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在宅勤務とは?労働法制から見た在宅勤務の押さえるべきポイント

経営ハッカー編集部
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企業の働き方改革への取り組みの中で、「在宅勤務」という言葉を以前よりも耳にするようになりました。在宅勤務は、労働者にとっては、子育てや介護をしながら自宅で働くことができるという魅力があり、一方で、人材確保を考えたり、ブランドイメージの向上を図ったりなど企業にも大きなメリットがあります。
 

目次

    在宅勤務とは

    一般に「在宅勤務」とは所属する企業の事業所、オフィスで勤務するのではなく自宅等で業務をすることを指します。ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方とされます。在宅勤務はテレワークの中の一つの形態とされています。
     

    テレワークのメリット

    厚生労働省では「テレワークのメリット」を以下のようにまとめています。
     

    企業にとってのメリット 従業員にとってのメリット
     • 人材の確保・育成
     • 業務プロセスの革新
     • 事業運営コストの削減
     • 非常時の事業継続性(BCP)の確保
     • 企業内外の連携強化による事業競争力の向上
     • 人材の離職抑制・就労継続支援
     • 企業ブランド・企業イメージの向上
     • ワーク・ライフ・バランスの向上
     • 生産性の向上
     • 自律・自己管理的な働き方
     • 職場との連携強化
     • 仕事全体の満足度向上と労働意欲の向上
     

    厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック」(2016)
     

    在宅勤務の分類

    労働法制を所管する厚生労働省では在宅勤務を下記のように分類しています。
     

    1.事業主と雇用関係にある働き方

        
      

    (1)自宅でのテレワーク 労働者が自宅において業務に従事する働き方
    (2)サテライトオフィス勤務

    労働者が属する部署があるメインのオフィスではなく、郊外の住宅地に

    近接した地域になる小規模なオフィスなどで業務に従事する働き方

    (3)モバイルワーク

    外勤型テレワークとも言われ営業マンやサービスマンなどが、

    オフィス以外の場所を中心に仕事をする働き方



    このうち(1)が在宅勤務
     

    2.事業主と雇用関係にない請負契約などに基づく自営的な働き方

    請負契約に基づき、情報通信機器を活用してサービスの提供(テープ起こし、ホームページの作成など)を在宅形態で行う働き方。いわゆるSOHOやフリーランサーのことを指します。
     

    雇用型の在宅勤務の法的な留意点

    上記1(1)の在宅勤務には、労働法制が適用されるので注意が必要です。
     

    そもそも在宅勤務は法的に可能なのか?

    在宅勤務は法的に認められています。ただし、自宅で働く場合は、勤務時間と日常生活の時間が入り混じることになりますので、事業主は、労働時間の管理や仕事の評価方法について、労働者とよく話し合い、労働者が安心して働けるように労務管理を行う必要があります。
     

    在宅勤務に適用される労働法制は?

    在宅勤務を行う場合でも、労働者には
    ・労働基準法(労働時間、年次有給休暇、割増賃金[時間外労働、深夜手当]など)
    ・労働契約法(労働契約の内容の変更など)
    ・最低賃金法(最低賃金など)           
    ・労働安全衛生法(健康診断など)    
    ・労働者災害補償保険法(労災保険の給付など)
    などが適用されます。       
     

    在宅勤務を導入する際、労働基準法などで注意すべき点は?

    在宅勤務を導入する際には、就業規則に在宅勤務に関する規定があるかどうかをまず確認する必要があります。              
    例えば、次のような規定が必要になります。              
     
    1.人事異動として在宅勤務を命じることに関する規定
    2.在宅勤務用の労働時間を設けるのであれば、その労働時間に関する規定
    3.通信料などを特別に支払うのであれば、その支払いに関する規定
     
    ・これらの規定がない場合、就業規則に規定する必要があります。(労働基準法第89条)
    ・常時10人以上の従業員を使用する使用者は、就業規則を作成、または変更する場合、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。(労働基準法第89条)
    ・就業規則は労働者に周知しなければなりません。(労働基準法第106条)
    ・使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益に労働条件を変更することはできません。(労働契約法第9条)           
     
    ・なお、就業規則によって労働条件を不利益に変更する場合には、(1)内容が合理的であること、(2)労働者に周知することが必要です。(労働契約法第10条)
     

    新しく雇う人に在宅勤務を行わせる場合の留意点

    在宅勤務を行うことなどを労働条件通知書に明示する必要があります。
     
    ・事業主は、新しく雇う労働者に在宅勤務を行わせようとする場合には、労働契約を結ぶ際に就業の場所が自宅であることを書面で明示する必要があります。(労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条第2項)
     
    ・使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、就業場所その他労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項)。また、賃金、労働時間、就業場所等については書面で明示しなければなりません。(労働基準法施行規則第5条第2項)
     
    ・労働契約の変更時もできる限り書面で確認してください。(労働契約法第4条第2項)
     

    すでに雇っている人に在宅勤務を行わせる場合の留意点

    できる限り書面で確認することが必要です。
     
    ・事業主および労働者は、労働契約の変更をできる限り書面で確認してください。(労働契 
    約法第4条第2項)
     

    在宅勤務の労働時間管理

    在宅勤務を行う際、労働時間の管理はどうするか?

