ホールディングスカンファレンス ~中堅企業の生産性を上げる「バックオフィステクノロジー」~ 第2部 中堅企業の生産性を上げる「バックオフィステクノロジー」[e-Disclosureセミナー(freee・ビジネストラスト・宝印刷共催)]
近年、収益認識基準が新設されたり、リース会計基準が変更されるなど、会計基準はますます難易度を高めています。
国際会計基準(IFRS)の適用が深く関わっているこの問題は、経理部門だけでなく、企業内の様々な分野に影響を及ぼす問題と考えられます。
そこで今回「ホールディングスカンファレンス ~中堅企業の生産性を上げる『バックオフィステクノロジー』」と題して開催されたセミナーでは、IFRSに造詣が深い公認会計士中田清穂氏を招き、新しい会計基準についてお話を伺いました。中田氏はこれからのバックオフィスで重要なキーワードとなるRPA(ロボティクス)にも深い見識を持たれており、その活用についても講演いただきました。
また、共催各社による最新ソリューション、そして各システムの連携機能についてのご紹介がありました。
今回はその第2回として、クラウドERPのfreee株式会社、連結システムの株式会社ビジネストラスト、そして開示システムの宝印刷株式会社の三社によるセッションの様子をレポートします。
Sesson1 クラウドERP freee ~次世代のクラウド子会社管理~ freee株式会社 上級コンサルタント 尾籠威紀氏
尾籠:皆さん、こんにちは。freee株式会社の尾籠と申します。今日はよろしくお願いします。
今回は弊社のご提供する「クラウドERP freee」を使った次世代の子会社管理、というお話をいたします。
まず自己紹介から。私は現在、freee株式会社でコンサルタントをしていおり、主に上場企業やIPO準備企業からシステム導入支援・グループのガバナンスの統制支援などをしております。私自身の経歴は、大学卒業後日本オラクルで基幹システムやERPの導入に携わり、その後は外資系アナリティクス企業に属したりしていました。今はその時を知見を活かした仕事をやらせていただいています。
弊社は「アイディアやパッションやスキルがあれば誰でもビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」をミッションに掲げ、中小企業の生産性を上げるため、様々な問題をテクノロジーで解決する活動を日々行っています。
弊社は現在、約161億円の出資を受けていますが、基本的にそれのほとんど人材投資と開発に注いでいます。正社員は現在505人おりますが4割近くがプロダクト開発関連の所属で、これはクラウド会計業界では最大規模の開発力ですその結果昨年のプロダクトリリースは278件に及び、ほぼ毎日、プロダクトのアップデートをしているという状況です。
弊社のプロダクトは使えば使うほど改善できるプラットフォームとして開発しております。その結果クラウド会計ソフト市場で35.2%、クラウド給与ソフト市場で40%という、ナンバーワンのシェアを誇っており、大企業から成長企業まで多くの企業に導入いただいています。
グループ経営のメリット・デメリット
では、今日のテーマである子会社管理のためのバックオフィステクノロジーのお話に入りたいと思います。
私もコンサルタントとして、日々多くの企業に伺っておりますが、グループ管理が上手くいっているという会社は少ないと感じています。
グループ経営の主なメリットは3つあります。
まず1つ目が「コスト構造の明確化」です。組織が大きくなると、コスト構造がわかりにくくなります。そこで、事業部制にして各組織にP/LだけでなくB/Sにも責任をもたせ、ROIを意識させコストパフォーマンスの良い経営をさせようとしても、なかなかうまくいかない。ですから企業を分けることで、それらを意識した経営を進めることができるようになります。
2つ目が「柔軟な人材活用」。最先端のテクノロジースキルのある人材にはそれなりの報酬を与える必要があり、一律で他と同じような人事制度の適用にしてしまうと優秀な人材を集める足かせになってしまう。ですので分けて考えるということです。
3つ目が「意思決定の迅速化」です。ホールディングスはグループ全体の戦略立案を行い、子会社は事業の運営と、親子の責任を明確化してスピードを上げて事業運営を行うことができるようになります。
