2019年09月14日(土)1ブックマーク

ワークライフバランスとは?その本質、企業の導入のメリット、ポイント、取り組み事例

経営ハッカー編集部
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ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を図り、相乗効果を発揮すること。個人が仕事と生活のバランスをとりながら好循環を生み出し、働きがいをもって仕事の役割を果たすことができるようにするための取り組みです。

政府の働き方改革の推進により注目が集まるワークライフバランスですが、これまで大企業などの先進的取り組みが報道される機会が多かったのですが、今後、中堅・中小企業でもより積極的な取り組みが求められるようになってきました。

本稿では、ワークライフバランスの誤解されがちな定義と基本的な考え方、導入のメリット、日本企業の取り組みの実態と今後の課題と対策、企業の取り組み事例、国の支援制度などを徹底解説します。

目次

    ワークライフバランスとは?仕事と生活の調和による相乗効果の発揮

    ワークライフバランスの定義

    ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を図ることです。

    政府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な働き方が選択・実現できる社会」を目指すことが宣言されています。

    つまり、ワークライフバランス憲章は、

    • 性別や年齢に関わらず働く(就業希望者を含む)すべての人が対象であること
    • 経済的な自立と健康で豊かな生活が両立できるような調和を図ること
    • 仕事にやりがいや充実感を感じながら働き、仕事の責任をしっかり果たすこと
    • 個人のライフステージに応じた多様で柔軟な働き方が選択できること

    を目指したものであることがわかります。

    仕事(ワーク)と生活(ライフ)がそれぞれ充実した状態で調和(バランス)する社会をつくる、というのが趣旨ですので、

    • 女性の育児や介護の支援のためだけの目的ではない
    • 仕事の時間を減らして生活の時間を充実させるといった時間のバランスだけを意味しているのではない
    • 仕事を経済的な面だけでなく、やりがいや充実感が得られて責任が果たせる、という心理的、社会的な側面からの充実を目指すことが重要である

    ことがわかります。

    (参考)政府広報オンライン「知っていますか? ワーク・ライフ・バランス」

    ワークライフバランスは、仕事と生活の相乗効果が発揮できる状態

    ワークライフバランスは、仕事と生活のどちらを優先するか、という対立するものではなく、仕事と生活の調和を図りながら仕事上の責任を果たすために、

    • 生活の充実やスキルアップなどによって仕事の効率・パフォーマンスを高める
    • 限られた時間の中で仕事の成果を出し、プライベートの時間を生み出す

    といった、仕事と生活の好循環を生み出し、個と組織の「相乗効果」を発揮するための考え方です。

    政府が目指している政策の背景も、

    • 日本の少子高齢化による労働年齢人口の減少への対策
    • テクノロジーの進化、グローバル化に対応した日本の競争力強化、経済の持続的な発展

    に向けて

    • 長時間労働や非正規雇用者問題などの日本社会の歪の是正をしつつ、
    • 働き方改革を通じて企業体質の改善、労働生産性向上などの企業体質の改善を図り、
    • さらに高齢者、外国人労働者、障がい者などの受け入れ、兼業の解禁、第4次産業革命によるAI・ロボットの活用などの、今後の社会の急速な環境変化を見据えた社会的な課題解決に対応する

    という「働き方改革」の総合的なパッケージ施策を推進するための基本的な考え方となっています。

    2016年9月に内閣府の「人生100年構想会議」で示された、年齢に関わりのない多様な採用機会の拡大により、全ての世代の人々が希望に応じて意欲・能力を活かして活躍できるエイジフリー社会を目指すというビジョンとも共通しています。

    (参考)首相官邸「人生100年時代構想会議」

    ワークライフバランスの追求は難しい!? ワークエンゲージメント、ワークライフインテグレーションの視点が必要

    ところで、皆さんの中には、「ワークライフバランスという概念は理解できるけど、実際には難しいのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。

    たしかに、企業が従業員1人ひとりの家庭環境や価値観と折り合いをつけるのは簡単ではありません。企業を取り巻く経営環境は常に変化し、仕事と生活のウェイトもライフステージによって大きく変わります。