    1.労働者の労働時間が算定できる場合
     
    原則、通常の労働時間制(1日8時間、週40時間)が適用されます。
     
    ・労働時間の算定が可能な場合、原則、会社で働く労働者と同様に通常の労働時間制(労働基準法第32条)が適用されます。
     
    2.変形労働時間制やフレックスタイム制も活用できます。
     
    在宅勤務を行う労働者にも、以下を活用することができます。
    ・1か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)※1
    ・1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4)※2
    ・フレックスタイム制(労働基準法第32条の3)※3
                                
    ※1、※2  1か月単位および1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2・第32条の4)    
     
    労使協定または就業規則などで定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度。なお、1年単位の変形労働時間制の場合、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長へ届け出ることが必要です。(労働基準法第32条の4第4項)    

    ※3フレックスタイム制(労働基準法第32条の3)              
     
    就業規則などに制度を導入することを定めた上で、労使協定により、一定期間(1カ月以内)を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合、その範囲内で始業・終業時刻・労働者がそれぞれ自主的に決定することができる制度です。  
        

    労働者の専門性が高く、仕事の進め方を任せた方がよい場合は?       

    専門性が高い業務の場合は裁量労働制も活用できます。           
    ・専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)            
    ・企画業務型裁量労働制(労働基準法第38条の4)            
                  
    裁量労働制とは、研究開発などの業務、あるいは事業の運営に関する事項についての企画、立案などの業務について、その性質上、業務の遂行の方法や時間の配分などに関し、使用者が具体的な指示をしないことを労使協定や労使委員会の決議で定めた場合、その協定や決議であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度。専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)と企画業務型裁量労働制(労働基準法第38条の4)があります。       
     

    どうしても労働時間の把握ができない場合は?  

    事業場外みなし労働時間制も利用できます。              
     
    労働時間を算定することが難しく、ある一定の要件を満たす場合であれば、「事業場外みなし労働時間制」(労働基準法第38条の2)を適用することができます。
     

    事業場外みなし労働時間制

    事業場外みなし労働時間制とは? 

    労働時間の算定の方法について特例を認めている制度です。労働時間の算定は、タイムカードなどで始業・就業時刻を確認して、労働時間を適正に把握することが原則です。しかし、会社の外で働く場合で、その労働時間の算定が難しい場合、特例(事業場外みなし労働時間制)を設けています。自宅でテレワークを行う場合でも要件を満たした場合には、この制度を利用できます。要件については、事項を参照してください。    
     

    在宅勤務で、事業場外みなし労働時間制が利用できる要件     

    在宅勤務で、労働時間の算定が難しく、以下の3点の要件すべてを満たした場合、事業場外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2)が利用できます。     
    1.業務が自宅で行われること       
    2.パソコンが使用者の指示で常時通信可能な状態となっていないこと              
     
    ・労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することが使用者から認められていない場合は「使用者の指示で常時通信可能」な状態となります。           
    ・使用者が労働者に対してパソコンなど情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板などにより随時具体的な指示を行うことが可能であり、かつ、使用者からの具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態(労働者が具体的な指示に備えて待機している手待ち時間や、または待機しつつ作業を行っているとき)は、「通信可能な状態」となります。なお、単に回線が接続されているだけで労働者がパソコンから離れることが自由である場合などは「通信可能な状態」には該当しません。              
     
    3.作業が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと    
     
    例えば業務の目的、目標、期限などの基本的事項を指示することや、この基本的事項について変更を指示することは「具体的な指示」には該当しません。    
     

    事業場外みなし労働時間制の場合の1日の労働時間 

    就業規則などで定められた「所定労働時間」労働したものとみなします。
                  
    事業場外みなし労働時間制の場合でも、労使で協定した、その業務を行うのに「通常必要とされる時間」が法定労働時間を超えている場合、時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長へ届け出るとが必要です(労働基準法第36条)。              
     
    ・「所定労働時間」を超えて働くことが必要な業務については、その業務を行うのに「通常必要とされる時間」働いたものとみなされます(「所定労働時間」ではありません)。
    ・労使の書面による協定があるときには、その協定で定める時間が「通常必要とされる時間」とされ、この労使協定は労働基準監督署長へ届け出ることが必要となります(労働基準法第38条の2)。ただし、通常必要とされる労働時間が法定労働時間内であれば届け出は不要です。       
     
    事業主は、労働者が業務に従事した時間を記録した日報などにより、労働時間の適切な把握に努め、必要に応じて所定労働時間や業務内容などについて改善を行うことが望まれます。
     

    事業場外みなし労働時間制でも残業代を支払う必要

    事業場外みなし労働時間制で「労働したものとみなされる時間」が法定労働時間を超える場合、法定労働時間を超えた時間に対しては、時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。       
    時間外労働の割増賃金(労働基準法第37条)
    労働者に時間外労働をさせる場合には、会社は割増賃金を支払う必要があります。
     

    事業場外みなし労働時間制も深夜・休日手当を支払う必要はある?

