2019年07月19日(金)0ブックマーク

同一労働同一賃金とは?賃金格差是正に企業はどう取り組むか

経営ハッカー編集部
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政府の「働き方改革関連法」の3本柱の一つである「同一労働同一賃金制度」が、2020年4月から適用されます(中小企業への適用は2021年4月から)。この制度は、「同じ企業・団体においては、同じ仕事内容であれば、従業員には同じ賃金を支払う」という考え方を実現するものです。
 

目次

    同一労働同一賃金制度の目的

    同一労働同一賃金制度の目的は、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差を解消することです。これにより、従業員は、どのような雇用形態であっても適切な待遇を受けられ、自分に合った働き方を自由に選ぶことができるようになります。
     

    同一労働同一賃金制度が生まれた背景

    同一労働同一賃金という考え方が生まれた背景には、非正規雇用労働者を取り巻く環境の変化があります。厚生労働省の調査(※1)によると、非正規雇用労働者の人数は、1984年には約604万人(役員を除く雇用者全体の15.3%)でしたが、2015年には約1,980万人(同37.5%)へ、3倍以上に増大しました。
     
    その一方で、同調査によると、パートタイム労働者の賃金は、1985年ではフルタイム労働者の50.1%、2015年では57.1%と、30年間でほぼ横ばいの水準で推移しています。このような正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差が問題視されるようになった結果、政府は、同一労働同一賃金制度を含む「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を2018年の国会にて成立させました。
     
    ※1
    厚生労働省「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告参考資料
     

    同一労働同一賃金を導入するメリット・デメリットとは?

    同一労働同一賃金の導入は、どの立場に立つかによって、そのメリット、デメリットが異なってきます。以下で、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、事業主の3つの観点から、見ていきましょう。なお、事業主は正規雇用労働者、非正規雇用労働者の視点でもメリット・デメリットを知っておく必要があります。
     

    1.正規雇用労働者の場合

    メリット1)高齢者の再雇用促進

    同一労働同一賃金制度の施行によって、事業主が年齢を理由に従業員の賃金を不当に低く抑えることは、問題とみなされます。その一方で、経験や知識を活かして相応の成果を上げている高齢者は、事業主から重宝されることも予測されます。そのため、与えられた業務をきちんと遂行できる人材であれば、年齢を問わず働き続けることができるでしょう。

    メリット2)男女間格差の是正

    年齢による不当な賃金格差と同様に、男女間の不当な賃金格差も是正されることが予想されます。日本の企業は、正規雇用労働者であっても、根深い男女間の賃金格差や待遇格差が大きいといわれています。同一労働同一賃金制度の施行によって、同じ仕事に就いていれば、男女ともに格差のない賃金が支給され、それによって女性の社会進出もさらに進むことが期待されています。

    メリット3)外国人労働者の待遇改善

    現在、多くの日本企業が、労働力不足やグローバル社会への対応のために、外国人労働者を積極的に活用しています。日本人労働者の間での不当な賃金格差を是正することと同じように、日本で働く外国人にとっても、納得性の高い人事給与制度を構築することが、これからの日本企業には求められるでしょう。同一労働同一賃金制度の施行は、日本人だけでなく外国人労働者にとっても、その労働環境に大きな変化を及ぼすと考えられています。

    デメリット1)正規雇用労働者の賃金引き下げの可能性も

    同一労働同一賃金制度の施行により、従業員の仕事ぶりが適正に評価されるということは、正規雇用労働者にとってはデメリットもあります。能力以上に高い賃金を特権的に得ていた場合、正規雇用労働者の給与が引き下げられる可能性もあるのです。ただし、このようなケースは「労働条件の不利益変更」に相当するため、事業主側が無条件で正規雇用労働者の賃金引き下げをできませんので、労使間での調整が必要となります。

    デメリット2)年功序列の崩壊を招く危険性

    同一労働同一賃金制度は、企業・団体内の年功序列の崩壊を招くというデメリットも予想されます。「同じ仕事をすれば、同じ賃金を支払われる」ということは、裏を返せば、社歴に関わらず労働内容で賃金が一律化される。つまり、同じ仕事を担当する従業員は、新卒の新入社員でも勤続30年のベテラン社員でも、同じ賃金となる可能性も否めないでしょう。これは、ベテラン社員のモチベーション低下などを引き起こす危険性もあります。

