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2019年09月06日(金)

[「働き方改革」は業務プロセスの見直しから バックオフィスクラウド活用セミナー③]「リアルタイム経営」のための最適な業務プロセス設計とは freee株式会社 プロダクト戦略本部 上級コンサルタント 尾籠威則氏

経営ハッカー編集部
[「働き方改革」は業務プロセスの見直しから バックオフィスクラウド活用セミナー③]「リアルタイム経営」のための最適な業務プロセス設計とは  freee株式会社 プロダクト戦略本部 上級コンサルタント 尾籠威則氏

 今、企業に求められる最適な業務プロセスとはどういうものなのでしょうか?
 急成長している企業ほど、それに悩んでいるのではないでしょうか。去る2019年6月13日に「クラウドERP freee」と「出張管理システム AIトラベル」の主催で行われたバックオフィスクラウド活用セミナーでは、そういった悩みを解決してくれる最新のバックオフィステクノロジーについての講演がありました。今回はその第3回。freee株式会社尾籠威則氏による最適な業務プロセス設計の勘所についてのセッションをレポートします。

 

尾籠:ただいまAI トラベル本間様からお話がありましたが(レポート第2回参照)、そのソリューションというのは、非常に素晴らしく、私たちも活用を進めているところです。今回「働き方改革は業務プロセスの改善から」というのがテーマですが、皆さんもそれを考えていらっしゃるからこちらに参加されていると思います。では最適な業務プロセスの設計をどうするのか?という勘所について、ここではお話できればと思います。

 まず、私の自己紹介からさせていだだきます。私は以前は日本オラクルで大規模システムの導入に携わったり、外資系アナリティクス企業にも属していました。現在はfreee株式会社にてIPO準備企業から上場企業様を中心に業務効率化や経営見える化の支援をさせていただいています。

 今日はAI トラベル様と共催という形ですので、まず「移動」を例にして業務プロセスのポイントを考えてみたいと思います。

 皆様も利用したことがあると思いますが、東京から大阪まで新幹線と在来線ではどのくらい違うのでしょうか? 在来線だと東京駅から電車を7回乗り換えて大阪に到着するまで9時間16分もかかります。移動時間9時間というとインドに行くのと同じくらいの時間です(笑)。対して新幹線は1本で2時間23分。勿論乗り換えはありません。
 確かに新幹線は凄い!のですが、ではなぜ新幹線は速いのか、ということを要素分析すると、それは「徒歩の数」と「使っている交通機関(ツール)の数」が圧倒的に違う、という点に行き着きます。ツールが多くて人が介在していると高速化できない、ということです。逆に新幹線は乗り換えが無く、ツールは1つなのでそれらの高速化ができるということです。

 また、これらを運用で考えた時はどうなるでしょう。例えば運行ダイヤに関しては車両(ツール)ごとに用意しなければなりません。マニュアルも車両(ツール)単位です。人間が間違えないで駅に行くための地図も使う駅の分だけ必要になります。その点新幹線ならば運行ダイヤとマニュアルは一つずつでいいですし、マップも東京駅と大阪駅の2つだけで済みます。

バックオフィスを「新幹線化」する

 これらを企業の業務に置き換えて考えた時に「あなたのバックオフィスは『新幹線』になっていますか?」ということになると思います。

 私も様々な会社に訪問しますが、50人規模でも1500人規模でもほぼ、業務プロセスは同じようなものです。例えば、営業が見積書を作ったら印刷、納品書は別の部門がワードで作って印刷して、請求書の発行依頼は経理にエクセルで送信して、経理はそのエクセルデータを印刷して封筒に入れて郵送し、会計ソフトに請求内容を入力しても債権管理を行うためにエクセルに入力して。そして通帳の内容を見ながら売掛台帳をチェックし、更に会計ソフトに記帳して完了する……というものです。かなり煩雑ですね。このようなプロセスである限り働き方改革はおそらく無理だと思います。

 では、それらの問題をfreeeはどう改善したのかというと、一度入力した内容を一切転記せずにそのままfreeeで全業務を回せるようにした、ということです。見積もりを作ったら納品書にコンバートできて、そしてボタン一つで請求書に変換して発行できる。請求書の郵送も一通150円で弊社が代行しています。そして消し込みまでfreeeが自動で推測する。なので日付・摘要・金額や取引先を入力するのは営業が見積書を作成した時点で終わっている、ということになります。それ以外一切転記作業を行いません。

 これは先ほどお話した在来線と新幹線の違いと同じで、高速化・シンプル化することができたのは、「転記作業の数」と「業務ツールの数」が違うから、ということです。業務ツールを集約して転記作業を無くすことができれば、リアルタイムな経営というのが自ずと導き出せるのです。運用も圧倒的にシンプルになります。

 弊社はIPO市場に非常に強く、1億円調達された企業の4割ほどがfreeeを使っていただいているのですが、それはなぜでしょうか。それはIPO準備に入ると「従業員は不正を働く可能性がある」との前提のもと内部統制を強化しないといけません。しかし、内部統制に対応するシステムが少ないため、基本的には各システム単位で紙に印刷してハンコで承認するというマニュアル統制をするしかないのです。しかしこれをしていると企業成長とともにどんどん回らなくなってしまうのですね。しかしfreeeの場合だと内部統制に対応した上で、更にバックオフィスが全て繋がっているので統制が楽になります。この点が評価されているのです。