この3つのメリットを想定してグループ経営に進む企業は多いのですが、しかしそのほとんどはこの3つのメリットをうまく活用できていません。
まず1つ目のコストに関してですが、逆に無駄が多い高コスト体制になってしまっています。会社が分かれることでバックオフィスも分けなければなりません。更に、システム面をしっかり考えずにホールディングス化すると、子会社ごとにツールがバラバラになってしまい、それぞれの事務に対応するコストもシステムコストも増大してしまいます。
次の人材の獲得の点についても、優秀なフロント人材は見つかるかもしれませんが、バックオフィス担当は子会社ごとに紐付き対応するため、バラバラに採用せざるを得ない。結果、バックオフィス人材の多重採用に至ってしまいこれも高コストな体制になっています。
そして意思決定の迅速化というメリットも、子会社ごとの月次報告をExcelで収集してそれを加工して、という作業に非常に手間がかかってしまい、事業が不透明化し、意思決定の判断材料をリアルタイムで集めることができなくなっています。意思決定の機会損失となっているのです。
これらグループ経営の足かせとなる3つの原因を整理すると、子会社ごとにバラバラなツールを使っていることによって人材が硬直し、それに伴って月次決算が遅延している、といえると思います。
バラバラなツールの例としては、本社はSAPだったりオラクルだったりといったERPを使っているのに対し、ある子会社は奉行、またある子会社はPCA、またある子会社は弥生を、という状態になっているところが見られます。
また債権債務のモジュールを入れるのにもお金がかかるので、Excelを使っている、といったパターンも非常に多い。
その結果、人材が硬直してしまう。ツールが違うとツール単位でフローができてしまい標準化できなくなるので、子会社単位で人を採用し、固定することになるからです。
また、各子会社ごとに会計ソフトが違うので集めた時に変換作業が発生します。子会社はExcelで送ってきますので本社はその加工することに時間が費やされる、という悪い流れになってしまうわけです。
ツールの統一によって仕事がスムーズになる
それらの問題に対してどのようなテクノロジーを、我々が提供しているかをご紹介します。
まず1つ目の問題はバラバラなツールを統一することで解決します。次に2つ目、人材の硬直化の問題はAIとクラウドを使って管理します。そして3つ目の遅延する月次決算については、クラウド上で全てのシステムを連携させることで対応していくことを考えています。
まずシステムの統一に関しては、弊社ソリューションは、会計だけでなく、債権債務・経費精算・人事労務などのバックオフィス業務を全てできるものをご提供できます。そして管理に関してはクラウドを使って、御社がリアルタイムで子会社の状況をチェックでき、さらにAIを使って漏れやミスをチェックできる仕組みを提供しています。さらにその上でシステム連携と言う形で、リアルタイムでグループ連携・データ連携できる仕組みも提供しています。
これらについて全体的なソリューション像で申しますと、バックオフィスツールfreeeのグループの効率化機能を用いることで、グループのワークフローといった仕訳になる前の稟議プロセスの仕組みから、その上で仕訳後の債権債務管理、消し込み業務までを自動化し、さらに各子会社単位の財務管理まですることができます。
そして、それらの子会社データを次に登壇される株式会社ビジネストラスト様のBTrexにデータ連携していただく、と言う全体ソリューションを提供しております。
弊社のご提案をまとめますと、まずバラバラなツールに関してはfreeeでシステム統一を図ること。そして人材の硬直化に関してはAI +リモート管理をすることで属人化を廃し効率的な業務を行う。月次レポートに関してはAPIを用いたシステム自動連携によってスピーディに全子会社のレポートを確認することができるようになります。こうしてリアルタイムに子会社の状況など確認できる地盤ができ、グループ管理を前進させることができる、と考えています。こうすることによって、グループ経営のメリットを最大限に生かす経営を進めることができるようになるでしょう。
本日はありがとうございました。