    つまり、ワークライフバランスという概念を意識することによって、自分はなぜ何のためにどのように働くのか? あるいは企業にとっては、なぜ何のために事業をしているのか?そのためにどのような社員にどのような環境を整備すればいいのか?が問われ続けることになります。

    慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科の高橋俊介教授は、

    「ワークライフ・バランスという、『仕事か生活か』という発想ではなく、その発想を一歩進めて、ワークライフ・インテグレーション(統合)という、『仕事も生活も』という発想で、仕事と生活を柔軟かつ高い次元で充実させるとことで相乗効果を生み出すことが重要だ」

    と述べています。つまり、ワークライフバランスは、働きがいといった「ワークエンゲージメント」という視点からも捉えていくことが必要なのです。

    (参考)ワークエンゲージメントとは?-ワークエンゲージメントの意味と活用方法

    ワークライフバランスに取り組むメリットは?経営面から見た導入の意義

    このように、個人が仕事と生活の好循環を実現することで、個と組織がWin-Winの関係となり、相乗効果を発揮するためには、経営的な観点からどのようにワークライフバランスに取り組めばいいのか、そのメリットは何でしょうか?

    優秀な人材の採用と定着

    ワークライフバランスが実現しやすい柔軟な働き⽅を選択できることは、優秀な⼈材の採⽤や社員の満⾜度を高めるために重要です。こうした取り組みによって、社員がいきいきと働くことができる環境であること、実際に定着率が高いことなどが訴求できれば優秀な人材を惹きつける魅力的なアピールポイントになります。
    優秀な⼈材の採用や技能をもった⼈材の流出防⽌による離職率の低下、ノウハウの社外流出の防止といった観点からも採用・教育コストの抑制効果も期待できます。

    好ましい組織風土の醸成による企業価値の向上

    社員1人ひとりがワークライフバランスのとれた働き方を実現するには組織的な取り組みが必要です。環境変化に適応しながら自社の経営課題を解決するために業務の見直しを行い、組織全体の意識、働き方、マネジメントの仕方などを、自社が目指す状態に向けて改善していくことで企業体質を強化することができます。

    好ましい組織風土は、優秀な人材の採用・確保はもとより、⾃社の商品・サービスに対するブランド⼒の強化、企業の社会的責任(CSR)を意識した経営の実現など、企業イメージの向上、企業価値の向上に繋がります。

    組織の生産性の向上による企業競争力の強化

    個と組織の相乗効果が発揮できるようなワークライフバランスの実現に向けて取り組むことによって、1人ひとりが常に自分の業務の見直しを行い、組織的にも不断の業務改善に取り組むことで、個と組織の生産性向上が期待できます。個人のモチベーションが高まり、自己啓発により資格を取得したり、また、生活者の視点から新たな発想で創造性を発揮するなど、人財の能力を最大限に発揮できるような環境づくり、組織風土の醸成により環境変化に強い競争力のある組織づくりに繋げることができます。

    日本における企業の取り組み状況〜他社は何をしているのか?

    では、日本の企業は実際にどのような取り組みをしているのでしょうか?内閣府が実施した「企業等における仕事と生活の調和に関する調査研究報告書」(平成31年3月)によると、以下のような実態が報告されています。

    1.企業調査結果~企業におけるワーク・ライフ・バランス等の取組状況~

    (サンプル数1,885社、うち正社員が300人以下の企業1,322社)

    (1)ワーク・ライフ・バランスに関する方針や推進体制の整備状況

    ワーク・ライフ・バランスの推進を「経営課題として位置づけている」もしくは「経営方針等に掲げている」企業は全体の8割強。また、ダイバーシティ(多様な人材の活躍)の推進や、女性活躍の推進、健康経営についても、「経営方針等に掲げている」もしくは「経営課題として位置付けている」企業は7割~8割程度。

    (2) ワーク・ライフ・バランスに関する企業の取り組みテーマの広がり

    ◆関連する企業の取り組みとしては、メンタルヘルス対策(8割強)、自己啓発支援(6割強)、私傷病治療支援(5割強)、地域活動・ボランティア参加促進(4割弱)、副業や兼業に関する就業規則の見直し(1割強)となっています。