デジタルデータをデジタルデータとして利用する

 改めて、ツールが多いとマニュアルも増えるし転記作業も増えます。そういうことをしているので日本の労働生産性は先進7カ国中最下位になってしまっています。ですから業務効率化を行うためには「使うシステムを極力少なくする」と「手作業を行う領域を減らす」の2つのポイントを守っていかないといけません。

 ではそのソリューションはどうするべきなのでしょうか。まず、なぜこんなに大変なのかを考えてみると、その答えは簡単で、デジタルのデータを紙に印刷して、その内容をまたパソコンに入力しデジタル化するという、「デジタル」「紙」「デジタル」「紙」という作業を繰り返しているからです。こうした元々デジタルのデータに人の作業を介在させることがネックになっているのです。ですから解決策は単純で、デジタルデータをそのままデジタルデータとして利用していく、ということです。
 しかしデジタル化されないものもあります。それらに関しては1ヶ所で業務ができる仕組みがあればいい。それがERPです。このようなERPは以前から提供されていたものでしたが、高額なため大企業でしか使えませんでしが、それをfreeeはクラウドを通しいち早く中小企業に展開いたしました。つまり、freeeではデジタルデータをそのまま取り込み、さらにAIを利用して、ERP+AI+クラウドとして活用しており、それが弊社の強みになっています。

 ここからはデモンストレーションを通し説明していきましょう。
 freeeは従業員全員が利用していただけるので、1人ずつ1メールアドレス・パスワードでログインしていただくことになります。
 freeeの大きな特長としては詳細な権限設定ができることが上げられます。通常ならばシステム単位で誰に何をさせるという設定をしなければなりませんが、freeeでは役職や役割に応じて個別に設定することができます。この人はレポートは見させないとか、稟議だけ利用できる、などといった設定をすることができます。これによって機密漏洩の心配もかなり低減させることができるでしょう。
 さらに一体型の利点というのがどこにあるかというと、例えばレポートについてもリアルタイムで反映がされます。またAIによるチェック機能もあるのでモレ・ダブリ・ミスなども一発で発見できるようになっており、チェック工数の低減にもなります。ですので今後規模が大きくなって取引件数が増えたとしても、チェックプロセスの簡素化というのが非常に効率良くできます。その上で、不明瞭なデータがあれば試算表から仕訳までドリルダウンして確認でき、全ての仕訳に証票を添えることもできます。また通常の経費精算システムだと月末にインポートし、月初になってチェックをして月次決算を締めなければならないので、レポートを出すのが遅くなってしまうのですが、freeeでは、会計と経費精算が一体化しているため承認と同時に試算表に反映されます。更に全ての仕訳に承認内容と履歴が紐づいていますので、何か不備があればコメント機能を使って疑問に思った点をすぐに担当者に指摘することもできます。私たちは「ゲキヅメシステム」と呼んでいます(笑)。

 ほかにも様々なデータをデジタルで取り込むことができるようになっています。銀行であれば3300口座。これでほぼ全国の銀行と提携しています。クレジットカードに関しては130口座と提携しており、明細を記帳する必要もなくなりました。またAmazonやアスクルで購入していただいたものも自動連携しています。自動仕訳については、最初はfreeeが推測したものを手動で承認してもらうことになりますが、その過程でルールがどんどん記憶されていき、2、3ヶ月後には6割ほどは自動で仕訳が完了するようになります。

 自動化することができないもの、例えば現金の取引や経費精算などについてはワークフローで経費精算・支払い依頼・稟議も全部網羅的に実施いただけます。例えば購買申請や接待申請などの申請も実装することができますし、これを最大活用するためにモバイル機能も利用していて、スマホのカメラで領収書を撮って申請すれば経費精算はそれだけで終わるようにしています。ですので出張だったり日常の小口の精算についてはこれで全て完結できると思います。
 これらのデータは他のコミュニケーションツールとも連携しており、たとえばSlackなど利用されているのであればそこで承認していただければそれだけで仕訳が終わる、とういうこともできます。

 以上、ご説明してきましたが、こういった人の手で行っていた作業をリアルタイムで反映し、蓄積していけるので月次レポート・予実管理などをスピーディに行うことができます。予実からリアルタイムに原因の仕訳までも飛ぶことができる。一体型であるがゆえに管理も統制も楽になり、業務の効率化もできる、ということです。

 現在弊社では161億円の資金調達を達成していますが、その多くを開発に投入しております。その結果、去年はプロダクトリリース278件を達成することができました。弊社も月次決算を1営業日で終わらせられるようになっていますし、既に導入されているクライアントの陣屋様は今まで4人でやっていた作業がアルバイト1人でできるようになったということです。野村ホールディングス様も導入によって見える化・ペーパーレス化に成功し、今ではほとんどの子会社に導入していただいています。

 最後に本日のまとめとしては、業務効率化のルールとしては、まずツールを少なくすること、そして手作業を少なくすること。この二点は普遍的なテーマです。それに対し私たちはクラウドやAIを使ってそれをお手伝いしています。業務を見直される際には、まず本当に必要なシステムを精査し、その上で人が介在する作業を精査していだたくことができれば、働き方改革の実現になると考えています。
 今日はありがとうございました。

 

freee株式会社 上級コンサルタント 尾籠威則

 慶應義塾大学卒業後、日本オラクルにて大規模基幹システムの導入に携わる。その後、外資系アナリティクス企業にてマーケティング分析支援に従事し、2016年1月にfreee株式会社に入社。システム導入の知見を活かし、業務改善コンサルティングに従事した後、事業開発にて新規サービス構築に従事。現在は、プロダクト戦略本部に所属し、上級コンサルタントとしてクラウドERPの普及に務める。

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