Session2 BTrex連結会計 ~グループ経営管理を実現する連結会計ソリューション~ 株式会社ビジネストラスト 主任コンサルタント 渋谷雄人氏
渋谷:改めまして、本日はよろしくお願いいたします。株式会社ビジネストラストの渋谷と申します。
まず、弊社の紹介から入らせていただきます。弊社は連結会計システムBTrexを中心としたシリーズを提供しております。また各種コンサルティングも行ってますが、特徴的なのは連結会計や有価証券管理・金融商品の時価算定などの難易度の高い分野に特化しているところです。また弊社は昨今の働き方改革に伴う連結決算のコンサルティング(要はアウトソーシングなのですが)案件についてもご案内しています。この案件については2、3年前と比べて5、6倍以上に膨れ上がっています。
私自身も東証2部とジャスダック、そして財閥系の非上場企業5グループの連結決算を担当しているのですが、自分のように生きた数字を見ている人間がシステム導入を担当しているというのも、他社にはない大きな特徴だと思っております。拠点は東京本社の外、大阪・名古屋・長野の4拠点で全国のお客様をカバーしています。
改めて皆さまにお尋ねします。今、連結決算をExcelでやっている、という会社はどのぐらいありますでしょうか。またソフトのリプレイスを考えている会社はどのくらいありますでしょうか。
連結会計システムが今、どのぐらいあるのかというと、国産パッケージシステムは弊社のBTrex連結会計ソフトの他、DivasystemやSTRAVISなど7、8社ほどです。実は僅かこれだけの会社のプロダクトで上場企業3000社強、非上場企業も含めて4000~5000社の連結決算市場を喰い合っているわけです。
ただ、これらの商品はリリースされてからもう10年・20年経っているものがほとんどです。
今、使われているプロダクトの中に、絶対的に優れている製品は無い、と私は思っています。ただしプロダクト間で得意不得意という分野はあると思います。例えば多くの会社の大量データを高速で処理することが得意なものであったり、またはメンテナンス性に優れていたり、ということです。
そういった状況だからこそ自社に最適なシステムを選ぶことが何よりも大事だと考えます。
自動連携することで工数を削減し、内部統制を強化できる
では、これから弊社の提供するソリューション内容の説明をいたします。
2018年9月にリリースしました「BTrex連結会計 OPTION Smart Link」は宝印刷株式会社様の提供する開示システム「X-Smart.Advance」との共同開発の下で誕生した連携オプションです。
これはBTrexで作成した連結精算表や連結キャッシュフロー精算表をウェブ通信でファイルを介さずX-Smartへと繋げる製品です。
現在は連結表と連結キャッシュフロー精算表の2つのみの連携ですが、今後は注記情報なども含めて連携できるようにし、将来的にはfreeeから得た情報をX-Smartで開示するまでの間をBTrexで繋げられるように開発を進めています。
つまり、freeeからAPIを用いてBTrexに合計残高試算表やグループ内取引を取得し、そしてシステムの中で計算させてX-Smartに連結精算表とキャッシュフロー精算表を送り出す、ということです。こうすることで単体システムからXBRLまで、ファイルを介さずに一気通貫するものになります。それが可能になれば、freeeの作成伝票がそのまま開示システムまで繋がる、ということができるようになるでしょう。そのため、開示をも見据えて伝票1枚1枚を起票する必要があるのです。
今後はさらに機能を拡大し、連・単・開示までも通してできるように開発を進めています。そちらも近日中にご紹介できると思います。
本日はご静聴ありがとうございました。
Session3 開示決算自動化ツール X-Smart.Advance ~グループ全体の決算書類作成自動化のご提案~ 宝印刷株式会社 JCT営業部X-Smart室 主任 杉山大介氏
杉山:改めましてよろしくお願いいたします。宝印刷株式会社の杉山と申します。本日はよろしくお願いいたします。
今回は、弊社が提供する開示決算自動化システム「X-Smart.Advance」を用いたグループ全体の決算書類作成の自動化についてご提案をさせていただきます。