    (3) 企業の推進方針・推進体制と取組内容との関係

    ◆ワーク・ライフ・バランスやタイバーシティを積極的に推進している企業は、人材の確保や社員の能力発揮を重視している企業が多いようです。特に、幅広い社員への情報提供、多様な働き方の推進、フレックスタイム制度、半日休暇制度などの柔軟な働き方の導入に取り組んでいます。
    ◆積極的に推進していない企業の課題は、経営トップの理解や協力を得ることが難しい、自社に必要な取り組みがわからないなどが多く、取り組みにバラつきがあるようです。

    (4)仕事と生活の両立支援のための制度運用に関する取り組み

    ◆多様な人材の活躍を推進する有効な取り組みとしては、労働時間の削減が一定程度進んでいる企業の場合は、「柔軟な働き方」の推進を重視する傾向があります。
    ◆柔軟な働き方に関する制度の利用しやすさという観点では、始業・終業時間の繰上・繰下や、フレックスタイム制度、テレワーク等の制度の導入などが多くなっています。制度の使い勝手については、フレックスタイム制度、半日単位の休暇制度、時間単位の休暇制度いずれも「特段の事由がなくとも利用可能」の回答割合が最も高くなっています。

    (5) 社員の活躍を促すことを重視し、取り組みや制度運用上の工夫を行っている企業の特徴

    「性別にかかわりなく社員の能力発揮を推進すること」を重視している企業は、年功序列的な人事管理を見直し、成果や生産性に対する評価を重視する仕組み、自己啓発のための各種支援などの、積極的キャリア形成機会の提供を図り、社員の自主的な学びを支援している企業が多くなっています。一方で、「性別にかかわりなく社員の能力発揮を推進すること」を重視していない企業では、「有給休暇を取得しにくい」「長時間働く人が評価される風潮がある」という結果が出ています。

    2.個人調査結果~ワークライフバランスに関する希望と実際のギャップ~

    (サンプル数6,000人、20代~60代までの男性3,000人、女性3,000人,正社員・非正規社員・雇用者以外の就労者・非就労者)

    (1) ワークライフバランスの実現度

    ワークライフバランスの希望と実際が一致しているかについては、正社員では不一致率が最も高く、男性では6割弱、女性では5割強となっています。不一致者のうち、「不本意ながらワークを優先」の割合が正社員では男女とも9割程度と自分が希望する以上に仕事が優先となっている人が多いようです。

    (2) 希望と実際の一致に影響を与える要因

    「希望と実際が一致」している人は、「労働時間の長さの認識」「残業の頻度」「働く時間の柔軟性」「休暇の取得しやすさ」「休暇の取得日数」などについて概ね好ましい状況にあります。「仕事のやりがい」がある人は満足度が高く、「顧客等による拘束性」がある人は満足度が低い傾向もあります。

    (3)自己啓発に対する希望とその実現状況

    過去1年間に「自己啓発を行った」割合は男女とも1~2割程度。一方、「自己啓発を行いたかったが、行っていない」とする割合は、正社員では男女とも2割程度。「仕事が忙しくて、自己啓発のための時間がとれない」とする割合が3割超となっています。

    ワークライフバランスに関する調査結果のまとめ

    (1)柔軟な働き方の制度は、特定の事由によらず利用できることが望ましい

    柔軟な働き方を導入している企業の割合は始業・終業時間の繰上・繰下については5割強が導入していますが、テレワークについては1割以下となっています。また、制度の利用対象が育児や介護事由等に限定されているものも多く、現状は柔軟な働き方が普及しているとは言い難い状況です。脱長時間労働の取り組みのみにとどまらず、特定の事由に限定せず全社員がそれぞれの事情に応じて活用できる柔軟な働き方を推進することはワークライフバランスの実現に有効と考えられます。 

    (2)働きやすさのみならず活躍や働きがいの向上が重要な課題となっている

    ワークライフバランスの取り組みは、育児・介護などとの両立支援や働きやすい環境整備という観点での取り組みにとどまらず、多様な人材の活躍ができる環境整備や働きがいの向上につながる取り組みが企業と労働者の双方にとって重要な課題となってきています。そのためには労働者が抱えるさまざまな事情に応じて柔軟な働き方を可能にするとともに、企業や労働者が共に成長できるような中長期的な取り組みと位置づけて推進する必要性があります。

