【自分の葬儀でどんなお別れの言葉を言われたいか?】後悔しない事業理念の作り方
みなさんは事業計画を作成したことがありますか? 人によっては資金調達や創業補助金の際などに銀行や公的機関に事業計画を作成して提出したことがあるかもしれません。
事業計画というと3ヵ年の損益計算書やキャッシュフローなど、数値的チャートが大切と思っている方が多いかと思います。確かに資金を調達する際それらは非常に重要ですが、本来事業計画とは銀行のためでなく、あなた自身の計画です。
一般的なコンサルタントだったら、きれいに製本されたものを作成すればそれでおしまいです(本当はそれではいけないですが…)。しかし、本来はあなた自身が事業計画をもとにご自身の事業を発展させていくためのものです。中でも「事業理念・ビジョン」は実は一番大切です。
それはなぜでしょうか?
「高い山を征服したもの、登ったのは登頂するつもりの隣の山だった」とならないために
私は仕事柄、事業を立ち上げて成功させた方とお会いする機会が少なくありません。中にはご自身の会社を上場させて、数十億円もの個人資産を築かれた方もいます。あくなき事業意欲でバリバリ頑張っている方もいらっしゃいますが、一方で元気のない方もいて、そのような方はその会社の経営の一線から退いてしまうこともあります。
理由を聞くと、たいてい「本来自分のやりたいこととは違う方向に会社が行ってしまった」ということです。「高い山の山頂を征服したもの、登ったのは登頂するつもりの隣の山だった」感じと表現すればわかりやすいでしょうか。せっかく事業が財務的には成功しても、自分がやりたかったことと違う事業になってしまっては元も子もありません。
理念・ビジョンは、あなたが登るべき山の頂上とその道しるべです。それらを作った後も、ずれが生じていないか定期的な見直しが必要なのです。そういった意味で事業の理念・ビジョンは大切なのです。
事業理念とは
①位置づけ
特に外部向け、銀行などに事業計画を提出する際に気にするのは事業戦略およびその実行計画と予算です。しかし、本来事業の理念があってそれを目指してビジョン(中期的な目標)と理念における価値観を具体化した経営方針(行動指針)があります。
事業戦略はビジョンを達成するために経営方針に沿って立てられるものです。したがって、理念やビジョンがないまま立てた事業戦略は、砂上の楼閣のようなものといえるかもしれません。
②事業理念は「存在理由」と「価値観」で構成される
事業理念を大きく分けると、「存在理由」と「価値観」にわかれます。それぞれ見ていきます。
ア) 事業の存在理由は、“生活の糧”以上の何かがなくてはならない 存在理由とは、「あなたが何のために事業をやっているかの根本」です。生活のためというだけでしたら、ある程度の生活ができれば後は何も必要ありません。利益やキャッシュは人体にたとえると血液のようなものです。血液が一定以上失われると生命を維持できないのと同様に、会社の利益やキャッシュが失われると存続していけません。
しかし、ヒトが血液のために生きているのではないのと同じく、事業も利益やキャッシュを越えた「何か」のために行っているのではないでしょうか?それを言葉に表したものが「存在理由」です。
イ) 事業を行う上で大切にしていること=価値観 あなたの信じる事業をやっていくうえでの価値観、つまり事業を行う上で大切にしている価値観です。自分自身、顧客、取引先、競争相手、社会全般などに対する思いといえましょうか。
「とにかく顧客に安く物を届けたい」があなたの価値観かもしれないですし、逆に「高くても品質には妥協せず、良いモノを届けたい」があなたの価値観かもしれません。これは「儲かるからどちらかにしよう!」ではなく、あなたの価値観なのです。
③真にあなたが信じ、従いたい理念は何か
事業理念は反社会的なもの(例:麻薬を世界の隅々まで広げよう!)でなければ、悪い事業理念はありません。よい事業理念とは「真にあなたが信じ、それに従って事業をやっていきたいもの」であればそれでいいのです。どちらかというと、事業理念に従って実行していくことが大切です。
ただし、「真にあなたが信じ、それに従って事業をやっていきたい」と思っていない限り実行はできないですし、仮にできたとしても中途半端になりやすいです。では、よい事業理念の作り方はどうすればよいのでしょうか?
よい事業理念の作り方
事業理念には様々な作成方法があります。普段の業務では、経営者の方とご相談しながら適切な手法を適用しています。ここでは、誰でも自分でやりやすい代表的な手法を簡単にご紹介します。
① 事業の「存在理由」の作り方
代表的な作成方法として、「葬儀のお別れの言葉」があります。以下の場面を静かに想像してみてください。
あなたは事業を成功させて、大勢に惜しまれながら永眠しました。その際、自分の事業を一番よく知る友人が、あなたの業績について葬儀の席でお別れの言葉として述べています。どんなお別れの言葉を述べてほしいかが、あなたの事業の存在理由になるでしょう。静かにじっくり考えてみると何かしら出てくるはずです。
② 「価値観」の作り方
あなたの価値観は無理やり作るものではなく、すでにあるものを表現するだけです。1枚の紙を用意しましょう。紙の真ん中上部に、①で決めた「存在理由」を書きます。そして線を縦にひいて、存在理由に照らして、左側にはあなたが「いいね!」と思うこと、右側には「ダメだね!」と思うことを記入していくだけです。
たとえ儲かりそうでも、あなたの価値観に反することはうまくいきません。正直に自分に向き合って考えてみてください。
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まとめ
事業計画において、事業の理念・ビジョンは大切な根本です。今回は事業理念だけの説明となりましたが、これをしっかり作りこむことで事業計画全体に魂を込めることができます。魂が込められた事業計画のほうが成功の確率は格段に高くなります。そのことを念頭に事業計画を作ってみてください。