方法と法人から出資を受ける方法があります。

エンジェル投資家から出資してもらう

エンジェル投資家とは、個人で起業家や経営者に投資を行っている投資家のことです。エンジェル投資家が投資を検討する際は、エンジェル毎にさまざまな要素が考慮されます。事業の将来性・継続性だけでなく、経営者の熱意や人柄が重視されることもあります。エンジェル投資家自身も元起業家であることが多いため、経営のアドバイスやサポートを受けられることも大きなメリットです。
 
しかしながら、エンジェルの個人的な志向が入りますので、よく相性をみて判断する必要があります。たとえば、エンジェルとして投資先をIPOをさせたいのか、M&Aでバイアウトしたいのか、志が共有できれば良いのかといったことなどです。

ベンチャーキャピタル(VC)から出資してもらう

ベンチャーキャピタルは、起業家や経営者に出資することで、ハイリターンを狙う投資専門の会社のことです。自ら投資したお金を何倍にもすることを目的としているため、経営者自身の性格・能力だけでなく、高い将来性や差別化できるテクノロジーやビジネスモデルなど、投資の際にはさまざまな要素を考慮して投資が行われます。ハイリターンを期待する分、経営に積極的に関与しようとするベンチャーキャピタルもあることに留意しましょう。また、事業の実績が一定以上出ていないと投資をしてもらえないので、創業当初はエンジェルからの資金である程度まで事業を立ち上げる必要があります。

エクイティファイナンスのメリット・デメリット

<メリット>

  • 借入などと異なり返済が不要なため、金利などを気にせず資金を手にすることができる。
  • 物心共にさまざまな側面からサポートしてくれる場合がある。
  • エンジェル投資家は、自身の意志決定により投資するのでスピードが速い。

<デメリット>

  • IPOやバイアウトなども視野に入れた事業計画を立てる必要がある。
  • 経営に干渉されることがある。
  • 買収されたり他社と合併させられたりするリスクがある。

資金調達方法③今ある資産を現金化する(アセットファイナンス)

また、手元にあるさまざまな資産を現金化して資金にあてる方法もあります。現金化できる資産にはプロダクトなどの動産から土地建物といった不動産まで、さまざまなものがありますので覚えておくとよいでしょう。

ファクタリング(売掛債権の流動化)

ファクタリングとは、売掛債権を買い取ってもらうことで資金を得る方法です。ある企業が持つ売掛債権をファクタリング会社に譲渡する代わりに、ファクタリング会社から売掛金相応分の金額を受け取ることができます。ただし、ファクタリングの手数料は銀行からの融資より割高になります。

流動資産担保融資(ABL)

流動資産担保融資とは、在庫や原材料といった流動資産を担保に融資を受ける方法です。流動資産を担保として動産譲渡登記をすることで、資金調達が可能になります。売却するまで眠ったままになっている在庫を資金調達に活用できるため、近年注目を集めています。

不動産の証券化

不動産証券化とは、流動性の低い不動産を金融商品化(証券化)することで、資金調達する方法です。いったん不動産を資産から切り離して、便宜上設立した会社に譲渡して得られた売却代や運用から生じた利益が資金として利用できます。また、投資家に証券化した不動産を投資の対象としてもらうことで、資金を得ることも可能です。

アセットファイナンスのメリット・デメリット

<メリット>

  • 担保があるので事業計画が不要で、現金を手にできる。

<デメリット>

  •  評価が思った以上に低く見積もられたり、手数料などがかかったりするため現金化したときに本来の価値より金額が下がってしまう。

資金調達方法④クラウドファンディング

近年盛んに行われている資金調達方法に、クラウドファンディングがあります。クラウドファンディングには大きく分けて次の5つの種類があります。

1. 寄付型

あるプロジェクトに対して、インターネットで寄付を募る方法です。「災害復興」などのあいまいなテーマではなく、「○○を○○したい」という具体的なプロジェクトが掲げられており、それに対する支援金を集めることが特徴です。支援者へのリターンは活動報告やお礼の手紙であることが多く、商品やサービスとしての見返りはありません。

2. 購入型

購入型とは、あるプロダクトを開発・製造する際に資金を集めるのに利用される方法です。クラウドファンディングの実施者は、支援者から集めた資金でプロダクトを開発・製造し、支援者はリターンとしてそのモノやサービスを受け取ることができます。形態としては予約購入に近い形と言えます。

3. 融資型(ソーシャルレンディング)

融資型とは、クラウドファンディング事業者がインターネット上で資金を集め、資金調達したい企業に融資を行い、一定期間後に元本と利息を支援者に返金する方法を指します。融資先は国内・海外問わずさまざまな企業がありますが、海外のものは利回りが良い代わりに為替リスクなどを含んでいることに注意が必要です。