    (3)労働生産性の向上を図るには、柔軟な働き方の促進と自己啓発への取り組み支援が必要

    さらなる長時間労働の見直しや柔軟な働き方の促進等の取り組みを推進し、労働生産性の向上を実現するためには、一人ひとりが積極的に自己啓発に取り組むことが必要です。自己啓発を行うための課題は、時間的・金銭的な課題や具体的なノウハウの不足等が挙げられています。こうした課題を解消するための積極的な自己啓発の支援も求められています。

    (4)中堅・中小企業での取り組みの推進が期待される

    今回の調査結果においては、企業規模や業種による取り組みの差が大きいことが明らかになりました。特に300人以下の企業や取り組みが相対的に進んでいないという結果になっています。

    以上から、日本の企業でワークライフバランスの取り組みは、「憲章」が目指す社会の実現に向けて道半ばであることがわかります。企業間での取り組みの差が大きいことから、政府としては、より個別の企業の実情に応じた支援制度の導入が検討されています。

    ワークライフバランスへの企業の取り組み姿勢や従業員のエンゲージメントは、他社との差別化がしやすい状況にあると言えるでしょう。

    ワークライフバランス推進の課題と対策のポイントは?具体的には何をすればいいのか?

    では具体的に、ワークライフバランスを推進していく上での課題とその対策のポイントはどのようなものなのでしょうか? 内閣府「社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集」では以下の10のポイントが紹介されています。

    【ポイント1】トップが本気を示す~トップからのメッセージを繰り返し発信する~

    ワークライフバランスを推進するには、トップのリーダーシップが重要。自社の課題、経営戦略と関連付けて意義や目標を明確に発信し続けること。繰り返し、何度でも、「会社として真剣に取り組んでいる」ことを機会があるごとに継続的に表明し続ける必要がある。

    【ポイント2】キーパーソンとなる担当者等を配置する~担当者・部署を通じて取り組みを浸透させる~

    トップの理念を実践する実動部隊となる担当者の存在が重要。専任もしくは兼務でも役職をもったキーパーソンとして、トップの意向を伝え、従業員からの本音を聞く橋渡し役を配置すること。

    【ポイント3】ワークライフバランス管理職をつくる~管理職が率先して実践する~

    各職場において取り組みを浸透・定着させられるかどうかは、管理職の言動が大きく影響する。まず管理職に研修等を行い、トップ、管理職が職場で率先して実践する必要がある。また、理解と経験のある人財を管理職に登用することでロールモデルをつくることも一案。

    【ポイント4】積極的にコミュニケーションを図る ~個人や家庭の事情を話しやすい風土をつくる~

    業務とプライベートの状況を定期的な面談等で把握することで、互いの事情を理解し、業務量や分担を調整したり、工夫が共有されたりして、風通しの良い職場風土の形成の一助になる。

    【ポイント5】「自分ごと」として考える環境をつくる~従業員一人ひとりを主人公にする~

    「やらされ感」 なく「自分ごと」として捉えるための風土づくりが大切。削減できる仕事はないか、業務を効率的に行う方法など、従業員一人ひとりが自分の業務を見直し、効率化の方法を考えることが重要。休暇取得計画を周囲に知らせる、業務を周囲に代行してもらえる引継ぎ、不在時に備えてマニュアルを作成するなど、従業員側の準備も求められる。社内表彰制度の導入や業務改善提案などの仕組みづくりなどによってサポートすることが重要。

    【ポイント6】組織ぐるみで生産性を高める~業務の棚卸し、見直し、改善を行う~

    組織としてこれまでの業務のやり方を見直して無駄を減らし、業務改善に取り組む必要がある。日々の業務の棚卸により、ムリ・ムラ・ムダはないか改善点を検討し、業務時間等にみあった効果が上がっているかについても検討。職場のコミュニケーションの強化にもつながり、仕事をカバーし合える関係が促進される。

    【ポイント7】「よく働き、よく休む」を習慣化する~「休み」を明日の成果につなげる~

    仕事だけに時間を取られていると新しい情報のインプットやネットワークの拡大が図れない。余暇を楽しんだり、自己啓発に励むことは、仕事のパフォーマンスを向上させるためにも重要。「残業をした方が評価される」などと誤認している場合も考えられるため、管理者が率先したり、場合によっては終業時刻以降のシステムダウン、夜20時以降の残業は認めないといった取組も効果的。従業員は「休み」の効果を実感してもらうことで取り組みが広がる効果も期待できる。