    デメリット3)若者の失業率が向上する

    同一労働同一賃金制度が実現されると、若年層の労働市場にも影響を与える側面もあります。というのも、習熟度が必要な職種の場合、企業・団体が、新しく従業員を採用する際、労働の熟練度が低い若年層よりも、熟練度が高い非正規のベテランを選ぶ可能性があるためです。
     

    2.非正規雇用労働者の場合

    メリット1)賃金・賞与のアップ

    同一労働同一賃金制度が実施されると、同じ仕事に従事する正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差は、解消されます。また、基本給だけではなく、賞与などがアップするケースも想定されます。それにより、非正規雇用労働者の労働意欲やモチベーションの向上にも繋がっていくでしょう。

    メリット2)諸手当や福利厚生など待遇の改善

    同一労働同一賃金制度の施行は、各種手当や福利厚生の待遇格差問題にも影響を与えることとなります。たとえば、通勤手当や住宅手当などの諸手当が、正規雇用労働者と同水準で非正規雇用労働者にも支給される可能性が高まるのです。また、非正規雇用労働者に福利厚生施設の利用を認めるといった制度改変を実施している企業もあります。賃金だけでなく、諸手当や福利厚生にも改善が見られるのは、非正規雇用労働者にとって大きなメリットといえるでしょう。

    メリット3)自分に合った働き方が可能

    同一労働同一賃金制度により、実力重視型の社会になっていくことで、正規雇用労働者・非正規雇用労働者という肩書き自体が、意味をなさなくなります。つまり、非正規雇用労働者は、正規雇用労働者と同じようなキャリアアップを目指すこともできるのです。また、正規雇用へのこだわりから解放され、非正規雇用労働者も、リモートワークや時短勤務など、より自分に合った働き方を選びやすくなります。

    デメリット1)非正規雇用労働者間で賃金格差が広がる可能性も

    同一労働同一賃金制度の施行によって、同じ非正規雇用労働者の間でも、就く職務の内容によって賃金の決定が行われます。ただ、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差の解消を目指したこの制度が適用されることによって、正規雇用労働者と同じ仕事を任せられる非正規雇用労働者と任せられない非正規雇用労働者との間に、新たな賃金格差が生まれてしまうという課題を孕んでいるのです。

    デメリット2)新規雇用や派遣受け入れの縮小につながる可能性

    同一労働同一賃金制度によって、労働者へ支払う給与額が適正になったことで、企業や団体全体の人件費が上昇する可能性があります。その場合、企業や団体は、非正規雇用労働者の人数を調整し、新規雇用や派遣労働者の受け入れを縮小する方向に舵を切る可能性があります。
     

    3.事業主の場合

    メリット1)非正規雇用労働者の生産性向上を期待

    企業・団体が、同一労働同一賃金制度を正しく導入し、同じ仕事を担当する正規雇用労働者と非正規雇用労働者に同じような評価方法や給与体系を適用するようになれば、非正規雇用労働者の日常業務に対するモチベーションが向上することが期待できます。それに伴って、非正規雇用労働者の労働生産性も、高まっていくでしょう。

    メリット2)優秀な人材の確保・獲得が容易に

    同一労働同一賃金制度がきちんと企業・団体に根付いていれば、その評判が企業・団体の内外に広まり、正規・非正規雇用労働者を問わず、優秀な人材が外部へ流出する可能性は低くなるでしょう。また、採用面でも、優秀な人材を獲得しやすくなるなど、プラスに働くことは間違いありません。

    デメリット1)人件費の上昇

    これまでの日本の労働市場では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間に不当な賃金格差が、当然のように蔓延していました。これは裏を返せば、事業主が、賃金の低い非正規雇用労働者を多く採用することで、人件費を抑えてきたとも言えます。同一労働同一賃金制度によって、非正規雇用労働者の賃金が上昇すると、それに伴って、企業・団体の人件費が激増する可能性も予測されます。

    デメリット2)給与体系や人事評価基準を明確にする仕組みづくりが必要

    同一労働同一賃金制度では、労働者が、給与体系や人事評価基準について企業・団体へ説明を求める権利を行使できるようになります。その都度、事業主側は、労働者に対する説明会の開催や不合理な賃金格差の理由を究明するための調査時間など、これまでにはなかった業務に追われる可能性もあります。そのため、事業主側は、なるべく労働者間で疑問が生じないように、あらかじめ給与体系や人事評価基準を明確にする仕組みづくりを求められるのです。