現在、財務諸表などのビジネスレポートはXBRL形式での作成が必須となっています。有価証券報告書や開示書類をWordやExcelで簡単に作ることはできないので、X-Smart.Advanceなどの開示支援システムが必要になっています。
しかし、作成過程でExcelデータから開示書類に入力を1つ1つ手で行っていると、間違いを起こすリスクや、多くの時間を費やすことになり、非効率です。
そこで弊社では、開示書類作成プロセスを徹底的に自動化することでミスを無くし、スピーディーで効率良く書類作成が可能なX-Smart.Advanceをご提供しております。
まずは、X-Smart.Advanceの全体概要を説明します。
X-Smart.Advanceは、先ほどお話がありましたfreeeやBTrexから、ファイル連携という形で出てきたデータをインプットし、それらを組替・調整、計算、数値間の整合チェックを自動処理し、その自動処理された正しい数値が有価証券報告書や決算書類といった資料に自動リンクできるシステムです。
またX-Smart.AdvanceではfreeeやBTrexから連携した財務諸表関連の数字だけではなく、非財務データ等の様々なデータの管理も可能となっております。
アウトプットについては制度開示書類・任意開示書類などが主ですが、他にも社内資料のような書類にも対応できるようになっています。
さらに監査・分析などに活用頂ける資料にも対応しております。例えば、X-Smart.Advanceで各種データの数値の組替を行うことが出来ますが、その組替の対応関係を分かり易く示した組替表等をExcelなどに簡単に出力することができます。こうすることで、監査対応の資料作成なども効率的に行うことができます。
X-Smart.Advanceによって自動化されるデータの取込と組替処理、そして開示書類への反映といった点がお客様から高い評価をいただいております。2013年のリリース以来、導入実績は930社を超えており、決算の早期化、IFRS対応、働き方改革など、数々のプロジェクトに活用いただいています。
資料作成と数字の更新を自動化するX-Smart
今後はベースとなる開示資料作成の自動化・法定開示書類作成の自動化といった機能のほかに、周辺関連作業の効率化も推し進めていきたいと考えています。
それらに対応したオプションも既にいくつか用意しています。
例えば先ほど株式会社ビジネストラストの渋谷様からお話がありました、BTrexとのスマートリンクです。これによって連結精算表・連結キャッシュ・フロー精算表をシステム間でWeb連携することで、シームレスに対応することができます。また、単体データ連携についても2020年春のリリースを目指して進めております。
IR系や社内資料作成も「Xtend Adapter」というオプションを用いることで自動化することが可能です。このXtend Adapterは社内で使用する会議資料などにX-Smart.Advanceの数値をOffice製品に直接リンクすることができます。例えば今まではIR・経営企画の管理する資料の数値を変更する際には、経理部からIR・経営企画に修正した数字を展開し、経理部が最終的に数字が直っているか確認する、というステップがどうしても必要でしたが、このXtend AdapterでOffice製品にリンクを設定しておく事で、PowerPoint、Excel、Word等で作成している書類にも一気通貫で更新することが可能となります。
本日のセミナーテーマでもありますグループ経営管理の観点からいきますと、提出会社の開示書類を作成するだけでなく、グループ会社の会社法計算書類作成に必要な数値データを一元管理する機能を実装しております。グループ各社の試算表を取込、財務諸表へ組替、整合性チェック、Word等への数値展開ができることで同一システム内で統一したデータ作成、フォーマットでの出力を実現できます。
以上、本日、弊社を含めて紹介されたこれらのテクノロジーを用いることで、制度開示書類だけではなく、子会社の会社法計算書類に至るまで単体会計システム~連結会計システム~開示システムを一気通貫・シームレスにデータ連携することでグループ全体での書類作成を効率的に進めることが可能となります。こういったシステムを活用いただくことで、企業のバックオフィス業務を劇的に変えることができるのです。
本日はご静聴、ありがとうございました。