    【ポイント8】取組の進捗を「見える化」する~達成状況の可視化でモチベーションの向上を図る

    すぐには目覚ましい成果が出なかったり、従業員から不満や非協力的な反応がある場合がある。従業員がモチベーションを維持して取り組むための方法を中長期的に考える上で、何がどのぐらい進捗し、遅れているのかを目に見える形で把握し、共有することは非常に重要。

    【ポイント9】業界や顧客を巻き込む~社外の理解と協力を得る~

    「お客様に迷惑がかかってしまう」といった心配から思うように進まないことがある。トップがお客様や取引先に説明し、事前に理解をいただくことも有効。他社に先駆けて取り組みを推進することで、優秀な人材の採用や技能の高い従業員の離職率の低下や、同業他社と連携して業界の慣習を打ち破る契機になるといった事例もある。

    【ポイント10】社外の施策を活用する~国や地方自治体等の表彰・認定等を取り入れる~

    「取り組みに意味があるのか」、「業績が下がるのではないか」という不安や懸念の声には、社外の評価を利用する方法もある。国や地方自治体、関係団体等による表彰や認定制度など多様な施策を活用できる。ワーク・ライフ・バランス先進企業としての認知が高まれば、企業の評価も高まり、イメージアップにもつながる。

    内閣府「社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集」より

    企業の取り組み事例は?中堅・中小企業が実践するワークライフバランスの導入

    では、実際に、中堅・中小企業ではどのような取り組みが行われているのか、取り組み事例を紹介します。

    三州製菓株式会社(埼玉県、食品製造業)

    全体朝礼や経営会議等の場において、ワーク・ライフ・バランスや男女共同参画の実現に向けた取組の重要性について繰り返し明言。定時に終わらない仕事を抱え込んでしまったり、担当者が不在になることを気にして休みがとりにくくなったりすることを回避するため「一人三役」制度により、各担当者は業務の合間、あるいは配置換え等の機会に、自分の担当外の業務を本職として対応できるように三役程度習得しておくことで、担当者の不在時や業務繁忙期に対応が可能になった。

    株式会社ツナグ・ソリューションズ(東京都、サービス業)

    会社の立ち上げメンバーが、「どのような会社なら従業員が辞めずに働き続けてくれるか」を話し合い、休暇をインプットの場、会社をアウトプットの場として位置付け、LOVE休暇、勉強休暇、カルチャー&エンタメ半休等、独自の休暇制度を導入。社長が特別休暇の取得状況について部長会で進捗確認したり、管理職が自ら特別休暇制度を率先して「休むことも仕事」という意識を浸透させて、取得計画を周囲の従業員に周知し、制度の利用を促進。

    株式会社オーシスマップ(兵庫県、技術サービス業)

    測量業界は長時間労働が慣行となっているが、毎月1回のノー残業デーを「家族の日」として、自分の予定に合わせて設定。全従業員の業務の状況、公私のスケジュール等を共有・管理するグループウェアを自社開発し、運用。様々な企業表彰を受け、メディアにも多く掲載。その結果、応募者が増え、従業員の定着率も向上し、従業員数も増加。地域活性化にも貢献。

    茅沼建設工業株式会社(北海道、建設工事業)

    建設業はそもそも残業が多いことが課題であった。社長にも勉強会や研修会に参加してもらい、重要性を社長の言葉で呼びかけてもらった。独自の特別休暇制度や地域貢献活動等の取組企業表彰の受賞、メディアへの掲載を通じて取り組みの有用性を従業員も実感できるようにした。社会貢献面での入札の際の加点がされるようになり企業評価が高まった。

    社会福祉法人 寿栄会(青森県、老人福祉・介護事業)

    管理職が自らの部署における業務の棚卸しとして「仕事しらべ」を徹底。全ての階層のスタッフの業務内容や業務のコツなどをマニュアル化し、担当スタッフの不在時にも誰もが代行可能に。リーダークラスは子どもが生まれた際などに全員育児休業を取得しており、「リーダー」=「育児と仕事が両立できる人」のイメージが定着。「ファミリーサービスデー、取り組み開始後、離職率は低下し、妊娠を機に退職する人もほとんどいなくなった。

