社会保険の算定基礎届を詳しく解説
定期昇給は昔話になりつつありますが、毎年社会保険料を正しく徴収するために、月額算定届の提出が求められています。どんなことに気を付ければ正しい保険料の算定になるでしょうか。
平成28年からマイナンバー制度が始まりました。それに伴って社会保険の各種届け出用紙にも、様式の変更があります。月額算定基礎届の様式はまだ整っていないようですが、基本的なことは変わりませんので、押さえるべきポイントを知っておきましょう。
算定基礎届とは
社会保険料は会社と従業員とで折半して負担しています。入社時に、一旦給料の月額で保険料を算出し、標準報酬月額を決めます。この標準報酬月額に保険料率を掛けたものが保険料になります。保険料の届け出と徴収、納付は会社が行います。
この標準報酬月額は、給料の支給額に応じて等級が階段状に設定されています。例えば、給料の支給額が195,000円以上210,000円未満の人は、200,000円にして、保険料の計算を簡素化しましょうというシステムです。
しかし実際には昇給・昇格や残業手当などの変動部分もあり、「最初は200,000円の等級(13等級)に収まっていたけれど、240,000円の等級(15等級)分の給料をもらっている」といった人の等級を1年に1回見直すための届出書です。見直された標準報酬月額は、9月から適用されます。 (なお、随時の固定的な昇給等で(降格での給与の減額も対象になります)2等級以上の変動があった場合は、変動があった後3カ月を経過した時に月額変更届で、標準報酬月額を変更します)
2)届け出はどんな方法ですれば良い?
月額算定基礎届は、7月1日に在籍している人について届け出ます。4月・5月・6月に支払った賃金の合計を3で割った金額から、標準報酬月額を導き出します。
報酬支払い基礎日数を記入する欄がありますが、この場合、何日働いたかも重要になります。報酬支払基礎日数が17日未満の場合は、その月の分は外して計算します。17日以上働いた月が2カ月でしたらその2か月分の報酬を足して、2で割ります。
各人の標準報酬月額が決まったら、総括表を作ります。従業員の人数や給与の支払い日などの状況を各項目に記入します。賞与の支払い月を記入する欄もあります。
月額算定基礎届と、総括表が出来上がったら、所在地を管轄する日本年金機構の各県の事務センターへ郵送で送ります。東京都の一部では、年金事務所へ直接郵送する地域もあります。
3)長期で休んでいる&中途入社の場合はどうする?
普通に働いている人でしたら、一つ一つの項目を埋めていけば、問題なく月額算定を終えることができます。事業主(会社)が保険料率表に基づいて、標準報酬月額を決定し、適用します。
しかし病気や怪我で長く休んでいる人や、途中入社の人などは、どうすればいいでしょうか。こんな状態の人には、保険者算定と言う仕組みがあります。月額算定基礎届の備考欄に休職中とか、○月病欠○日などと記入しておくと厚生労働大臣(日本年金機構)で標準報酬月額を決めてくれます。通常は前年通りの場合が多いです。
4)今年の改定点
平成28年4月から、健康保険及び船員保険の標準報酬月額の上限と、累計標準賞与額の上限が引き上げられています。それに伴って、今までの最高等級の上に3等級が追加されます。
今までの最高等級は第47等級、標準報酬月額は1,175,000円以上となっていましたが、平成28年4月から第47等級は1,175,000円以上1,235,000円未満となり、第50等級の1,355,000円以上までが追加されています。
健康保険法及び船員保険法における年度の累計標準賞与額の上限は、5,400,000円から5,730,000円に引き上げられています。該当者が居る会社の担当者は、注意してください。
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5)まとめ
月額算定基礎届は毎年のことですし、全員の給与について計算せねばならないので面倒な作業でもあります。しかし、この算定基礎届に基づいて納付した保険料がゆくゆくはその人の受け取る年金の計算の元になります。おおげさな言い方をすれば、社員の皆さんの将来の年金がかかっていますので、ていねいな仕事を心がけたいものです。