    同一労働同一賃金制度の導入にあたっての注意点

    それでは、同一労働同一賃金制度を導入するにあたって、何に気をつけるべきでしょうか。以下でポイントをチェックしましょう。
     
      厚生労働省のホームページ「働き方改革特設サイト(支援のご案内)」(※2)によると、同一労働同一賃金制度とは、次の3つを柱としたものです。
     
    1.不合理な待遇差をなくすための規定の整備
    2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    3.行政による事業主への助言・指導などや
    裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

     
    ※2
    厚生労働省 働き方改革特設サイト(支援のご案内)
     
     この3本柱を具体化したものが、厚生労働省が発表した同一労働同一賃金ガイドライン(※3)です。同ガイドラインでは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差は、以下の4つのポイントから判断するとされています。
     
    1.基本給 
    2.賞与
    3.各種手当
    4.福利厚生・教育訓練

     
    それでは、この4つのポイントにおけるNG例を具体的にご紹介しましょう。ちなみに、非正規雇用労働者のなかでも、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などカテゴリー別に、対応が異なります。以下のNG例で挙げた非正規雇用労働者とは、パートタイム労働者、あるいは有期雇用労働者とします。派遣労働者については、詳細が異なりますので、ご注意ください。
     
    ※3
    厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
     
      

    上記1.基本給の待遇格差NG例

    労働者の能力や経験に応じて、基本給を支給している場合

    ・現在の業務とは関連性のない経験の有無で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に、賃金差が生じている。

    労働者の業績や成果に応じて、基本給の一部を支給している場合

    ・正規雇用労働者と非正規雇用労働者に同一の販売目標を設定し、もし非正規雇用労働者が、その目標を達成できなかった際に、基本給の一部を支給されていない。

    労働者の勤続年数に応じて、基本給を支給している場合

    ・有期雇用労働契約を更新した非正規雇用労働者の基本給が、最初の労働契約の開始時点からの通算勤続年数ではなく、労働契約の更新時点からの勤続年数のみの評価で、支給されている。
     

    上記2.賞与の待遇格差NG例

    会社の業績などに対する労働者の貢献度に応じて、賞与を支給している場合

    ・正規雇用労働者と非正規雇用労働者が、会社の業績に対して同一の貢献をしているにもかかわらず、同一の賞与を支給されていない。
    ・すべての正規雇用労働者が、職務の内容や会社の業績への貢献などにかかわらず、何らかの賞与を得ている一方で、非正規雇用労働者は賞与を得ていない。
     

    上記3.各種手当の待遇格差NG例

    役職の内容に対して役職手当を支給している場合

    ・同一の役職名、同一内容の役職に就く正規雇用労働者と非正規雇用労働者が、同一の役職手当を支給されていない。

    深夜労働・休日労働に対して深夜手当・休日手当を支給している場合

    ・正規雇用労働者と非正規雇用労働者が、時間数や職務内容が同一の深夜労働や休日労働を行った際、非正規雇用労働者の深夜手当や休日手当の単価が、深夜労働や休日労働以外の労働時間が短いことから、正規雇用労働者より低く設定されている。

    食事手当を支給している場合

    ・正規雇用労働者の食事手当が、非正規雇用労働者よりも、高く支給されている。

    全国一律の基本給体系を適用し、転勤時には地域手当を支給している場合

    ・正規雇用労働者には地域手当を支給しているにもかかわらず、非正規雇用労働者には地域手当を支給していない。
     

    上記4.福利厚生・教育訓練の待遇格差NG例

    福利厚生施設を設けている場合

    ・給食施設や休憩室、更衣室などの福利厚生施設の利用を、正規雇用労働者には認め、同一の事業所で働く非正規雇用労働者には認めていない。

     困ったら相談窓口に

    そして、同一労働同一賃金制度は、各企業・団体の状況に合わせて、導入方法も異なってきます。新たな法制への対応について何から準備すればいいかわからない事業主の方は担当の窓口に相談してみましょう。
     

    事業主サイドの相談窓口

    働き方改革推進支援センター 無料相談窓口

    労働者サイドの相談窓口

    都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

    まとめ

    働き方改革関連法は、周知のように2019年4月から順次施行されています。3本柱のうち、1つめ、時間外労働の上限規制の導入(中小企業は2020年から)、2つめ、年次有給休暇の確実な取得が先行し、いよいよ同一労働同一賃金制度の運用がなされていきます。まだ先のことと考えず、より理解を深め早めに準備しておくことが重要です。

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