4. ファンド投資型

ファンド投資型とは、ある事業に対する出資者を募り、その後売上に基づく分配金を支払う方法のことを言います。出資者は、その事業で作られた商品やサービスも特典として受け取れることも少なくありません。ファンド投資型クラウドファンディングを行う際は、上場企業ほどではありませんが決算の開示や事業計画も必要になるため、慎重に準備を進めなければなりません。

5. 株式投資型

株式投資型とは、非上場企業に対してインターネット上で株式投資を行い、リターンとして株式を発行する方法です。支援者は、将来IPOやバイアウトの際に大きな収益を得られる仕組みになっています。しかしIPO前の場合は流動性がないため、他人に株式を譲渡できない点に注意すべきでしょう。株式投資型クラウドファンディングを行う際もファンド投資型と同様に決算の開示や事業計画も必要になります。

資金調達のための事業計画書の作成のポイント

銀行からの融資や投資家などからの出資を受ける際は、事業の成長性や返済の確実性を示すために事業計画書を作成することが必要です。では事業計画書にはどのようなことを書けばよいのでしょうか。

事業計画書とは

事業計画書とは、会社がどのような戦略で利益を出して事業を成長させるのか、将来はどのような姿になっているのかを説明するための資料のことを指します。具体的に「これを書けば確実に融資や出資が得られる」というものはありません。しかし、いつ頃どれくらい利益が出そうか、いつ頃EXITするかなどについて、できるだけ明確な数字とその根拠を示すことで、銀行や投資家を納得させられる可能性は高くなります。
 
ただし、銀行には保守的な数字を見せ、投資家にはアグレッシブな数字を見せるといった、お金の出し手のタイプによって書き分けることが重要です。

事業計画書はなぜ必要なのか

事業計画書が必要なのは、確実に事業で利益を出すことができ、借金を返済できる事業者であることを示すためです。銀行は貸倒を防ぐため、確実に返済の見込める事業にしか融資をしたくないものですし、投資家も利益を得られない事業には出資したいとは思いません。そこで、銀行や投資家にお金を出す価値があると思わせるような事業計画を作成することが求められるのです。

事業計画書の書き方

事業計画書には、最低限以下の4つを記入します。また、事業計画書全体の概要をA4サイズ2枚程度にまとめたサマリーをつけると、読み手にも内容を把握してもらいやすいでしょう。

1. 会社概要

会社のプロフィールについて記載します。具体的には以下のような内容を書くとよいでしょう。代表者及び経営陣に関連する事業の実務経験があれば、その旨を記載すると説得力が増します。

  • 社名(商号)
  • 所在地・電話番号・ホームページのURL
  • 経営陣の概要(氏名・経歴など)
  • 組織図
  • 事業内容
  • 主要取引先
  • 代表者の経歴

2. 事業の動機

なぜ自分がこの事業を行うのかの理由を記述します。特にエンジェル投資家にはこの部分での共感が必要となります。

3. ビジネスモデル

ビジネスモデルとは収益が成り立つ仕組みのことです。

  • どのような顧客の課題に対してなのか
  • どのような価値を提供するのか
  • 顧客とどのようなコミュニケーションをとるのか
  • どのようなチャネルでサービスを提供するのか
  • それをどのような価格で提供するのか
  • コストはどのようにかかるのか

このような内容について記述し、ビジネスの仕組みをわかりやすく説明します。
一枚の図も付けるとよりわかりやすくなります。

4. マーケットの概要

自社事業に関する市場規模や競合他社の動向について分析し、今後市場の拡大が予想される根拠を記述します。さらに、テストマーケティングの結果を入れておくと信ぴょう性が高まります。

5. 自社の強み・差別化ポイント

市場の中で、自社が勝てる強みと、どのように差別化していくのかを記述します。

6. 損益計画・資金計画

いつ売り上げが立ち、いつ利益が出るのかを示すために、売上計画や売上原価計画、販売計画、人員計画などをもとに、損益計画や資本計画を作成します。最初の1年は月ごとに、次年度からは1年ごとに予想される数値を書きましょう。このとき、貸借対照表も添えると、数字のつじつまが合っていることを証明することもできます。

7. 資金調達のスキーム・資本政策

IPOやバイアウトすることを考えているか、想定している資金調達のスキームや企業価値の根拠、株主の構成などについて記載します。

資金調達は事業を行うには欠かせないものですが、特に外部から資金調達をする場合はいかに出資者・融資者からの信頼を得るかが必須条件になります。

まとめ

資金調達にはさまざまな方法があるものの、調達に成功するためには単なる事業構想を語るよりも、実際にテストマーケティングをやってみて反応がどうであったかを示したほうが成功確率は高まります。したがってビジコン参加による賞金獲得→マーケティングテスト→クラウドファンディングでの資金調達→プロトタイプの開発→エンジェルからの出資獲得といったような、小さな資金から積みあげ、段階的に実績を示していくといったことが非常に重要です。また、捨てる神あれば拾う神ありなので、上手くいかなくてもめげずにアタックし続けることが重要です。

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