    内閣府「社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集」より抜粋。その他の事例はこちらの資料を参照ください。

    ワークライフバランスの導入を支援する国の制度

    ワークライフバランスの取り組みを推進するにあたって使える代表的な支援制度を紹介します。制度は改訂される場合があるので、最新情報を確認したうえで、ご利用ください。

    1.子育てや介護と仕事の両立を支援

    両立支援助成金

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

    職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりのために、男性の育児休業取得を促進、仕事と介護の両立支援、仕事と育児の両立支援、育児・介護等による退職者の再雇用、女性の活躍を推進、事業所内に保育施設を設置するなどの対策に使える助成金の情報です。

    両立支援総合サイト

    http://ryouritsu.mhlw.go.jp/

    こんなときどうする?というQ&A集や、自社の取り組みを他社と比較できる診断サイト、業種別・地域別・規模別の取り組み事例集などの情報がワンストップで収集できます。

    2.働く人の自己啓発やキャリアアップを支援

    キャリア形成促進助成金

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

    雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識及び技能を修得させるための職業訓練等を受講させる事業主等に対して助成する制度です。
    人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)があります。建設業などは別途コースがあります。

    特別な休暇制度

    https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuukaseido/

    働きやすい職場づくりのために、法定休暇(年次有給、生理休暇、育児休暇、介護休業等)以外に、法定外休暇(就業規則で会社が任意に定められる)制度があります。たとえば、病気休暇、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇、裁判員休暇制度などの事例が掲載されています。お祭り休暇、記念日休暇などの事例も掲載されています。

    3.働く人の労働条件や健康を守りながら多様な働き方を支援

    テレワーク普及促進関連事業   

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/telework.html

    ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方を支援するための制度です。事業場外勤務の導入のためのガイドライン、時間外労働改善助成金(テレワークコース)の案内、テレワーク推進企業の表彰、相談センターなどの情報が掲載されています。

    時間外労働改善助成金(テレワークコース)で助成対象になるのは以下の取り組みです。

    • テレワーク用通信機器の導入・運用※パソコン、タブレット、スマートフォンは除く
    • 保守サポートの導入
    • クラウドサービスの導入
    • 就業規則・労使協定等の作成・変更
    • 労務管理担当者や労働者に対する研修、告知・啓発
    • 外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング

    支給額は1企業あたり150万円、1人あたり20万円が上限です。
    成果目標を達成した企業は補助率3/4未達成の企業は1/2の補助率となります。
    詳細は上記ホームページを参照してください。

    短時間正社員

    https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/

    短時間正社員とは、フルタイムではない所定労働時間が短い正社員のことです。育児介護との両立だけではなく、高齢者、無期労働契約への対応など多様な人材を活用するための新たな制度として注目されています。短時間正社員制度の導入のメリット、導入方法などについて詳しい情報が掲載されています。

    4.労働時間の見直しを支援

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html

    労働時間等の見直しガイドライン、時間外労働改善助成金、相談窓口などの情報が掲載されています。特に、時間外労働改善助成金は、

    • 時間外労働上限設定コース
    • 勤務間インターバル導入コース
    • 職場意識改善コース
    • 団体推進コース
    • テレワークコース

    などがあり、詳細な情報が掲載されています。適用条件、締切日などがそれぞれコースごとに異なりますので、ご注意ください。

    まとめ

    ここまで、私たちが働き方改革に取り組む上で重要となるワークライフバランスという言葉の誤解されがちな定義、日本企業の取り組みの実態、企業が取り組むメリット、導入の課題と対策のポイント、中堅・中小企業の取り組み事例などを紹介してきました。

    前述の内閣府の調査結果からもわかるように、働き方改革、ワークライフバランスの取り組みはまだ始まったばかりです。今後、ワークライフバランスへの取り組みを自社の経営戦略にどのように組み込むか、課題解決のトリガーとしてどのように活用するかは、各社の課題によって最適解が異なります。貴社が目指す理想の会社づくりの一助になれば幸いです。

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