     深夜・休日労働の割増賃金の支払いが必要です。(労働基準法第37条) 
     なお、所定労働時間内であっても、深夜手当の支払いは必要です。
     

    事業場外みなし労働時間制で、指示がないのに深夜・休日業務を行った場合、労働時間として計算する必要があるか?     

    労働者が、深夜・休日に業務を行う場合、事前に申告して許可を得た上で、その事後に報告をしなければならないこと(事前許可、事後報告制)を、就業規則などで定めている会社において、深夜・休日に業務を行ったが、深夜・休日の労働の事前の申告がない。または、
    事前に申請されたが、使用者の許可を得ておらず、かつ、労働者からの事後報告がない
    場合で、次のすべてに該当する時は、労働基準法上の労働時間にはなりません。
                  
    (1)使用者から強制されたり、義務付けられたりした事実がないこと。
    (2)深夜・休日に働かざるを得ないような黙示の指揮命令※がないこと。
    ※労働者の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適当である場合など。
    (3)深夜・休日労働が客観的に推測できず、使用者がそれを知らないこと。
    深夜または休日にその労働者からメールが    送信された、深夜または休日に労働しなければ作成できないような資料が提出されたなど。       
    (4)事前許可が実態を反映していないような事情※がないこと
    ※労働者からの事前の申告に上限時間が設けられた、労働者が実績どおりに申告しないよう使用者から働きかけや圧力があったなど。       
    (5)事後報告が事実を反映していないような事情※がないこと。
    ※深夜または休日に業務を行った実績について、その労働者からの事後の報告に上限が設けられている、労働者が実績どおりに報告しないよう使用者から働きかけや圧力があるなど。
     

    在宅勤務を行う労働者の健康への配慮

    事業主は、以下の点に注意する必要があります。
    ・必要な健康診断を行うこと(労働安全衛生法第66条第1項)
                  
    具体的には、以下の健康診断などを行う必要があります。
    ・雇入時の健康診断(労働安全衛生規則第43条)
    ・定期健康診断(労働安全衛生規則第44条
    ・在宅勤務を行う労働者を雇い入れた際、必要な安全衛生教育を行うこと
    (労働安全衛生法第59条第1項) 
     
    具体的には、雇入れ時などに、業務に関係する疾病の原因や予防に関すること等を教育す
    る必要があります(労働安全衛生規則第35条)。
     
    ・「VDT作業ガイドライン」※などに留意し、その内容を労働者に周知するとともに、必要な助言を行うことが望ましいとされています。
     
    ※「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日基発第0405001号)
     

    在宅勤務をする労働者にも労災保険は適用される?

    在宅勤務を行っているときに業務が原因で生じた災害は、労災保険の保険給付の対象となります。
    (自宅における私的行為が原因でるものは、業務上の災害とはなりません。)
     

    在宅勤務を導入するに当たって、その他の注意点はある?

    労使双方が共通の認識を持つまで、十分に話し合う必要があります。在宅勤務の導入に当たって、労使で認識に相違がないよう、あらかじめ導入の目的、対象となる業務、労働者の範囲、在宅勤務の方法などについて、労使委員会などの場で十分に納得いくまで協議し、文書にし、保存するなどの手続きを踏むことが望まれます。また、在宅勤務の制度が導入された場合、実際にこの在宅勤務をするかどうかは本人の意思によるものとすべきです。              
     
    1.業務の円滑な遂行のため、業務内容などを明確にしてください。
    在宅勤務かつ効率的に実施するために、業務内容や業務遂行方法などを文書にして交付するなど明確にすることが望まれます。また、あらかじめ通常または緊急時の連絡方法について、労使間で取り決めておくことが望まれます。また、業績評価や賃金制度を構築してください。在宅勤務を行う労働者が業績評価などについて懸念を抱くことがないように、評価制度、賃金制度を構築することが望まれます。
     
    2.通信費や情報通信機器などの費用負担の取り扱いを定めてください。
     
    在宅勤務に必要な通信費や情報通信機器などの費用負担については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則などで定めておくことが望まれます。
     
    3.社内教育などの充実を図ってください。              
     
    在宅勤務に行う労働者が能力開発などに不安を感じることがないように、社内教育などの充実を図ることが望まれます。              
     

    在宅勤務についての相談窓口は?

    次の相談窓口があります。
    テレワーク相談センター    
    電話番号:0120-91-6479 (フリーダイアル)            
    ホームページ:http://www.tw-sodan.jp 
     

    まとめ

    このところ注目される在宅勤務ですが、導入の際には労働法制にのっとったうえ、雇用者との間で充分話し合った上で在宅勤務を導入する必要がありそうです。

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